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学習障害は読み書きの困難さに着目されがちですが、着目すべきは読み書きに脳のキャパの大半を使ってしまうこと。多くの人は読み書きの最中も色々なことを考えます。考えるからこそ記憶したり学んだり出来るのですが、それが出来ないとなると授業が「読み書きをするだけの時間」になってしまう訳です。
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不登校になって15年以上自宅から出れなかった彼に、「これまで誰にも信じてもらえなくて辛かったよね。人の視線が痛いこと、雑音が耳に刺さって辛いこと、僕は信じるよ。」と伝えた。彼は今、外で働くことが出来ている。彼に必要だったのは外に出る訓練ではなく、辛さを共感してくれる人だったのです。
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「ボランティアって世のため人のため‥というイメージが強いけれど、活動を通して自分の知見が広がるし、自分に対する投資だよ。」と、学生には伝えている。誰かのために「してあげる」という気持ちが強すぎると相手に感謝を求めてしまい、逆にボランティア先で迷惑がかかる可能性すらあるんですよね。
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かなり前の話なんだけど、「先生、講義に出るのが辛くて・・」と相談されたので、「分かった、代替案考えるね。こうして助けを人に求めるって勇気がいったと思うんだ。本当によく頑張ったね。」と伝えると、泣きながら笑ってくれた。助けを求めるのは勇気がいるし、その大切さを教えてくれた出来事。
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忘れ物が多くて悩んでいる人に「なんでメモしないんだ!」みたいに責めないでください。既に失敗経験を繰り返しているので余計に辛くなります。一方で、「アラームかけてみたらどう?」と声をかけて頂けると嬉しいです。悩んでいる人が欲しいのは指示ではなく「工夫の選択肢」なのです。
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指示に素直に従う子って、「あの子は優秀だし大丈夫」と放置されがち。でも、指示に従う要因が「叱られたくない」「優秀じゃない自分を見せられない」だったりすると、しんどくても誰にも言えずにストレスを溜めてしまい、いつか爆発してしまう。指示に従うから大丈夫・・ではないと思うのです。
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「何回言ったら分かるの!」という叫び声を聞いて、「何回言ったら伝わってないことに気づくの!」と条件反射で考えてしまう自分を・・どうかお許しください。
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忘れ物が極度に多い子に必要な力は、忘れない様に「努力」をさせることではなく、忘れない様に工夫したいという気持ちを生み出すこと。この気持ちを生み出すためには、本人が工夫した努力を「忘れ物をなくすために工夫してることが凄いと思う!」と大人が認めることが大切だと思うんですよね。
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不注意性が強い僕はバイトでミスを繰り返していたのだが、ある日、上司に怒られた。その理由が「お前がミスをするのは仕方がないし、そこは怒ってない。怒っているのはお前が『自分はミスをしない』と過信して手を抜いていることだ。」だった。出来る部分で手を抜かないという大切な事を知った出来事。
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お正月に里帰りした。両親は不注意性と衝動性の強い僕の子供(孫)達を責めることなく、成功確率の高いお手伝いを子供達に頼んで、うまくいったことを褒めてくれる。嗚呼、自分はこうして育てられたのだと。不注意性と衝動性の強い僕のことを責めずに育ててくれた両親には感謝しかない。
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僕の不注意性を叱るのではなく、「忘れてるでww」と笑って言い続けた両親。僕が忘れない様に視覚支援するなど、今考えると先進的だった。お陰で自分の不注意性を自覚したし、早い段階で工夫することの大切さに気づいた。そんな息子は父親になり、今は息子達に「忘れてるでww」と言い続けている。
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「障害の有無に関わらず、誰もがオシャレできる世の中にしたい」と言うと、「オシャレなんて後回しだろ。お前は実情を分かってない」的な批判を稀に頂戴します。確かに優先順位が低い人はいるでしょう。でも私は、オシャレしたい人が当たり前にオシャレ出来る社会を目指したい‥ただそれだけなのです。
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学習障害などで読み書きに困難さがあるからって、読み書きが嫌いと決めつけない方が良いです。「出来る・出来ない」と「好き・嫌い」は別の話。大切なのは、”出来ない”を”出来る”にする事に執着するのではなく、”好き”を大切にして増やしていくことだと思うんですよね。
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「長所を伸ばしましょうと言われたのですが、息子の長所が見つからなくて‥」と相談されたので、「長所って他人と比較してしまいます。長所を伸ばすのではなく、本人が『出来た!』と感じる瞬間を探して、そこから出来ることを増やしてみませんか?」と答えたところ、長所が見つかったと報告。何より。
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「人権週間だから○○君と遊んであげましょう。」と担任に言われ、外に出れなくなった彼。自分もクラスメイトに「人権週間だから遊んでやる」と言われてきた人間だからこそ、彼の辛さが痛いほど分かる。言った側を責めるつもりはない。ただ、言葉が持つ凶暴性を常に自覚しないといけないと強く思う。
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「学校には行きたいけれど、環境がしんどくて‥どうしよう‥。」と相談されたので、「学校は水中と同じ。息を止めて泳いで、苦しくなったら息継ぎをすれば良い。まずは息継ぎできる場所や人を探そう。」と伝えたところ、楽になったと報告。ストレスが減る見通しを視覚的にイメージするって大切だなと。
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美談に思われると嫌なので補足しますが、実際は「すいません。。実は体調不良の方がおられるので。。」的な弱い感じのアナウンスです。バス内に団体さんがいて、通常よりかなり騒がしい状態で、あまりにも辛そうだったので本人の意思を確認し、そっとアナウンスした・・という話です。
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バスで移動中、女性が苦しそうに座っていた。耳に指を入れていたので、音に過敏で苦痛を伴う聴覚過敏を疑った。「静かにする様にアナウンスしましょうか?」彼女が強く頷いたので、乗客の皆さんにお願いした。対応が正解かどうかは分からないが、可能性を知っておく事の大切さを実感した出来事だった。
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「大学で退室するのに許可がいるの?」的なコメントを頂いておりますので補足しますが、許可は要りませんし、私も一時退室を許してきました。ただ、それを「公言」しないと、部屋から出にくいのです。今回の論点は許可するしないではなく、「公言」の有無です。
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「講義中にトイレに行きたくなる可能性があるので、途中退室を許可して下さい。」とお願いされたことがあって、以降「全ての」学生の一時退室を許可してみた。すると、結果的にパニック障害や感覚過敏の配慮にもなったのです。個別の配慮を全体に広げれば、多くの人が恩恵を受けると思うんですよね。
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過去に一度だけ「大学の先生なのに、なんで丁寧に教えないんだ!」とクレームが入ったことがある。その時、「教えるから考えないし、考えないから学ばないんですよ。大学は教えられて勉強する場所ではなく、学ぶ場所です。」と答えた。後悔はしていない。