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芥川龍之介自殺への感想一文(独断的選択)。泉鏡花「エ﹅﹅夢ぢやないかな、夢であつてくれゝばいゝが、なんで死んでくれたか、うらめしい。」薄田泣菫「芥川氏はもう生きることに飽きたのだ。」久米正雄「かれは要するに第二の北村透谷だ。」室生犀星「今、自分は疲れてゐて、何も云ふことはない。」
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英語教師芥川龍之介は「歯切れの好い発音ですらすらと、自然なアクセントで読んで、さて講義にかゝる。時々芸術的な訳方をしたり、拙訳と巧訳との例を対照して、全く生徒をチャームしてしまふ。休みの時間には文学好きな生徒に取巻かれて、芸術談をやる」とのこと。夏目漱石より楽しそうな先生ですね。
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作家の戒名には「文」が多いです。夏目漱石「文献院古道漱石居士」芥川龍之介「懿文院龍介日崇居士」太宰治「文綵院大猷治通居士」中原中也「放光院賢空文心居士」三島由紀夫「彰武院文艦公威居士」。もちろん「文ナシ」もいて泉鏡花は「幽幻院鏡花日彩居士」。この美しい戒名は佐藤春夫が付けました。
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世の中は偏見に満ち溢れているもので、夏目漱石が好きと言って真面だと思われ、谷崎潤一郎が好きと言って変態と疑われ、太宰治が好きと言って軟弱だと批判され、三島由紀夫が好きと言って右翼と誤解を受けてきました。しかし泉鏡花が好きと言っても人はまず無反応です。多分よく知らないのでしょうね。
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「猫の日」の画像はやはりこちら。夏目漱石『吾輩ハ猫デアル』上中下編初版本の表紙・カバー・扉・挿絵・カットなど猫尽くしです(上編は8版から中段左の異装カバーとなります)。
#猫の日
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徳田秋聲は泉鏡花の没後、文豪の初期の作には幼稚なものも多いが、鏡花は例外で、「しかも其の天分は老年に迨んでも涸渇しなかつたのである。この点から言へば確かに天才だと言へる。」と讃えました(「天才泉鏡花」)。一度は絶交した同門の秋聲に褒められたことが、泉下の鏡花は嬉しかったでしょう。
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太宰治くらい行状が批判される作家も少ないですが、「谷崎も大学除籍だし、啄木も借金まみれだし、芥川も妻以外の女性がいたし、有島も心中しています」と擁護する人には、「全部当てはまるのは太宰だけ」などと混ぜ返さないで、「小説家は小説の魅力がすべてだから気にしないで」と言ってほしいです。
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留年した学生に「あの夏目漱石だって、落第して進級できなかったことがあるんだよ」と言って励ますのは結構ですが、漱石がその後一念発起して、卒業まで首席を通したことも伝えるべきだと思います。
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天皇陛下が退位されたら、かつて「お供も警護もなしに1日を過ごせたら何をなさりたいですか」と問われ「透明人間になって、学生時代よく通った神田や神保町の古本屋さんに行き、もういちど本の立ち読みをしてみたいですね」とお答えになった皇后さまが、神保町を散策できる日も来るかもしれませんね。
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知人の老コレクターが亡くなられました。遺言状に「宮沢賢治とともに天国に行きたいから『春と修羅』を棺に入れてほしいけれど、初版本を燃やすわけにはいかないので復刻本を入れるように」とあったそうです。泣きました。
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太宰治を運ぶ霊柩車のヴィンテージ・プリント。前が太宰用で、後ろが山崎富栄用です。昭和23年6月19日12時40分頃、料亭千草で検視を終えた太宰の遺体は堀ノ内、富栄の遺体は田無の火葬場へ。2階左側の部屋が太宰の仕事場でした。
#桜桃忌
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