前人未到の世界最難関の山。 その頂に俺は遂に到達した。 人類未踏の地を単独で踏みしめた栄誉と快感に酔いしれていると、視界の端に入るものがあった。 「…俺は、2番手だったのか」 そこには登山者の遺体があった。 俺は遺体から、何か名前がわかるものを探した。 生きて、彼の栄誉を伝えるために。
結婚を前提に付き合ってる彼女を呼んで、家でパーティーを開く事になった。彼女がミステリ好きなのもあり、俺が死体役になって、ちょっとしたサプライズを仕掛ける事にした。 弟と彼女が帰って来る。 血まみれで床に転がる俺を見るなり、彼女は弟に叫んだ。 「ちょっと!まだ殺るには早いでしょう!?」
初めて彼氏の家に行ったらなぜか洗面台の鏡にキスマークがついてて、口紅も置いてあって「なんなのこれ?」って思って問い詰めたら慌て始めて、余計に怪しくて強く聞いたら「初キスで緊張しないよう、女装して鏡の自分と向かい合ってキス練してた」って白状されたんだけどキスは死ぬほど下手だった。
ゲーム配信をしていると、毒舌アンチに粘着された。調べると、そいつもゲーム配信者らしい。悔しくて、俺はとっておきのプレイ動画の録画を配信した。 『うっわ下手すぎ…ホント才能無ぇな…死んだ方がいいよマジ』 今日も奴の毒舌が冴え渡る。まぁ、その動画、昔のお前のプレイ動画なんだがな。
私はいつも、やろうと思った事を後回しにする癖がある。いい加減、治さないとなぁ…。 決めた! 次にやろうと思った事は、絶対即実行しよう! ソファーでくつろいでいる夫が私の名前を呼ぶ。 「ねぇ晩飯まだ?てか洗濯も出来てないよね?1日家にいるのに、なにしてんの?」 私はまず包丁を握った。
「失礼、警察です。貴女の恋人に殺人容疑がかかっておりまして…」 「え?」 「逃走中の彼について、お話しを聞かせていただきたく…」 ショックで茫然とする私を見かねて、刑事達は質問もそこそこに帰っていった。 彼が…殺人鬼だったなんて……探されちゃう…彼をもっと遠くに…埋め直さないと……。
「ねぇ、この前ノートPCをバスタブに沈めてたよね?」 「ん?あぁ、もう捨てるからな」 「どうしてそこまでしたの?」 「そりゃ当然だろ、個人情報の塊なんだから」 「実は復元できたのよ。貴方の浮気データも一緒にね」 「は!? 嘘だろ!?」 「えぇ、嘘よ。でも、マヌケは見つかったみたいね!」
「昔、元カレから貰った贈り物って、なんか捨てらんないんだよね」 「わかる!私も捨てられないもん」 「例えば何貰ったの?」 「包丁」 「えぇ…変わってるね」 「うん。『もし俺が浮気したら、これで刺していいよ』ってくれたの」 「捨てなよそんなの…」 「でも…捨てたら証拠隠滅罪になっちゃう」
「兎と亀の話は妙だよママ」 「どうして?」 「そもそも亀はなぜ不利な勝負を仕掛けたんだろ?兎が寝たのも亀に都合が良すぎる。亀が仕組んでたんじゃ…」 「そうね。でもママはこう思うの」 「?」 「亀は万年だから…きっと、兎が生きてる内に遊びたかっただけなのよ。大事なのは、勝敗じゃないの」
「あ、キャベツ安い」 久しぶりに自炊しようかと思ったけどやめておいた。最初は楽しかったが、疲れもあり、メンドくささが勝ってしまったのだ。 「早く奥さん見つけたいなぁ…」 そして1年後、俺は結婚した。 「美味しい?」 「最高♪」 やはり俺は、大切な人に食べてもらってこそ、料理を楽しめる。
大学からの帰り道、オジさんに話しかけられた。 「やっと見つけた…」 「え?」 「誓ったじゃないか。来世でまた一緒になろうねって」 「はぁ?」 ヤバい人だ。めっちゃ怖い。最終的に警察につれていかれる時オジさんは必死に何かを叫んでいた。あぁ怖かった。私の前世の相手は、あんな醜男じゃない。
「クラスに付き合ってる人いる?」 「いるよ」 「え~!誰?」 皆で次々と男子の名前を挙げたけど、結局、全員の名前を言っても「違う」と返された。 「嘘は無しだよ!」 「ううん、嘘はついてないよ」 (あ、女子かな…?) チャイムが鳴りHRが始まる。彼女の蕩けた視線の先には、担任の姿があった。
「今日は皆に転校生を紹介する…が、その前に転校生の鈴木さん、君に言っておく事がある」 「なんですか先生?」 「パンを咥えながら登校するな。朝食は家でとりなさい」 「はぁい」 「あとバイク通学は禁止だ。いいな?」 「はぁい」 「よし。じゃあ君の席は、今朝病院に運ばれた安田の隣だ」
母校で、旧友たちとタイムカプセルを掘り出し、皆で開いた。 「聡君は何入れてたの?」 「昔、君に渡せなかった物だよ」 聡はカプセルの中から小箱を拾い上げる。開くと、手作りの拙い指輪が入っていた。 「僕と結婚して下さい」 「ふふ…もう1度、式も挙げる?」 彼からの、2度目のプロポーズだった。
アパートに帰ると、お隣の男子大学生が自室の前で体育座りしてた。 「鍵無くしたの?」 「いえ、終電逃した女友達を中に泊めてるので」 「それで君は外に?紳士過ぎない?」 「いえ、せめて床に寝せてって頼んだら『ダメ』って…」 「え、女の子に追い出されたの?」 「はい。そんな所に惚れたんです」
「よかったら、LINE交換しない?」 「ごめん、LINEやってないの」 「じゃあ、番号交換しようよ」 「ごめん、スマホ持ってないの」 「じゃあ、家に遊び行っていい?」 「ごめん、家無いの」 「じゃあ、ウチに住まない?」 「……いいの?」 こうして、僕とクラスメートの、奇妙な共同生活は始まった。
ダメだダメだ…! 書けたはいいが、読み返す度につまらなく感じる。俺は尊敬する大作家さんに助言を求める事にした。 『どうしたら納得のいく作品を書けるのでしょうか?』 『簡単だ。私の言う通りにしてみなさい』 俺はコンビニに走り、ウォッカを買って一気に飲んだ。俺の作品が、傑作に化けた。
和装に身を包み、背筋の伸びた義祖父は、老齢ながらも実に凛々しい。 「僕も義祖父さんのように、良い歳の取り方をしたいものです」 義祖父は首を振り、自室に戻ると、グラサンにパーカー姿で出て来た。 「良い歳の取り方とは、人生を楽しむ心を、忘れない事じゃろ?」 最近HIP-HOPにハマったそうだ。
「ヘイSiri 今日の天気は?」 「……」 「ヘイSiri 今日の天気は?」 「……」 「ヘイSiri?」 「はい、なんでしょう?」 「今日の天気は?」 「雨です」 時々ウチのSiriは調子が悪くなる。修理に出しても異常なし。なんでだろうなと思い返してみると、全て、彼女とデートした翌日の事だった。
動画を楽しんでいると、そのコメント欄に『くそつまんねぇ』とあって、水をさされた気分だった。『言葉は選びましょう。それが人の理性であり、品格です』と返信してから気付いた。コメント投稿日は2年も前だった。そんな昔のコメントに、何をマジレスしてるんだ俺は。しかも、俺のコメントだった。
妻と録画番組を見てると、画面の中で仮面の催眠術師が芸人を眠らせた。 「今のシーン 巻き戻せるか?」 目を凝らすと、恐ろしく速い手刀が、芸人の首筋をとらえているのが見えた。つまり、インチキだ。 「俺でなきゃ見逃しちゃうね」 突如 首筋に衝撃が走り、意識が遠のいた。 「勘の良い夫は嫌いよ」
弊社社員の残業時間がヒドいので『定時で帰りましょう』と呼びかける動画を作り、毎日視聴を義務付けた。その結果、社員は全力で仕事を定時までに終わらせ、飲みにいくようになった。 「そんな動画でも、役に立つんだな」と役員は言う。「えぇ。ビールの画像を0.03秒、何度も細かく挿入してるんです」
奇妙な光景だった。 その作家は、丹精込めて世に出した作品への批難をネット上から探し、それが多いほど喜んでいた。 「なぜ、自分の作品をボロクソに言われて喜んでいるのですか?Mなんですか?」 作家は答えた。 「だって、趣味が合わない人にまで届くことこそ、人気の証でしょう?あと、Mです」
ケンジはどちらかと言うと、顔が良い方ではなかった。頭が良い方でも、トークが特別上手いわけでもない。それでもケンジは、今までに5人の彼女を作り、その全てはナンパで捕まえたと言う。 「一体どんなトリックなんだ?」 俺がそう問うと、ケンジは一言、こう答えた。 「5勝829敗」
Q1:小学校の頃どんな技を練習しましたか? という質問に、様々な解答が寄せられました。 波紋・かめはめ波・霊丸・二重の極み・螺旋丸・ギア2・月牙天衝・領域展開・水の呼吸… しかし Q2:それは習得できましたか? という質問に97%もの人がNOと答えました つまり、挫折は決して恥じでは無いのです