この映画の題を聞いたなら、一冊の本を想起するかもしれません。ロシアだけで2700万人の死者を出した独ソ戦は百万を超える女性兵士が従軍した戦争でもあって。戦後、降る雪が血痕を覆うように消えていった"女たち"の声を、つぶさに拾い上げて一冊に編んだ名著「戦争は女の顔をしていない」のことを。
ロンドン高級レストランの超繁忙期の一夜に難しい注文やトラブルやクレームやスタッフ間の内紛が次々襲い掛かるけどひたすら皿を仕上げて客にサーブしまくる様子を90分間ノンストップ全編ワンショットで撮影した映画を夏に上映します。だいたい予想つくと思いますがこの映画…めちゃくちゃ面白いです。
タイトルは『ボイリング・ポイント/沸騰』。妻子との別居問題で開店前から絶不調のオーナーシェフを筆頭に厨房もホールも皆それぞれに何かを抱えていてそれがドラマを生み出していくのですが、とにかく「抱えているものがあるとか関係なく次から次へと注文が来る」ので、映画全体の緊張感が凄い。
CGで繋ぐ疑似ワンショットではなく本当のワンショット。台詞+演技+調理を要求される役者は当然、それを撮影するカメラマンも満席フロアと狭い厨房を縦横に動く高難易度。さらにコロナ禍で取り直し日程が消えて即本番。観てるこっちの胃が痛い(でも料理はとても美味しそう)。
厨房でホールでバックヤードで次々発生するピンチトラブルアクシデント。こんなに面白そうな『ボイリング・ポイント/沸騰』ですが飲食業界経験者の方だけは(観たいけど観たらメンタルどうなるか…)と思うかもしれません。 飲食業界経験者の方のメンタルは…観たらちゃんと爆発四散すると思います。
20,000いいね ありがとうございます。『ボイリング・ポイント/沸騰』公式アカウントはこちらです @ceteraboiling
ただただ"素晴らしい"としか言いようのないアニメーション作品を、8月に上映します。谷口ジローが夢枕獏の小説を漫画化した傑作『神々の山嶺』をフランスで7年の歳月をかけてストイックかつダイナミックに映像化。全世界的にはNetflix配信なので日本でのスクリーン上映はとても貴重な機会になります。
唖然。呆然。凄まじいです。プーチン政権を痛烈批判するロシアの活動家が飛行機内で瀕死になり緊急着陸した事件が2020年にありましたね。毒殺未遂ではと。一命をとりとめた彼がどうしたか。自分で自分の毒殺事件を調査して真相解明しただけでなくその過程の極秘撮影を許可してました。それがこの映画。
刑務所のワークショップ講師になった売れない役者が演技経験ゼロの囚人たちと演劇に挑むけど、選んだ演題が傑作とはいえ不条理すぎる筋の「ゴトーを待ちながら」でさあどうなる…というこの映画、想像通りとても感動するのだけど、その感動の種類が思ってたのとぜんっぜん違う感動で…最高に痺れます。
刑務所内で話題になりとうとうパリ・オデオン座の舞台に立つことになったクセ強すぎ囚人劇団&講師のエチエンヌ、最後に万雷のアプローズ(喝采)を浴びることが出来るのか。本国フランスで初登場2位のスマッシュヒットとなった『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』は8/19(金)より上映です。
史上初の映画、有名な「工場から人が出てくる」とか「駅に列車が到着する」の50秒映像、それのいっちばん最初の試写に1人の女性が立ち会ってました。彼女の名前はアリス・ギィ。そして絵が動くだけで驚異という時代に彼女は、彼女だけはこう考えた。「記録するだけじゃ退屈。物語を作ったらどうかな」
精霊信仰が根付くタイ東北部の祈祷師の中年女性を取材したドキュメンタリーでカメラが彼女の姪の無意識の奇行を捉えて、祈祷師家系の血の継承ではと撮影続けたら奇行が狂気に狂気が怪異に怪異が…に変質して撮影クルーも呑み込まれドキュメンタリーが別の何かに変質していく史上最怖の映画を上映します
こんなヤバ映画を作ったのは誰か。韓国の子供に「いい子にしないと國村隼が来るぞ」と言うと泣き止む、という都市伝説を生んだ『哭声/コクソン』の鬼才ナ・ホンジン。彼が原案・制作でタイの監督キャストスタッフと作り上げたのがこのタイ・韓国合作の『女神の継承』。超えてきました、あの哭声を。
『女神の継承』静岡シネ・ギャラリーでは8/19(fri)から上映します。気にする方いるでしょうから先に言っておくと犬は無事です。犬は無事だけど犬以外で無事だったものが何ひとつ思いつけません。何も無事ではない。 いや待てよ、犬無事だったかな。今ひとつ確証が持てないな…
明日BSで放送する『ジャズ大名』、海と崖に挟まれてめちゃくちゃ細長い静岡の薩埵峠を通らせろと圧かけてくる官軍と幕府軍の板挟みになった大名と藩士たちが、全部嫌になって映画の後半ずっと海岸に流れ着いた黒人楽師のジャズで踊り狂ってそのまま映画が終わるので全部嫌になった日に観るのお勧めです
幕末にはまだジャズないとか監督原作キャストが豪華過ぎとか現代の服装のタモリさんが出てくるとかイデオロギー対立より音楽というテーゼが意外と深いとか色々あるけど一番どうかしてるのは映画後半延々続くジャズフェスで一曲を無限ループ演奏してること。トランスしちゃう… youtube.com/watch?v=umkswt…
喧嘩別れした親友から「白血病で余命宣告を受けたので元恋人への心残りを清算しに行くから付き合ってくれ」と言われてNYからタイに戻ったら"元恋人"が各地に何人もいるせいで国中を巡る旅になり、幾つもの恋の終わりと近づく最期を想う友情がタイの美しい風景の中に連なっていく映画を上映します。
街のファッション界とゲイコミュニティの中心だったけど今はヘアメイクドレッサー引退して老人ホーム暮らしの偏屈ジジイが大昔の顧客から遺言で死化粧を任されて、ホーム脱走して街を目指す旅の中で次第に全盛期のファビュラスを取り戻して自分の過去と未来に向き合っていく、良すぎる映画を上映します
身のこなし、視線、帽子のつばに添える指のニュアンスに至るまで、御年77歳にしてどう考えてもキャリアハイな演技でファビュラスを炸裂させる映画界の至宝ウド・キアーのおかげで、誰もが偏屈ジジイを大好きになってしまう映画『スワンソング』今秋上映です。ちなみになぜこんなタイトルかと言うと…
白鳥は世を去る際に最も美しい声で歌うという伝説からスワンソングとはアーティストが人生最後に遺す最高傑作のこと。喧嘩別れしたはずの大昔の顧客からの思いがけない死化粧のご指名は彼のスワンソングになるのか。近年散見される"終活系映画"とは一線を画す至高の1本です。
コロナ禍の待機が暇すぎたスタローンが『ロッキー4』の未発表映像を何百時間も見直して「ここカットしたとか当時の俺正気か?薄っぺらいな…」と自省して90分の作品から40分削って42分足すという荒業でシリーズを観てない人にも《本質》が突き刺さる《シン・ロッキー》を爆誕させたので上映します。
ウォン・カーウァイ自身が4Kレストアを手がけて「焼き直しではなく生まれ変わった」と語る伝説的な5作品を特集上映します。ウォン・カーウァイの映画を観ることは理不尽な恋に落ちることのよう。当たり前の風景がネオンのようにきらめいて、映画が、恋が、終わった後も景色だけがずっと心に残ります。
勃起不全の喧嘩番長が最強シラット使いの女と殴り合って恋に落ちて結ばれて彼をEDにした過去のトラウマへの復讐を彼女が決意するものの2人の愛に試練が訪れる、今日的な"男らしさからの解放"というテーマにインドネシア昭和テイストが謎融合してジャンルぶち抜く恋愛格闘浪花節社会派映画を上映します
ジャンルのごった煮感が狙いか無自覚か謎だしインドネシアの土着性を感じる"復讐の女神"的キャラクターまで現れるし全体的になんか…凄い。けれど性的コンプレックスの反動で強さを求める男とそんな彼を愛する更に強い女が、強さと愛を得てなお人としての弱さゆえ悩み傷つき翻弄されるドラマは唯一無二
スウェーデンで一番の金庫破りが仲間のミスで捕まって99日の服役くらってやれやれと出所して次なるお宝「フィンランドの王冠」を狙おうとしたらたった99日で仲間みんな堅気になってて1人で挑むはめになる映画を上映します。監督はまさかの『ぼくのエリ 200歳の少女』『裏切りのサーカス』の人。