19世紀末ヴィクトリアン時代 女性が着用した「ヴィジット」を研究用に購入しました ミッドナイトブルーのベルベット生地に、チャコールグレーのレースが縁どられた1着です こちらも「袖の構造」がこれまでのヴィジットとは一線を画す興味深いものでした
「隠し袖」とでも呼びましょうか フランスの狩猟服によくみられる「ピボットスリーブ」と似た構造で「袖のうようなマチ」が付いてるのですね これは、いわゆる「ケープ」とは全く異なる構造です この隠し袖があることで、腕の可動域が抜群に広くなります
19世紀末ヴィクトリアン時代 上流階級の女性のみが着用を許されたコート「アルスター」を紹介します まず、寸法ですが「バスト94cm/ウエスト52cm」です 前が閉まらずトルソーに着せることが叶いませんでした 何と言っても、くびれたウエストからお尻が突き出る「バッスルスタイル」が特徴です
美しいバラ柄のベルベットジャガードで仕立てられています 一見すると、背中に縫い目が無いように見えますが、近寄ってみると縫い目があることが確認できます まるで1枚の布で背中心を裁ったかのような、超絶技巧の柄合わせに驚きました ぴったりとバラの花びらが揃っています
この美しいシルエットを安定させるために、裾には「シルクに包まれた鉛」が8個も縫い付けられています これが地味に重いんです ここまで美意識を徹底したヴィクトリアン時代の淑女には頭が下がります また、このアルスターを仕立てた職人にも、大きな拍手を送りたいです
1892年イギリス ヴィクトリアン時代の女性たちの羽織りもの「ヴィジット」を縫いました この衣服は19世紀末の数十年のみ流行り、廃れました 羽織りとジャケットが混ざった構造に「和服」のテイストが取り入れられています 恐らく万博の影響を受けて生まれたのでしょう 複雑怪奇な構造は、必見です
「ジャパニーズスリーブ」の異名を持つ袖の構造は、あまりに不思議です ケープでもなくテーラードスリーブでもなく、和服でもない カオスな袖をしています 袖をめくって内側を見てみると、なるほど確かに和服風のつくりた垣間見えます
裏側を見てみましょう 恐らく、写真だけでは余計に構造を理解できないかもしれません 大きな特徴は「脇の下」 和服のように隙間が空いています 19世紀末の製図書に「間違いなくヴィジットは裁断士にとっても縫製士にとっても、最も困難な衣服だ」と書かれる理由に頷けます
続けて、袖をめくりあげてみましょう 袖を通す穴が確認できます この穴は「アームホール」と呼ばれますが、ここの設計がヴィジットの種類によって大きく異なりました 端的に言えば「階級が上の人ほど小さい穴」になります これは、他の多くの上着にみられる構造上の特徴です
以前、製作したヴィジット(侯爵夫人) 写真1、2枚目 今回、製作したヴィジットと型紙を比べてみるとアームホールのゆとり設計が全く違いました(3枚目) 技術者として大変興味深い点です ちなみに今回のヴィジットは「フローレンス」と名付けれたモデルです イタリア風なのでしょうか
今回は、同じ19世紀末の紳士服「ユサール」のデザインを取り入れて製作しました 日本では「肋骨服」と呼ばれるものです 下記URLにてユサールを紹介しています 胸飾りが特徴の、ナポレオン軍の兵士に人気のあった衣服です rrr129annex.blogspot.com/2019/01/hussar…
当時の実物と比べてみても、共通する構造が見えてきます 「前に垂れる布」と「背中から生える袖」が特徴ですね 袖のデザインは数多あり、アレンジ次第で違った表情が演出できそうです 当時の女性たちも凝ったデザインで仕立てさせたのでしょうね
当時のファッションプレートをよく見れば、さまざまなデザインのヴィジットを羽織った女性が確認できます 本来はお尻を盛り上げて着用するので「わざと背中が跳ねる」構造なんですね ぜひ、もう一度最初の写真を見てください ピョンッと跳ねているのが分かります
以上 1881年アメリカ「ドレス&クロークカッター」
私が製作したヴィジットは「実物」「型紙」ともに販売しています ショート丈が172,000円、ロング丈が146,000円です 興味ある方はDMにご連絡ください 「型紙」はどちらも15,000円で、8サイズあります 型紙のみ2月6日(土)よりweb販売いたします みんなでつくりましょう 楽しいですよ
2月6日(土)渋谷にて【半・分解展の器】をオープンします 今回のテーマは「美しき拘束着」 19世紀末ヴィクトリアンの淑女が羽織った不思議な衣服VISITE(ヴィジット)の研究経過を展示します ヴィジットの着心地と構造をお楽しみください 詳細はHPをご確認ください sites.google.com/view/dd-utsuwa…
女性のヒール高に合わせた「スパッツ」が完成です 甲の浮きもなく、綺麗にカーブを描いています パンプスに合わせればクラッシックな装いのブーツに変身しますし、なにより足元が暖かいです 2月6日より型紙を販売しますので、ぜひ作ってみてくださいね
19世紀末フランス 軽騎兵が着用した「ユサール」の女性サイズをつくりました 日本では「肋骨服」の異名を持つユサールは、漫画ゴールデンカムイの影響もあり認知を広げています 15世紀ハンガリーで生まれた軍服ですが、現代の女性が着ても似合うのです では何故、女性が着ても似合うのでしょうか?
その理由は「傾きの構造」にあります 「釦の開閉のみ」で、胸の造形をつくる構造は、フランス革命から第一次世界大戦の衣服に多く見られます これを「傾きの構造」と私は名付けました この廃れた造形美が、女性の胸を包みこむのに適しているのですね
もちろんユサールには欠かせない「胸の隠しポケット」や「腰のソードスリット」も設けています ただ単純にポケットをつくるのではなく、装飾のなかに上手く組み込んで、機能的に仕立てています 機能美と装飾美が一体となった1着です
この胸飾りは「ロシアンブレイド」と呼ばれます 日本の組紐にも近い構造をした丈夫な紐です 19世紀の衣服には、ロシアンサーキュラー(女性のコート)などロシアの名前がつくものを時々見かけます この写真は、19世紀末フランスの実際のユサールです
「傾きの構造」に関する考察は、Youtubeにもアップしていますので興味ある方はご覧ください youtu.be/x0d7VojaYgE
明日2/6(土)は【半・分解展の器】です 19世紀末イギリス「ヴィジット」の試作品第一号である、こちらの白いサンプルは格安でお譲りします 構造に興味がある方や、意欲的な学生さんなど、どうぞご自由にお使いください ヴィジットの他、ユサールやスパッツなども展示します お待ちしております twitter.com/rrr00129/statu…
アルスターを着られる人がいました
1892年イギリス ヴィクトリアンの女性が着た羽織りもの【ヴィジット】 着用写真です ちょうどヘソで交差するように設計された特殊な袖は、当時の貞淑な女性像を体現しているかのようです アジアンテイストも漂いますね ヴィジットの型紙は14日(日)まで販売しております↓ rrr129annex.blogspot.com/2021/02/visite…