千葉市で訪問診療するようになってから、小児の在宅医療の依頼を多く受けるようになった。特に多いのが脳腫瘍の子供たち。治癒を諦め、在宅医療に移行するケースは、成人の脳腫瘍よりも圧倒的に多い。
人生の最終段階、病状は進行し、全身状態は不安定になる。これを「医療依存度が高まる」と考える人がいるけど、それは違う。 医療によってその人の予後や全身状態を改善できる余地は、人生が最期に近づくけば近づくほど少なくなる。「医療依存度は低下する」のだ。
僕らのチームは昨年1年間で21,000件の緊急コールを受電した。東京消防庁が受ける後期高齢者の119番は年間約25万人。その8%強に相当する。 うち7,300件に往診で対応した。これは都立墨東病院への年間救急搬送件数よりもちょっと多い。 在宅医療が頑張れば、救急医療の負担を少し軽減できる。
優秀な訪問看護師が1人いると、最期まで自宅で過ごせる人が大きく増える。 地域の幸せの総量も増える。 医学モデルと生活モデルをバランスよく織り交ぜながら、患者・家族の不安を先回りしてケアし、在宅医の足りないところを補いつつ、必要なタイミングで常にそこにいる。 彼女たちは地域の宝。
終末期の看取り、最期は点滴をしない方が自然で穏やかに逝ける、そんな考え方が主流になっている。 確かに老衰ベースの人たちは「自然に枯れる」のが苦痛が少ないというのは実体験として理解している。 しかし、それ以外の場合、補液をした方が穏やかに見えるケースも少なくない。
在宅高齢者は10日間の入院で7年老化が進む。 「入院できて安心」じゃない。「入院してしまった、大変だ!」1日でも早く退院につなぎたい。 そのためには入院早期に退院のゴールを明確にして、在宅で治療を引き継げるようケア体制を整える。よくなるまで入院なんて言ってたら、死ぬまで退院できない。
在宅医なんて、本当はいらないのかも。 世界各地の在宅ケアの現場を見てきて、そう感じた。 治らない病気や障害とともに人生を生きる人たちが求めているのは治療ではない。日々のくらしの継続だ。 そしてどの国も、その主たる援助者は医師ではなく、訪問看護師(地域看護師)だった。
100万人の感染で16,500人が死亡し、30万人に後遺症が残存する新型コロナ。 一方、新型コロナの発症を95%ブロックするワクチンは、100万回の接種でアナフィラキシー(強いアレルギー反応)は2.5〜4.7回、死亡はゼロ。 僕はもちろんワクチンを打ちます。 患者さんを守るためにも。 twitter.com/VaccineWatch/s…
『私のことをいろいろ考えてくれているみたいだけど、全然心配いらないのよ。死ぬことは怖くないし、なにしろ初めての体験だから、とても楽しみにしているのよ』 7年前にお見送りした(当時)95歳の女性が、亡くなる前に僕に語ってくれた言葉。 好奇心の強い素敵な方でした。
都内の会社員。熱が出て来た。近くの病院は閉まっている。コールセンターに電話すると30分ほどで医師が到着。PCR検査は陰性で、風邪との診断を受け点滴などの治療を受けた。 「新型コロナでないと分かって助かった」 これダメなやつ。 何のための往診?  こんな往診必要? nikkei.com/article/DGKKZO…
医者が陰性パスポート出してどうする。 PCR検査の最大感度はせいぜい8割。少なくとも2割は感染していても陽性にならない。熱が出て新型コロナを疑う時、PCR検査の結果が陰性だから風邪、なんて診断は普通はしない。そもそもPCR陰性なら風邪と確定診断するレベルの事前確率ならPCR検査は必要ない。
ちなみに夜中に医者を呼ぶと、 初診料:2,820円 往診料:7,200円 深夜加算:25,000円 最低35,000円。ここに処置料や薬剤費。 高額だけど自己負担は0~3割。残りは社会保障費。 タクシーで自力で病院行くより安い。 夜間の医療デマンド喚起に成功したスタートアップは公共の財布からぼろ儲け。
透析をしている同世代から、もう終わりにしたい、クリニックの近くに転居するから看取ってほしいと相談された。 彼が生きる希望を取り戻すことはできないか。 約1年、いろんな専門家や支援者とともに関わってきた。しかし、最終的に彼は透析を中止し、緩和ケアを受けながら旅立った。
人が死にたいと思うのは、死をもってしか緩和できないと本人が感じる苦痛があるから。 オランダで安楽死に関与するクリニックの医師からそう教えられた。だからこそ、死にたいという言葉の裏にある、本当の本人のニーズをキャッチすることがとても大切だと。
心不全と高血圧ということで1日4グラムの塩分制限をかけられてるじいちゃん、低ナトリウム血症ということで、1日3グラムの塩化ナトリウム(食塩)が処方されて1年。 食事は薄味過ぎて美味しくない、食塩は飲むのが大変で、って、誰かこの異常事態にもう少し早く気づいてあげてよ。
・病名から自動的に治療食(制限食)をオーダーしないこと ・日々の食事摂取量を把握すること ・栄養制限によって不利益が出ていないか、フォローすること これは治療食をオーダーする医者の責任。 特に高齢者は特定成分の過剰摂取より、低栄養・サルコペニアのリスクをより重点的にケアすべき。
末期腎不全。 もう80年以上生きてきた。充分だ。透析はしない。 そうおっしゃっていた方が、ご自宅でせん妄状態となり、ご家族が見るに見かねて救急要請。 緊急入院とともに透析が開始された。 透析は本人の意思に反する。 しかし、せん妄から覚めた本人は「透析でこんなに体が楽になるのか」と。
いまは透析後の生活のことを具体的に計画されている。 透析は中止したければ、中止することもできますよ、とお伝えしつつ、ご本人ももうしばらくこっちにいたいという新しい意志を尊重することにした。 治療の選択にあたっては、イメージだけで判断しないほうがよいですね。
施設入所から4週間で2度の転倒。「危ないから立たないでって言ってるでしょ!」なんてセリフが未だに飛び交う現場。 向精神薬を増やして、というリクエストに、まずはその人が安心できる、逃げ出したいと感じさせない環境を考えることが大切なのでは?って話したら主治医変更。 いろんな意味で辛い。
37歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された。 相談にいった地域包括支援センターでは、福祉用具の分厚いパンフレットを渡され、40歳になったら会社をやめてデイサービスに行けばいいとアドバイスされた。 でも、月5万の障害年金ではとても生活できない。
できないことが少しでもあると、全部を取り上げてしまう。うまくいかないことは、どうしたらいいのか一緒に考えればいいのに、いまはやめさせることしかしていない。 支援者は本人の話を聞かない。 家族に挨拶し、家族に名刺を渡し、家族にサービスの説明をする。
大切なのは、本人の力を信じて、本人に選択させること。選択に伴う困りごとはみんなで一緒に解決していく。そして選択に伴うリスクは本人の責任で。リスクから守ろうという発想が、本人を不幸にするのではないか。 #丹野智文 #認知症当事者
健康な人にとっては、医療が崩壊しようがしまいが関係ない。たぶん今の東京はこれまでと同じく平和に見えていると思う。 しかし、ひとたび交通事故に遭ったり、心臓発作を起こしたら。その時、救急車を受け入れてくれる病院がなかったら。 助けが必要な人だけを選択的に殺す。これが医療崩壊だ。
新規感染者が4000人に迫る今日の東京。 明日から厳格にロックダウンしたとしても、接触から発症までのタイムラグを考えれば、この指数関数的増加は少なくとも1週間は続くはず。 仮に1日の新規感染者数が4000人で踏み留まったとしても、隔離対症は14日間で5万6千人になる。
医療崩壊は、決して巷に死者が山積みになるわけじゃない。必要なときに必要な医療が受けられる。当たり前だと思っていた社会の機能がマヒするということ。 当事者にならない限りは関係ないし、気づきもしない。だけど、これで命を失う人が確実に出てくる。そして誰もが当事者になりうる可能性がある。