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そもそもなぜ蔵に龍なのかというと、龍は古来から水や雨に関係する瑞獣と思われてきたからだ。木造建築で一番恐れられたのは火災で、昔は蔵の屋根瓦や妻壁に水や龍の字を書いて火除のまじないとした文化があったのだ。でも、ここのように龍の姿を形として、しかも立体としてあしらう例はかなり珍しい。
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昔は当然だったのかもしれないが、美術専門の勉強なしで、左官とコテの修行でここまで立体的で洗練されたものが作れるものなのだろうか。その昔、一時でも仏像やら人形やらを彫っていた身から言えば…三次元造形ができる人は本当に人間を超えていると思っている。心の底から尊敬する。
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本当の名前は「とくやす」で、トクサは「とくさん」の訛りらしい。トクサは大正末まではコテを握っており、蔵の家の人の年齢からみて龍は明治末~大正頃の作だと考えられる。また資料によれば、この他にも近辺に龍がいる蔵を3つ仕上げた口伝があると記述があった。…ぜんぶ見つけたら願いが叶うやつ?
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まず家の人に話を伺うと「ワシの爺さんの話だが、“トクサ”って江戸時代生まれの職人が作ったと聞いた」と教えてくれた。その後、郷土資料類を取り寄せて片っ端から読むと、地元の学芸員の手記に1件だけ記載があった。天保(1840年頃)生まれの左官職人で、80代まで職人を続け90代まで生きた人だという。
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・トクサの龍
岐阜県のとある峠で、龍が飛び出た蔵を見かけた。まるで壁から突き抜けたようなそれは、かつて左官職人がコテと漆喰で作った鏝絵だ。ふつう鏝絵はレリーフ程度だが、これほど立体的な造形のものは珍しく、作った人は相当腕が良かったと思われる…というわけで探した(続)
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現代文は、気持ちや感受性の問題じゃなくて、「これをこう書くとこういう効果があってこういう表現としてこのような内容を表しています」という文の死体解剖だからね。文系科目の皮を被った科学分野ですよあれ(ゆえに得意だった)
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ある山奥の谷間にかかる藤花の橋。病気で体が不自由になった旦那さんのため、奥さんが家から見える位置に藤を植えたものがこうなったのだとか。別の用事で向かった集落で、現地の人に教えてもらった場所なのだが、こんなに雨が似合う風景もないと思えた。
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・北海道一周旅行をする皆さんへ
釧路以東、根室へ自家用車で向かう際は、必ず、必ず厚岸と厚床で車の燃料補給と簡単な点検、そして自分の食事等を済まし、30分程度は休憩をしてください。死にます。
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昔、大陸戦線にいた今90代の人が「日本語も支那語も漢字使ってるしだいたい通じるだろ」と思い、中国人の現地協力者に「油断大敵」と激励書いたら笑い始めたそうで、通訳に訊ねると、「中国語だと『料理用の油を切らすな』みたいな意味になりますよそれ」と言われたという話を唐突に思い出した。
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とある農村部を歩いていると、見慣れない円型郵便ポストを見かけた。住人に訊ねると、戦争が激化した昭和10年代、金属不足のため陶器などで製造された「代用品」の一種で、当時の逓信省がコンクリートで作ったポストだと語られた。しかも、現役のものは国内でこれが唯一なのだと…。
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