「兎と亀の話は妙だよママ」 「どうして?」 「そもそも亀はなぜ不利な勝負を仕掛けたんだろ?兎が寝たのも亀に都合が良すぎる。亀が仕組んでたんじゃ…」 「そうね。でもママはこう思うの」 「?」 「亀は万年だから…きっと、兎が生きてる内に遊びたかっただけなのよ。大事なのは、勝敗じゃないの」
「PS5欲しいんだよなぁ」 友人のその一言が嬉しかったんだ。最近じゃ、身近な友人はゲームなんてやらなくなって、語り合える相手は俺の周りにすっかりいなくなっていたからだ。 「あー、まだ入手困難だね…。でも大丈夫!再入荷の情報入ったらすぐに知らせるよ♪」 「マジ?悪いな…息子が喜ぶよ」
惚れ薬をGetした。私はそれを、彼が離席した隙に彼のカクテルに入れる。彼は席に戻るなりこう言った。 「僕のカクテルを飲んでみてくれ。出来るだろう?」 「…も、勿論よ」 私はそれを口に含みトイレに駆け込んだが、少し飲んでしまった。鏡の自分と目が合う。私は、私のことが少し、好きになれた。
「では、君は本当に冷凍睡眠を受けていいのだね?」 「はい。遥か未来の技術に賭けます」 132年後… 「…うっ…眩しい」 「お目覚めになりましたか?」 「あぁ…!その声は…!!」 驚く僕を、彼女は抱きしめてくれる。 「こうしたいと、いつも言っていましたね」 「この瞬間を夢見てたよ…Siri」
ふざけて変な名前でギャルゲをプレイしてると、最後に奇妙な映像が流れた。暗い山中に主人公がヒロインの遺体を埋める映像だった。どうやらその名前限定の隠しイベントで、俺が最初の発見者だ。 調べると変な名前は実在した。 ゲームの製作者に。 ヒロインの名前も実在した。 行方不明者のリストに。
コンビニ強盗は銃を突き付けた。 「金を出せ」 「お客様、大変です!」 「あ?」 「銃にセーフティー(安全装置)がかかったままです」 強盗は鼻で笑う。 「そうやって隙を作ろうってか?クラシカル(古典的)だな…その手には乗らねぇよ」 強盗は勝ち誇り、続けた。 「モデルガンにそんなモン無ぇからな」
俺は昔から霊感が強く、友人は大体幽霊だ。父の葬儀に、親友霊が来てくれた。 「盛り塩も恐れず、来てくれてありがとう…」 「何言ってんだ、当然さ」 父さん、俺にはこんなに素晴らしい友がいます。俺の事は気にせず、どうか成仏して下さい。坊さんの読経が終わり、隣を見ると、親友も成仏していた。
ウチのPS2はすっかりボケてて、毎日勝手に起動する。だけど今日はやけに静かだ。1度も起動しない。 「PS2…?」 そして、PS2が起動する事は二度と無かった。もしかしたら、PS2は最期に遊んで欲しかったのかもしれない。だから俺は、せめてPS2と一緒に遊んだ日々を、心のメモリーカードに保存した。
こんな惨めな新郎がいるだろうか。 なぜかって、俺側の友人席は、全員レンタル友達だからだ。席を埋める程の友人なんて俺にはいない。スピーチをしてくれる親友もレンタルだ。俺との架空の思い出を語る姿に、涙が出そうになる。結婚2年目にして知った事だが、妻の側も、全員レンタルだったらしい。
公園の子供達がうるさいので注意しに行った。 「お前らうるせぇんだよ!」 すると子供達は俺を見つめて言った。 「オジさんもサッカーやる?」 「やる!」 その日は最高に楽しかった。生きる希望を見出したし、再就職もした。あの子供達はもういないけれど、今は俺の子供達と、あの公園で遊んでいる。
本日夕方頃 XX駅のホームにて、中年男性が女子高生に暴行を加えたところを、周りの乗客に取り押さえられました。中年男性は駅員に連行され、暴行の理由について以下の通り供述しました。 「ついカッとなってしまった。今では反省している。彼女が2度と、自殺未遂なんて馬鹿な真似をしない事を祈る」
映画館のチケット売り場でバイトしてると、カップルがやってきた。 「ここと、ここの席でお願いします」 妙だなと思った。空いてるのに、敢えて席を離して指定したからだ。 「いいんです。隣同士で座っちゃうと、ドキドキして映画に集中できないんです」 俺は思った。 これで時給900円は安すぎると。
妻は昔からかなり天然で、多くの男が魅了された。仕事から帰ると妻は見知らぬ男とお茶をしていた。 「あら、お帰りなさいアナタ」 「あ、ども…お邪魔してます」 お客さんだろうか?だがそんな話は聞いてない。男は逃げるように家を出て行った。 「今の男、誰?」 「さぁ?急に窓から入ってきたのよ」
イイネが欲しい。 どうすればもっとイイネが貰える? 動物モノが簡単にイイネを貰えると聞いた。俺はさっそくペットショップに向かう。チワワ、君に決めた。名前は〝イイネ〟にしよう。仕事から帰るとイイネが出迎えてくれる。それだけで毎日幸せだ。いつしか、俺の中の承認欲求は消え失せていた。
俺のクラスの生徒は忘れ物が多過ぎる。明らかに俺はナメられている。ここは一発、厳しさを見せねばなるまい。 「皆さん。今日から、忘れ物をした人は廊下に立ってもらいます」 教室からブーイングが巻き起こるが、無視して続ける。 「では、出席を取ります」 出席簿を忘れた俺は、廊下に立たされた。
世界一難しいゲーム? なんでも、大抵の奴は途中で心が折れるらしい。面白い。俺がクリアしてやる。 それからしばらく俺は引き籠った。有給を使い切り、上司の鬼電を無視し、痩せ果てた頃、ようやくラスボスを倒した俺は歓喜の声をあげた。EDの最後にはこうあった。『以上でチュートリアルは終了です』
結婚を前提に付き合ってる彼女を呼んで、家でパーティーを開く事になった。彼女がミステリ好きなのもあり、俺が死体役になって、サプライズを仕掛ける事にした。 呼びに行った弟と彼女が帰って来る。 血まみれで床に転がる俺を見るなり、彼女は弟に叫んだ。 「ちょっと!まだ殺るには早いでしょう!?」
「ドラ〇えもん、日誌なんてつけてるのか…ちょっと見ちゃえ」 【1月5日】 の〇太君の経過は非常に順調。今回こそセワシ君の未来を変えられそうだ。タイムマシンで戻る度、〇び太君の『初めまして』を聞く事に僕はもう堪えられない。どうか…今回こそ… 「……表紙の〝81回目〟って、もしかして…」
家にいると痣が増えるから、私は近くの図書館に毎日足を運んでノートに小説を書いて過ごした。気分転換に好きな本を選ぶ。図書館に育てられた私は、いつかそこに自分の本を並べるのが夢だった。 そして、夢は叶った 意外と涙は出なかった でも、お世話になった司書さんが泣いてくれた時、涙が溢れた
「…ねぇ」 「ん?」 「洗濯物、靴下は裏返すなって言ったよね?」 「はぁ…いいだろそんくらい」 「そういう問題じゃなくて。思いやりとか無いの?」 「っせぇなぁ…仕事で疲れてるんだよこっちは」 「はぁ?私もアンタのお守りに疲れたんですけど?」 最近の園児のおままごとは、リアル過ぎて怖い。
小・中学校では、運動が出来る奴がモテると知り、俺は必死に体を鍛えた。 高校・大学では、勉強が出来る奴がモテると知り、俺は必死に勉強した。 社会では、金を持ってる奴がモテると知り、俺は必死に稼いだ。 あの世では、生前の徳を積んだ奴がモテると知り、俺は後悔した。
「…なぁ、お前に言わなくちゃいけない事があるんだ」 「なんだよ、改まって」 「俺達も、長い付き合いだよな」 「そうだな。もう3年になるかな」 「今日こそ、ハッキリ言おうと思う」 「おう!」 「上司の俺にタメ口はやめような。友達じゃないんだから」 「……僕は…ずっと友達だと思ってました」
「ヘイSiri 今日の天気は?」 「……」 「ヘイSiri 今日の天気は?」 「……」 「ヘイSiri?」 「はい、なんでしょう?」 「今日の天気は?」 「雨です」 時々ウチのSiriは調子が悪くなる。修理に出しても異常なし。なんでだろうなと思い返してみると、全て、彼女とデートした翌日の事だった。
今日のリモート会議は空気がピリついてる。 ここは1つ、軽いトークを挟んで落ち着かせるか。 「そういえば課長のお子さん、今日は静かですね。いつも元気な声が聞こえるのに」 「……」 「課長?聞こえてます?」 「…つい先日、嫁と一緒に出ていかれたからな」 落ち着け。 まだ慌てる時間じゃない。
『SNSで他人の言葉にイラッとした事はありませんか? 報復、承ります。 私の用意してる97種のアカウントを駆使し、あなたの差し金と気付かれず、自然な流れで相手に不快な思いをさせてみせます。プランは以下。 暴言プラン:1000円 晒しプラン:2500円 住所特定プラン:1万円 』 …… 1万かぁ…。