現在、H3ロケットは「逆行手順」という作業を実施しているはずです。これは、火薬類の安全装置をセットし直したり、液体水素や液体酸素を機体から抜き取ったりして安全な状態に戻す作業です。その後、作業員が機体に接近しての点検作業や、おそらくVABへ戻す作業になると思います。
H3ロケットは、打ち上げ予定時刻の6秒前にメインエンジンに点火します。メインエンジンのLE-9はエキスパンダーブリードサイクルの液体エンジンなので、まずタンク圧力で始動し、燃焼室に点火、温度が上がってターボポンプの圧力が上がり、燃焼圧力がフルパワーになるのに数秒の時間がかかります。
大まかに考えられるのは、 ・LE-9の動作状況に何らかの問題があった ・エンジン始動後、機体に何らかの異常が生じた ・地上施設に何らかの異常が生じた ・センサーの誤検出 ・管制コンピューターの誤作動 ・人為的な緊急停止 などです。あくまで、一般論として考えられることです。
これらの措置は全て、「ロケット打ち上げに失敗するよりは、中止した方が良い」という安全のためのものです。ロケットは一度打ち上げてしまったら引き返すことは不可能で、「成功するか失敗するか」しかありません。いまH3ロケット試験機が発射台にいるのは、「成功のための中断」です。
H3の打ち上げ中止原因はJAXAの発表待ちですが、SRB3そのものの機械的な問題で、点火信号が届いたのに点火しなかった可能性は低いと思います。理由は、それが原因だと、2本のうち1本は点火してしまう可能性が高いから。2本とも不良の可能性は極めて低い。
H3ロケット打ち上げ中止に関してプレスリリースが出ました。 「ロケットの自動カウントダウンシーケンス中に、1 段機体システムが異常を検知し、固体ロケットブースタ(SRB-3)の着火信号を送出しなかったため、本日の打上げを中止することといたしました。」
さきほどの僕のTweetの中では「機体に異常が生じた」に該当する可能性が高いけれど、センサーの異常やコンピューターの異常の可能性も否定はできない、かも。岡田PMの説明が続いています。 twitter.com/ohnuki_tsuyosh…
第1段下部に搭載されている1段制御用機器が、着火信号を送信しなかったとのこと。これ以上のことは岡田PMも把握していないと。
記者会見質疑応答 MBC「率直な受け止めを」 岡田「申し訳ないと思っていますし、ものすごく悔しいです」(涙で声を詰まらせながら)
NHK「失敗ではなく中止か」 岡田「失敗の定義はいろいろあると思うが、シーケンスで止まったのは中止と考えている」 NHK「安全のために止まったのか」 岡田「そういう意味では、異常を検知して安全に停止したという状況です」
読売新聞「LE-9はおそらく正常で立ち上がったとおっしゃったが」 岡田「その通りです。全てのデータをチェックはしていないが、制御機器はLE-9は正常と判断していた」 ※大貫註:エマストのトリガーはLE-9ではないといいこと
共同「中止と失敗について。意図的に止めた場合を中止と思う。意図しない異常による中断だったのではないかと思うが、一般には失敗なんじゃないですか」 岡田「ロケットにこういうことはあるが、そういう場合に失敗と言ったことはない。それが非常識かはわからないが」
共同「それを失敗と言われても仕方がないんじゃないですか、どうですか」 岡田「我々は基本、安全に止まるように設計している。意図でないというのは、それを超えた場合は大変と思うが、想定を超えてはいない」
共同「それは一般に、失敗と言いまーす。ありがとうございます」
日刊工業新聞「使い捨てエンジンですが、安全なレベルで止まったということですか」 岡田「こういう止まり方を想定して設計している。エンジンを止める信号を送信して、宇宙で止まるのと同じように止まっている」
報道機関は批判も仕事なので、当事者が失敗ではないと言い張っても、それは失敗だと報じるのも自由だと思います。その報道機関の自己判断と責任で。 ただ、報道機関の社内で意見が割れた場合は、社内で話し合って解決するべきでしょうね。
相手を殴り続けても賞賛される状況になると、人間はいくら殴り続けても罪悪感を覚えなくなるけど、相手が原発事故だからって主観で殴り続けるのが正義だと勘違いしたら、一歩外に出れば誰も正義とは見てくれないですよ。
原子力ってああいう態度で報道機関の矢面に立ち続けてきたんだな…そりゃ記事も主観的になるわけだ。
ロケットの打ち上げの「失敗」ってなんだろう、ということを、せっかくの機会なので改めて考えてみたいと思います。客観的に、多面的に。
そのような観点から、宇宙ロケットでは「離床前の異常検知で打ち上げを中断する」ことを、一般には「失敗」とは言いません。再打ち上げまで数か月かかることもありますが、それ全体で最終的に「成功」すれば良いという考えです。
このあと別の質問で吐露されるのですが、岡田PMが声を詰まらせた「見守ってくださったのに申し訳ない」相手とは、種子島へ観に来てくれた子供達のことだったのです。 開発リーダーとして苦難を乗り越えてきた岡田さんも「これには弱い」と。 twitter.com/nhk_news/statu…
ロケット開発という仕事は、トラブルの連続。度重なる延期でも毅然としてメディアの前で説明してきた岡田PMですが、「遠くから来てくれた子供達にロケット打ち上げを見せてあげたかった」という思いは、また別のものだったのでしょう。
H3発射中止 JAXAは「設計通り」 トラブル、他のロケットでも | 毎日新聞 mainichi.jp/articles/20230… 「他のロケットでも」って、いなさまのコメントだったw 「これを失敗と言われるのはあんまりだ」と。朝日でも「失敗ではない」と書かれてたし、新聞各社もここ強調してる。
いやね、僕とかフリーランス勢がマスメディアの論調に噛み付いて、全体に方向修正されるようなことって過去にもあったけど、これだけ新聞各社が一斉に「失敗ではない」と念を押すのは、やっぱりマスメディアの記者も「共同のアレはない」と鼻白んだんだと思いますよ。
同じ科学報道でも、僕は宇宙開発の取材現場で、原子力のように高圧的な報道姿勢は見たことがなかった。記者が別の人なのかとか、内情は知らないけど。 でも、原子力報道の人がポンと来たらどれほど異質なのかよくわかったし、こりゃ原子力報道はダメだなと痛感したよ。