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当初、和書を出典としても、そこに使われている熟語は漢籍由来のものが多いから、漢籍も出典に挙がるのでは、と言われていました。でも、「令月」と「風和」の組み合わせは「万葉集」独特ではないでしょうか(主な漢籍をざっと調べたところでは)。提案者はうまい方法をお考えになりました。
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どんな文章も、細かく見れば表現の粗い所は見つかるものです。世間で言う「誤用」でなくても、一般的でない表現になることも。通じない表現は改めたほうがいいけれど、行き過ぎると、せっかくの個性的な表現を失う恐れもある。周囲の人に読んでもらって、違和感を持たれなければ十分だと思います。
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「日本で2番目に高い山、知らないでしょう。北岳です。富士山のように1番にならないと認知されないんです」というセミナー(?)の定番の話。おかげで北岳はけっこう誰でも知ってる感じになってきましたが、この話には変なところがありますね。富士山は一番高いから知られているわけではないです。
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「ご苦労さまでした」にしろ「お疲れさまでした」にしろ、「俺は苦労も疲れもしとらん」「目下から言われたくない」と思う人は当然います。そういう人への配慮はあっていい。でも、一般的には、目上に「お疲れさまでした」と言ったとしても問題ない。集中的に批判されるようなことではありません。
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「取り急ぎお礼まで」というメールの結びは失礼という意見について。私も、失礼というのは可哀相だな、と思います。「略儀ながらメールにてお礼申し上げます」がよりよいとする意見の理由は、「~ます」と言い切る形だからでしょうか。でも、丁寧な礼状でも「取り急ぎお礼まで」は常用されます。
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倉持益子さんの研究では、1990年代に「上司には『ご苦労さま』より『お疲れさま』がふさわしい」と言われるようになった模様。平成17(2005)年度の国語世論調査では、上司をねぎらう場合に7割近くが「お疲れさま」を選んでいます。「お疲れさまでした」は目上への挨拶の新スタンダードだったのです。
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「うまい」が「うまっ」となるのは、「尊(とうと)し」を「あな、尊(とうと)!」(=アア、尊イナア!)というのと同じ語幹用法です。日本語では「あな、暗!」とか何とか、昔から言っていますので、日本語から「い」が消えていっているとはいえません。▽ヨミドクター
news.yahoo.co.jp/articles/edd1b…
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補足すると、「十分・充分」について、個人個人がそれぞれ違うニュアンスを感じて、自分なりの意味づけをして使い分けるのは自由だと思います。それを否定するつもりはありません。でも、一般に明確な意味の区別は存在しないのに、区別があるかのように説明するのは問題があります。
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「○○について調べてみました!」式のまとめサイト、無内容な上に長文で、調べ物のじゃまになるので、何とかならないかと思います。私についての記事もあるんですが、内容が見事なほど間違ってるし、「誤用に厳しい人のようです」などと、私の普段の主張と真逆のことを書かれたりして、やれやれです。
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「お前が打たなきゃ誰が打つ」の文言が不適切で中日の応援歌が自粛とのこと。日本語では「お前」はもとより「あなた」も面と向かっては失礼な場合がある。名前の呼び捨てはもちろん失礼。「高橋さん、高橋さん、今お打ちにならないなら、どなたがお打ちになるのでしょう」なら許可されるかな。
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謝罪で「不快(不愉快)な思いをさせたことをおわびします」と最後をまとめることがあります。でも、問題は相手を不快にさせたことでなく、ヘイトや差別、ハラスメントであるケースが多い。いずれも人権侵害(無視)の話なので、快・不快の話にしてしまうと、問題分かってないなー、という気がします。
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「忙しいという字は心を亡くす(から余裕を持て)」という教えはありますが、これは「信じる者は儲かる」などと同様の民間字源説で、忌みことばとは微妙に違います。ところが、それがトンデモルール化され、テレビで「喪主挨拶で、お忙しい・ご多忙はNG」などと放送されるに至ったということでしょう。
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「令和」の作り方(構成法)は「昭和」などに似ています。「昭和」は「書経」の「百姓昭明、協和万邦」の「昭明」「協和」から上と下を取って組み合わせたもの。今回の「令和」もそうですね。「平成」は、「内平外成」または「地平天成」という一種の四字熟語から作ったものでした。
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部屋の整理をしていると、「予定を先送りしないためにはどうするか」といった趣旨の本が出てきました。以前から、読もう読もうと思いつつ、先送りにしていた本です。「こんな所にあったのか」と本棚に戻しました。これでやっと読むことができます。そのうち読もうと思います。
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先日のことですが、書店の辞書売り場に行ったら、男性が小型辞典を真剣に読み比べていました。手にしているのは『三省堂国語辞典』第8版と、近年新版が出た別の国語辞典。どちらか一冊を買おうとしている様子。物陰からそれとなく見る私。こういうスリリングな経験、普通ないと思います。
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「もっと厳しい態度で日本語の乱れを防いでほしい」という声をよくいただきます。私も、いくつか適当なことばを見つくろって「誤用だ」と非難するのは簡単です。でも、言語変化はあらゆるところで進行しています。その全部にNOを言うことは現実に不可能です。「識者」の批判は自己満足に終わります。