大きな主語で語られがちなイシューを1人の女性を主人公にしてすくいとったのは名匠・高橋伴明監督。主演の板谷由夏が良すぎる上に大西礼芳や柄本明ら間違いないキャスト陣のおかげで、重そうなテーマなのにすう~っと物語に惹き込まれてしまいます。『夜明けまでバス停で』今秋上映。ご期待ください。
同日に同じ病院でそれぞれ娘を出産した若いシングルマザーとまたねとお別れをして充実した子育ての日々を送っていたら急に娘の父親から「自分の子と思えない」とクソみたいなこと言われてならばとDNA検査したら【自分の娘でもなかった】映画を上映します。 あの日病院で別れた彼女はまだ何も知らない。
明るくて社交的でお節介焼きで何にでもアドバイスをくれるお母さんのことが、明るくて社交的でお節介焼きで何にでもアドバイスをくれるから、苦手。言語化できないそんな気持ちを抱えたままお母さんと同居することになる、無味無臭の薄めた毒を毎日舐め続けるみたいな映画を上映します。
この映画『わたしのお母さん』、途中で1つの【出来事】が起こってそれが母娘の関係を、そして映画自体を大きく揺るがせるのですが、ではそこまでは退屈かというと母娘の間に漂う【気配】にも非言語的なドラマが数限りなくあって…つまり最初から最後まで目が離せない映画です。
その非言語的なドラマを成立させているのが娘役の井上真央と母親役の石田えり。この2人の凄さは「駅でお互いを見つける」という、ただそれだけのセリフなしの30秒の演技でお分かりいただけるのではないでしょうか。凄い… 『わたしのお母さん』11/25(fri)より上映します。
「飼ってるブタを盗まれたニコラス・ケイジが静かにブチ切れて絶対に絶対に絶対にブタを取り返そうとする映画」という説明でこれは最高の面白B級アクション映画と思って観ると想像を遥かに超えるレベルで深く【人間】を描いていて圧倒される魂のヒューマンドラマを上映します。ニコケイの抑えた演技A++
人との関わりを断って山奥で高級トリュフを採りながら暮らす男がトリュフを嗅ぎ分ける相棒のブタを奪われて奪還のため街に降りる。街での相棒はトリュフバイヤーの若者。男には過去がある。若者にだって若いなりに、ある。だが過去のことは今はいい。彼らが今やるべきはただ一つ。「俺のブタを返せ」
ニコラス・ケイジ主演『PIG/ピッグ』11/11(fri)より上映です。ちなみにこの映画、映画フリークとして知られるオバマ元大統領が『ドライブ・マイ・カー』や『パワー・オブ・ザ・ドッグ』と共に選んだ2021年フェイバリット・ムービーの1本なのですが、観たら納得。これは選ぶ。 pig-movie.jp
田舎の冬の畑で住所不定の若い女性の凍死体が発見されて、なぜ彼女がそこで生を終えたのか物語が時系列を遡って数週間の足跡を辿っていく中で観る者の心に様々な想いが去来することになる、本国フランスで最もヒットしてここ日本で最も過小評価されてきたアニエス・ヴァルダの1985年の映画を上映します
アーサー王の円卓の前に現れたる異形異様の"緑の騎士"の「我に一撃加えた者に栄誉を、ただし翌年同じ一撃受けに来い」の提案に若きガウェインが来年不要と一撃で首を落とすと、かの者悠然と己の首を拾って「では来年」。やむなく首を差し出すために旅立つ、A24史上最もダークで美しい映画を上映します
喋るキツネ、大地をさまよう巨人たち、"獲物の交換"を持ちかける領主、そして草木の如くに生い茂る緑の騎士…信じがたい事柄の全てがこの旅に存在し、この旅に存在する全てが信じがたく変容を遂げた何かの暗喩。指輪物語の作者トールキンを魅了した中世文学の最高傑作、純正にして異形の映画化です。
スタジオA24はホラーやSFといったジャンル映画を換骨奪胎して芸術領域へと展開させることに異常に長けていますが、この仄暗い中世ファンタジー『グリーン・ナイト』もジャンル映画を遥か逸脱した地点にやすやすと到達しています。最高です。ご期待ください。12/9(fri)より上映
歌と踊りと下ネタが大好きなゲイの水球チームがフランスからゲイゲームズ開催地の東京に向かったら乗り継ぎ失敗してゲイ差別が横行する異国の地で一晩過ごすことになって、案の定じっとしてられなくて危険な夜の街に繰り出して案の定大騒動になって案の定東京に全然たどり着けない映画を上映します。
笑えて前向きになれてポジティブなメッセージを受け取れる『シャイニー・シュリンプス! 世界に羽ばたけ』はフランスでシリーズ累計70万人動員のヒット作。一応2作目ですが前作を観ていなくても問題なしです。あとこいつら大して水球しないので水球のルール知らなくても問題なしです。せんのかい。
授業を重ねる中で2人には友情めいたものも生まれるのだけど、それは【友情めいたもの】であって友情ではなくて、結局のところ噓がバレれば命はない。コメディみたいな設定が逆に過酷なシチュエーションを際立たせる『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』12/9(fri)~上映です。 movie.kinocinema.jp/works/persianl…
収容所送りのユダヤ人青年が「実はペルシャ人です」と嘘で生き延びたら堅物ナチス将校がペルシャ語習いたいと言い出して、仕方なく嘘の単語を次々考案しながら即興で授業するはめになる映画を上映します。この将校めっちゃ良い生徒で前回適当に作った単語を忘れてくれない。必死。こっちも暗記必死。
『ペルシャン・レッスン』上映までしばらくあるので、それまでに上映する映画をいくつか紹介しますと: ウォン・カーウァイ怒涛の5作品上映は9/16(fri)から twitter.com/Sarnathhall/st…
ゆるめのコメディなのに絵面がスタイリッシュすぎるこちらが9/30(fri)から twitter.com/Sarnathhall/st…
ブタのことしか考えられないこちらが11/11(fri)から twitter.com/Sarnathhall/st…
生卵って割れすぎ!と謎装置で卵を割れなく魔改造する『たまご割れすぎ問題』とか、料理から給仕までボタン操作で解決『全自動レストラン』とか、鉢植えから猫ちゃん大豊作の『ほらふき倶楽部』とか、百年前の無声映画期の知られざる天才チャーリー・バワーズの作品群が実に実に良すぎるので上映します
息を飲むほど究極に美しいエストニア映画を上映します。リアリズムと幻想怪奇とが霧の中で不可分なように、貧困にあえぐ村人が農具や骨でこさえた使い魔【クラット】を当たり前に使役し、死者も時に生者と食卓を囲む村。農夫の娘と眠れる令嬢と悪魔と契った若者の、予測不能のダーク・ラブストーリー。
ヨーロッパのキリスト教文化と異教文化とが溶けあったような映画『ノベンバー』は11/25(金)から上映です。まずもって、農具でこしらえたエストニア土着の使い魔【クラット】の造形や動きや生態だけで、この映画に心を持っていかれてしまうはず。予告15秒からです。
事故で記憶を失って以来なぜか時々「相手にこれから起こること」が見えるようになっていて、それがなぜなのか誰にも説明してもらえず、深まる混乱の中で記憶喪失の自分に献身的に尽くす夫のことをも怪しんでしまうようになる、観客のこちらまで深い謎の奥底へと引きずり込まれる映画を上映します。
スコットランドの片田舎で育った青年がロンドンに乗り込んで仲間とノリでインディレーベル立ち上げたら、運営はトラブル続きなんだけど意外と才能あったみたいでプライマル・スクリームやオアシスを発掘しまくる映画を上映します。この男、人の宣伝はお手のものだけど自分の人生は破綻してて滅茶苦茶。
インドの親友3人組が独身最後のバチェラー旅行でスペインに行って、全身に太陽浴びたり紺碧の海に飛び込んだりトマト投げたり牛追い祭したりインド映画の本領発揮で歌って踊って恋もしちゃう、素材100%スペイン×香辛料100%インドの極上カレーパエリアみたいな映画を上映します。最高の、大人の青春映画