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そして口を開けば意味ありげなラテン語の警句のみを喋るように要求された。
フォリーは雨風を凌ぐように出来てない。居住にも適さない。与えられるのは骨とか、ボロい、読めもしない本の形をした置物とか。
人権とは何かと思うけど、彼らからしたら乞食よりマシだろ、なんてなもの。
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「ストラットン兄弟に犯罪履歴はありません。そして現場には覆面に使ったと思しきストッキングが。状況は完璧に真っ黒です! 後は、指紋を採取するだけ!」
警察はストラットン兄弟を猛追し、拘束。指紋を採取する。金庫に残された指紋と2人のそれは一致した。現代ならそのまま有罪間違いなし。
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「朽ちた廃墟や洞穴なんだから、隠者がいて欲しい」
古くはアレクサンドロス大王の時代、私財を持たず樽で寝泊まりして野良犬と今日の糧を争った狂気の哲学者ディオゲネス。
荒野で説法を繰り返し、廃墟でボロを身に纏った聖フランチェスコ。
最強のジェダイ、マスター・ヨーダ。
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見栄え良く、経験を積んだ客室乗務員であるジェソップは見事採用された。
「嘘みたい。移民で貧民の私がお城みたいな船で働けるなんて。シンデレラみたいね。ま、もてなす側だけど、さ」
こうして1911年からジェソップはオリンピック号で勤務し始めるものの、巨大船舶はトラブル尽くしだった。
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『ビグラント議員とバーケンヘッドのバンタム大隊、結成さる』
と新聞紙は報道し、きっかけになった男はBBBと刻まれたエナメルバッジを受け取った。
バンタム大隊は期待通り、命知らずの勇戦敢闘を繰り返す。とは言え勇気だけで戦える戦争ではなく、バンタム大隊は消耗してきた。
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「お前、じゃがいもを食べるなんて……。ハンセン病に罹るぞ」
捕虜仲間からそう言われるパルマンティエだけど、まるで意に介さない。プロイセンは貧しい国で、国民に満足なパンを支給できないからじゃがいもを仕方なく奨励してる。まして捕虜ならパンなど出ない。
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「猿の事は忘れて下さい。私は通りにいる普通の人間で、支持母体を持ちません。だからこそ、皆の意見に耳を傾ける事ができます」
ドラモンド氏はずぶの素人で政治のアマチュアだった。立候補の動機はおふざけだった。ただ、伸びる意志はあった。彼は半年で修士号6つを取得する。
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スペイン人による南米征服は同国の暗黒史だけど、コンキスタドール、征服者達と言われた人達による侵略に関して、近年は少々変わった見解が出されてるみたいね。
シャルルマーニュの時代のヨーロッパ人でもさして変わらぬ事が出来たのではないかと。
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しかし沈みながらも回転を続けるスクリューにボートは引き寄せられる。ギリギリの瞬間、ジェソップは運を天に任せてボートから身を投げ出した。
スクリューと沈没する船の海流で頭蓋骨をへし折る重傷を負ったものの、ジェソップは奇跡的に生還する。彼女と共にボートに乗った人達は全滅していた。
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1914年、第一次世界大戦が始まる。オリンピック号と、タイタニックの教訓を盛り込んだ最後のオリンピック級であるブリタニック号は徴用される。
ジェソップは看護師として戦争に参加しており、配属された船は、ブリタニック号だった。
「何とまぁ、奇妙な縁ね。今度こそ、貴女と死んだりして?」
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焼け落ちたロンドンが急ピッチで再建されていく。元々の店を失った人達は、いい機会だからコーヒーハウスでもやるかと考え、ロンドン中でコーヒーハウスが開店した。
コーヒーはありふれた飲み物となり、庶民もコーヒーハウスに通い出す。何せ席料込みでコーヒーいっぱい、たったの1ペニーだった。
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誰からもお菓子貰えないから問答無用で悪戯するかな。
みんなの家のお庭にミントをばら撒き、タケノコを植えよう。
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「おのれ、余の子を噛み殺したか!」
怒ったルウェリン王子は剣を引き抜き、ゲラートを刺し殺すも、その悲鳴を聞いて赤ん坊が泣く声が聞こえてくる。ルウェリンの子は無事だった。そして、その傍らには大きなオオカミの死体が。
「お前、命懸けで余の子を守ってくれたのか。ああ、なんて事を……」
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おはよう。今朝のTIPS。
ヒ素はよく知られた毒物だけど、中毒者はありふれた病気であるコレラと似た症状を引き起こした末に死ぬ事から、ヨーロッパでは伝統的に暗殺の道具として用いられた。暗殺を多用したと言われるイタリアのボルジア家の『ボルジアの毒』もヒ素と言われる。
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おはよう、今朝のTIPS。
キティ・ウィルキンソンの献身を契機として公衆浴場の建設ラッシュが始まる。貧民にまで清潔を提供するのは、衛生上の大きな命題となっていた。昨日はお話の都合上一気呵成に解決まで書いたけど、実際にはコレラは毎年流行し、その都度何万人も亡くなってる。
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とにかく昔からこういう廃墟には隠者(ハーミット)が付き物。
折角それっぽいフォリーを建設したんだから、隠者もいて欲しいと言う事で、さも隠者が寝泊まりしてるような仄めかしの装飾を貴族達はフォリーに施し出す。
それでも満足できない彼らは遂に隠者を連れてきた。
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帰国して後、パルマンティエはじゃがいもの安全性と効能を声高に訴えた。
「我が国において無視されているこの野菜は、全く安全であるのみならず、美味であり、また栄養豊富で、そして痩せた土地でも豊富に実る万能の野菜です! どうかじゃがいもを可食物として認可されたし!」