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薬師丸ひろ子「Woman」は、もう愛してもらえない相手に「行かないで」と願う曲。〈時の河を渡る船に オールはない流されてく〉という歌詞は、百人一首の「由良の門をわたる舟人かぢをたえゆくへも知らぬ恋の道かな」(楫を失ってただよう船人)という心境かも。少し違うかもしれませんが。
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氷川きよし「歌は我が命」。美空ひばりはマスコミを初めとして世間に大バッシングを受けた時期があり、紅白からも閉め出された(後に特別ゲストで出場)。〈心のなかまで 土足で踏まれて 笑顔のうしろで かげ口きかれて〉という歌詞には心が痛みます。ちなみに代表的なひばりソングは大体歌えます。
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布袋寅泰「さらば青春の光」は1990年代の曲ですが、〈きっと我慢できないはずサ〉と語尾がカタカナ書き。レトロな雰囲気ですね。〈しれたことサ〉〈むづかしいのサ〉のように語尾をカタカナで書くのは、江戸時代からあります。
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福山雅治「道標」で描かれるのは、曲紹介にもあったように父母とも、祖父母とも、または他の親しい人とも解釈できる。昨年の紅白の「家族になろうよ」でも歌の主人公は男性と考えても、女性と考えても違和感はありませんでした。誰もが入り込めるよう、表現が工夫されているのだと思います。
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返答するときに「とんでもない」を「とんでもありません/ございません」と言うことは戦前からありまして(例、宮沢賢治「月夜のけだもの」〈ご馳走なんてとんでもありません〉1921年)、戦後も例が多いです。むしろアウト扱いする主張が現れたのは、その後のようですね。 twitter.com/fudesakisanzun…
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「この作品」という意味の「本作」という日本語はないのかも、という文章を目にしました。「『広辞苑』などの辞書にないから」とのことですが、これは辞書の項目の立て方を誤解しています。「本作・本会・本品……」などきりがなく、「本」の意味を示せば十分なので、立項しない辞書が多いのです。
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ことばを専門に扱う人(編集者など)でも、辞書にないという理由で、原稿の語句を書き換えるよう求めることがあると聞きます。でも、辞書がことばを見落としている可能性もあるし、前述のように自明合成語と考えて載せていない、という場合もあります。辞書になくても使えることばは山ほどあります。
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『三省堂国語辞典』における「男」「女」(とりわけ「女」)の語釈の変遷について、1/5「NHKおはよう日本(首都圏)」および1/11「首都圏ネットワーク」で取り上げてもらいました。『三国』が昔から男女の性をどう説明しようとしたか、苦心の足跡を知っていただければありがたいです。(以下長文です)
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こういう現象は実はよくあって、napkin(ナプキン)が「布巾」の影響で「ナフキン」、cholera(コレラ)が「ころりと死ぬ」の連想から「コロリ」になったりします。私も小さい頃「ナフキン」と言ったかも。現在では元の発音に近い形を使う傾向がありますが、「パセリ」はそのまま残ったんですね。
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駅の「ステーション」も昔は「ステン所」と解釈したようで、今でも落語などで「ステンショ」と言っています。でも、英語教育が普及すると、人々は「さすがにこれはおかしい」と原語に近く発音するようになる。「パセリ」は例外的に残ったというのが面白いです。
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パセリはそもそもセリ科で、「オランダ芹」の異名もあります。だから、「パ芹」「葉芹」と解釈するのも無理からぬところがあります。一方、ハゼリソウ科の「葉芹草」という植物もあってややこしい。葉芹草は、もちろんパセリとは別物で、食べることもないと思います。
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古来の実名敬避は、呼び間違いを避ける、などという単純なものではないです。実名を呼ぶことは相手を支配すること。中国では君主の名と同じ字を使うことを忌んだし、日本でも中世からは天皇などとの同名を避けたといいます。女性は親や恋人以外には実名を知らせなかったというのも有名ですね。
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実名を呼ばないのは敬意を表するためですが、ただ、もしうっかり者の御家人が、間違って源頼家のことを「頼朝様」などと言ったら命を落としそうです。実名を敬避して「御所様」とか言っておけば、楽は楽です。「ミスを防止できてグッド」と思った昔の人も、少しはいたかもしれません。
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「日本で2番目に高い山、知らないでしょう。北岳です。富士山のように1番にならないと認知されないんです」というセミナー(?)の定番の話。おかげで北岳はけっこう誰でも知ってる感じになってきましたが、この話には変なところがありますね。富士山は一番高いから知られているわけではないです。
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富士山というのは、日本一の高さもさることながら、円錐形が美しく、四方の山から隔絶して高いから愛されているわけです。もし仮に、「正しく計測してみたら、日本一は北岳でした。富士山は2番目です」となっても、なおも日本の象徴的な山として愛され続けるだろうと思います。
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熊本の阿蘇山とか、鳥取の大山とか、高さの順で言えばかなり下の山でも、名をよく知られ、愛されている山はいくらでもあります。そう考えると、「1番にならないと認知されない」という話に対する反論材料がおのずとできてしまった。「世の中順位じゃないんだよ」という、なんかいい話になりました。
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「お茶をいれる」の「いれる」を漢字で書くとすると、あなたにとって一番自然なのはどの漢字ですか。教えてください。なお、以下の選択肢の字は、当て字も含め、どれも歴史上は例があるようです。
1. 入れる
2. 淹れる
3. 煎れる
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「お茶をいれる」の漢字のアンケート、ご協力ありがとうございます。圧倒的に「淹れる」が多く、7割を超えました。学校で習う字でないけど、よく見るからでしょう。語源的には「湯を注ぐ=入れる」で、国語辞典でも〈今は[入]が一般的〉とするものもありますが、実際には一般的とも言えなそうです。 twitter.com/IIMA_Hiroaki/s…
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「お茶をいれる」の漢字がテストに出たらどうするの、と思う人もいるかも。こういう曖昧な表記はテストに出ないので、大丈夫です。きちんとした出題者ならば、ゆれていることばの正解を問うことはしないものです。
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よく検討すべきご指摘だと思います。とりあえず引用ツイートのみにて。▽8年ぶり改訂の三省堂国語辞典の「フェミニズム」にザワつく心 「適当なこと言わないで」北原みのり dot.asahi.com/dot/2022012500… @dot_asahi_pubより
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