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ではなぜ出来ているかといえば、ファン活動の延長として権利者側がいわば「見て見ぬふり」をしているから。正式な許諾は、ライセンス管理が到底できないので難しい場合が多く、この「放置」で花開いたのが日本の二次創作の最大の特徴ですね。 この辺り、このコラムなど参照。 japan.cnet.com/article/350545…
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この(広い意味での)黙認文化を支えたのが、「親告罪」といって、権利者などの告訴がないと国も起訴できないルール。 なお、元の作品をそのままグッズにコピーしたような場合には「非親告罪」で、(あくまで理論上は)権利者の告訴がなくても起訴・処罰される可能性があります(123条2項)。
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という訳で、正面から「二次創作できますか」と尋ねられても、多くの権利者は答えを濁すか、企業など悪くすれば「侵害です」なんて硬い答えが返って来るだけだから危ないよ。という意見が多かったのですね。 これはまあ、その通りでしょう。
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見方を変えれば、誰かが尋ねに行ったくらいで崩れるかもしれない程度の、ある種もろいバランスの上に成り立っているのが日本の二次創作文化、とも言えるわけですね。善くも悪しくも。 パロディ規定などがあればその範囲では適法なので、こうした論争とか非親告罪化が脅威には、そもそもなりにくい。
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この辺りは文化庁も大真面目に調査したことがあって、暫定的に「パロディ規定などにも欠点はあるので、現状の黙認状態の温存でいいのでは」という結論が出ています。 が、論点としてはずっとそこにあると言えばあるのが「あいまいな二次創作大国・日本」の著作権問題ですね。 bunka.go.jp/seisaku/bunkas…
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なお、対処策のひとつは権利者・創作者側が、「ここまでなら二次創作していいよ」という二次創作ガイドラインを公表することですね。 ここも色々と面白く、最近では田島弁護士がコラムで割と掘り下げてます。 kottolaw.com/column/220331.…
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旧統一教会が、著作権を持つ映像(イベントやそこでの政治家スピーチ)の番組などでの使用に対して、「今後は無断利用に法的措置を取る」と発表したことが話題になっていますね。 これは、条件を満たせば放送・利用できます。関連する条文は主に2つ。
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「時事の事件報道」(41条)の規定では、事件を構成したりその過程で見聞される著作物は、許可なく報道利用できます。 事件をきっかけに、ある団体と政治との関わりや活動による被害に脚光があたった場合、団体が活動のアピールに利用してきた映像などは、この規定で利用できるケースが多いでしょう。
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問題は、映像が未公表のものだった場合で、この場合は著作権だけでなく著作者人格権(公表権)が関わります。そして公表権には、報道で使えるという明文の規定はない。 ただ、41条には引用などと違って「公表著作物に限る」という明記もないので、ここは個別判断です。
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「引用」(32条)の規定もあり、報道目的に限らず批評・検証などのために一定の注意点に従えば、やはり無許諾で使えます。 こちらは対象が「公表作品」に限定されていて、未公表映像は32条では無理です。ほかに、利用の程度や出典明記といった注意点があり、これなど参照。 kottolaw.com/column/000826.…
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最後に、映っている方の肖像権が、著作権とは別に関わります。 こちらは、デジタルアーカイブ学会の「肖像権ガイドライン」が一応の参考になり、政治家の方のスピーチの報道・検証利用などは肖像権の侵害とはならないケースが多数でしょう。 digitalarchivejapan.org/bukai/legal/sh…
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一方、信者の方などの肖像や個人情報には十分気をつけないと、かえって二次被害を助長してしまうことがあり、要注意ですね。 そうした点に配慮しつつ、メディアには委縮することなく、社会のために必要な報道を続けて頂ければと思います。 (著作権ではあと40条もありますが、ちょっとはずします)
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羽生結弦さんの動画公開がきっかけで、フィギュア動画の著作権に注目が集まっていますね。 これね、フィギュアや新体操のようなアーティスティック・スポーツの権利問題は、結構おもしろいです。 関わるのは、振付の著作権、スケーターの著作隣接権・パブリシティ権、そして楽曲の権利など。
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まず振付の著作権ですが、ダンスの振付と同じく著作物だろうとも思える。 ただ、正解の姿が相当絞られている個別の技に著作権はないので、要は音楽を含めた組み合わせに、どこまで独創性や選択肢の幅があるかの勝負ですね。そうでないと後進の振付があれもこれも著作権侵害ということになりかねない。
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次いでスケーターには、俳優やダンサーと同じ「実演家」として、著作隣接権があるか。あれば無断撮影を禁止できます。 振付が著作物ならそれを演じているため実演家になりやすいし、フィギュアの演技が芸能の性質が強ければあたる。一方、スポーツ選手一般は実演家にはあたりません。
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フィギュア演技じたいの撮影・配信が権利侵害にあたるかは、この著作権と著作隣接権にかかっています。 このあたり、町田樹さんが力作『アーティスティックスポーツ研究序説』で、任務動作と任意動作という切り口で掘り下げているので、ご興味があれば。
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なお、著名な選手の場合、パブリシティ権という別な権利は間違いなくあるので、写真集やグッズの無断販売はできません。 また、配信映像を切り取り転載するなどは別問題で、(埋め込みのような公式機能を使う場合を除いて)規約違反や映像の著作権侵害があり得ますので要注意ですね。
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最後に使用曲については、作詞・作曲の著作権と、音源の著作隣接権(原盤権)が関わります。 これは無断転載以前に公式にとっても、委嘱契約や編曲、シンクロ処理と呼ばれる壁があって、いつでも自由に配信できるものではありません。 原盤権辺りは、興味があればこちらなど。 kottolaw.com/column/211129.…
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先日登壇した緊急シンポの記事ですね。 7月だけで676ステージなど、もともと多かった中止公演数が4.7倍にも激増した舞台・イベントの危機、「開催制限はない」という理由で中止への政府支援策がほぼ存在しない現状、政府の検査緩和の方針と悩む現場など、多面的な解説です。 asahi.com/articles/ASQ8K…
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他方、文化産業保護のために、イベント中止だけで1年で約3500億円を支援したドイツ、総額2兆円を超える文化支援を展開した米国・フランスなどの調査報告については、こちらを参照。 日本は、コロナ以前に経常の文化予算が、国民一人あたりで韓国の実に8分の1です。 kottolaw.com/column/220510.…
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【お願い】現在、政府との再協議を控えて、舞台・イベントの危機に関する大規模な横断調査を実施しています。まず会員団体が対象ですが、今後個人やスタッフに拡大の予定。 もっとデータがないと勝負になりませんので、どうぞご協力を。8/26締切で、ただちに集計に入ります。 questant.jp/q/stagesurvey4
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NHKでも報道されましたね。アドバイザーとしてサポートした日本アニメの総合データベース『アニメ大全』が、ついに一般公開です。 日本アニメ100年超の歴史にわたる約15,000作品を検索でき、キャスト・スタッフその他メタデータ、ストーリー、画像など紹介。 www3.nhk.or.jp/news/html/2022…
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「さらす」ことの是非をめぐって、2つの話題を見ました。ひとつはTV局からの依頼DMを失礼だといってツイートでさらした方で、主に「失礼か否か」で賛否真っ二つでした。 もうひとつは、受け取った内容証明などをさらすのは絶対に禁物だという弁護士さんのツイートで、同種の発言をいくつか見ましたね。
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ここがポイントで、引用は未公表著作物については出来ないのですね(32条)。そして内容証明やDMは未公表文書です。 受け取った側が一方的に公表はできないし(公表権)、その結果、引用も成立しないのですね。ここに、公開作品や発表文書を引用して論評・検証する行為との決定的な差があります。
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先日話題になった、海賊版対策ハンドブック公開に続いて、文化庁が海賊版対策の弁護士等による相談窓口を開設ですね。本日スタート。 海賊版への対応は、まずは削除要請の送付が通常の第一歩です。YouTubeなど一般の投稿・SNSサイト上の海賊行為には、要請は十分効きます。 bunka.go.jp/seisaku/chosak…