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ともあれ、ゴーンの逃亡・私闘で日本の司法がより「人権尊重」するようになるなら(しかしどうしたらそんなことが可能だろう)、けっこうなことだろう。悲しいかな、「人権尊重」と資本主義のグローバル化が手を携えて進むことのこの上ない例証でもある。
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『法の精神』では、個人の自由が刑罰との関連で論じられている。一つの焦点が「風刺」である。それによると、風刺が最も厳しく罰されるのは、風刺で支配層が揺らぎうる貴族政である。民主政においては権力者の抑制のため、風刺は全く自由にされる。日本の現行体制がどちらに近いかは明らかだろう。
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かくして、文明開化の論理の終焉とともに、我らが極東の島国の大学は、もはや御雇い外国人さえ雇えない後進国への「逆コース」をひた走るのであった。ーこれ何の弁証法?
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たしかに、福田恆存とか、江藤淳とかいった物書きや学者たちが、内調から金をもらって世論形成に励んでいたときの方が、同じ役割をメディア芸人や太鼓持ちが担っている今よりも、多少なりとも「お上品な」世界ではあった。
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ひとり司祭が、残念なことだが、しかし現世的なモノには起こることで、だからこそ、キリスト教では「人こそ礎 pierre humaine」と言うのです、とコメントしていて、ちょっと心を動かされる。
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学術会議の軍事研究反対は、ある種「最後の砦」として死守すべきだと思うが、直接・間接に「軍事」にかかわらない科学技術などない。事態は「イデオロギー」としての人文科学にしてもそう変わらないと思う。
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もちろん、欧米がアフリカ諸国に対して何らかの責任を負わないとは思わない。しかし、いわば政治的争点であるはずのものが、民事的な「賠償」のタームに置き換えられることには、違和感が残る。
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実際、合衆国やオーストラリアでは、先住民に対する「賠償額」を決定するために、歴史学者や法学者が動員されたりしている。そこで歴史学は過去の事実の探求というより、現在における「条件の平等」を整えるための、補助金支給額決定のための「計算」である。
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京大「変人講座」。京大ではしばらく前から電通入れて広報戦略練っており、あれもまたどうせその辺の入れ知恵である。一方で広告代理店介して「変人」ぶりを売りにしつつ、他方で、教員や学生を公然・隠然に処分するのが、今風の「自由の学風」だ。実に自由闊達な権力行使である。
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『蛍の光』は環境型権力の最たるもので、昨年も学園祭管理強化を進める某大学で、閉会時刻に『蛍の光』が大音量で放送されると、大半の学生たちがスゴスゴ帰り支度をするのを見て、パブロフの犬を思わされた。条件反射に陥らずにいるには一種の「狂気」がいるのだが、そんなやつはすぐ「逮捕」である。 twitter.com/zerojirou/stat…
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京都で戦争と言えば、WWIIではなくて応仁の乱、とかよく言われるが、私が京都で聞いたことのある「戦争」と言えば、蛤御門の変と、会津小鉄vs.山口組の「京都戦争」である。「応仁の乱」云々は、いずれも現実の武力闘争を隠蔽するためのダミーだと思う。
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小松左京は、山村工作隊の武装闘争路線時代に共産党にいたので「傾倒した」どころじゃないんだか、小松と同時期の京大伊文というと、後にグラムシやマキャヴェリ研究で知られる藤沢道郎がいる。56年のスターリン批判後、小松がSFに「転向」する傍ら、藤沢はイタリア共産党流の構造改革路線に移る。 twitter.com/ven12665/statu…
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五月三日が憲法記念日なのは、1947年のこの日に憲法が発効したからだが、そうなったのは前年十一月三日の明治天皇の誕生日に憲法が公布されたからだ。そのことに気づいてから、国家というのはあの手この手で正統性を担保したがるものだなと思ってきた。
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かっこよかった。長塚京三がソルボンヌで論文書いてたのは知らなかった。モリエール、ル・サージュ、ボーマルシェなんて、古典喜劇の王道だ。でも言われてみれば、留学中にフランスで役者やったりした人、ポスト68年世代の仏文学者にはちらほらいると思う。
koken-publication.com/archives/1883 @koken_Editより
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かつて留学生寮を集めた大学都市があったのは、モスクワとパリだけだったという。いずれもイデオロギーによって覇権を握ろうとした国々である。いまやフランスでは、留学生(博士)から50万円もの登録料をせしめる計画が持ち上がっている。西欧の没落、である。トルコは西欧に取って代わるだろう。 twitter.com/masanorinaito/…
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この記事、文学教育擁護派さえ、エリート教育の手段位のことしか言えていない。いずれ、国文学がもはや国民的同一性の核ではないことの反映だろう。島と日本語に守られた我が国では、放っておいても国民は統治され、働くものと、支配層は高をくくっているわけだ。
diamond.jp/articles/-/245…
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だが今般の円安のせいで、日本の大学の給料は私学でも、比較的低給で知られるフランスの大学より低賃金になった。レーヴィットのように今の日本に亡命してくる人も少なかろうし、「シーニュの帝国」流の神秘化のオーラもいまや昔。こうなると、日本で優れた外国人学者が教えるのはどんどん難しくなる。
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パリやベルリンでは水道再公営化の流れだ、とかコメントがついているが、日本人が参考にすべきは、もうヨーロッパの「先進国」ではなくて、かつての富の集積たる公共財を切り売りして財政難を凌ごうとし、生活費上がりまくった挙句、国家ごと破産した、アルゼンチンみたいな国じゃないか。 twitter.com/nikkei/status/…
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以前、京城帝国大学について少し調べた。内鮮一体を謳いながら、朝鮮系は文系では教授になれず、マルクス主義系と目されると、クビでなければ、満州に飛ばされる。唾棄すべき帝国主義大学だが、いっそう切ないのは、WWII後、北に渡った朝鮮系の卒業生たちの消息が、ほとんど絶えていることだった。
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小樽商科大学、小林多喜二の母校だが、フランス語の政治経済学関係の書籍が豊富で、Google Booksでたいていの本が見つかるようになるまでは、わざわざ北海道から本を取り寄せたりしたものだった。この国立大学唯一の社会科学系専門校が、北見工業大学・帯広畜産大学と統合予定であるのを知る。
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共産党政権崩壊後、かつてナチに担がれた昔の王様が帰ってきて、こいつが旧共産党と組んで政権を握ったという、驚くべきブルガリア現代政治の話も。空港までの幹線道路を走りながら、八九年にはここに百万人も人が出たんだ、としきりと言っていた。
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西日本の人間は概して東北を知らない。多分、心理的には北海道より遠い。しかし、東京-仙台は東京-名古屋とかわらず、東京-盛岡は東京-大阪都大してかわらないと知ると、なんかこう、地図が歪む感じがする。関東の人にとって一番遠いのは、山陰か奥丹後あたりだろうな。
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後藤田が平和主義者に見える時代や、野中が立派な保守政治家に見える時代を経て、ついに森喜朗がまっとうなことを言う時代が来た。長生きはしたくないものである。 twitter.com/Khovtoliv/stat…
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東京オリンピックの後は、大阪万博か。大学では「プロジェクト型」の融資はもう恒例になってしまったが、この間どうやら「国家」さえ「プロジェクト型」に移行しつつあるとらしい。要は「破局」の繰り延べと、成長率ゼロ代の時代の資本主義国家の「気紛らし」=目くらましだ。勝手にやってろ。
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『内閣調査室秘録』。協力者に福田恆存、江藤淳、村松剛等の名が見え、やはり残念。「反共」はもとより、核問題と60〜70s学生運動の比重の大きさに刮目する。批評家・評論家から、人文系大学人までが「役に立った」のは、自民党政権が激しくイデオロギー戦を闘っていた時代だったのだなと再確認する。