初版道(@signbonbon)さんの人気ツイート(いいね順)

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太宰治の「ポーズ」を批判した志賀直哉に対して、外村繁は太宰の死の直後、「弱い性格のものには弱い生き方があり、宿命があるのだ」「彼の生き方は決してポーズではない。あれでなくては生きられなかったのだ」「太宰君は弱ければ弱い程純粋だったのだ」と主張しました。まさにその通りだと思います。
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若き日の文豪が、ある女性に恋したことを友人に告げた手紙の一節を紹介しましょう。「僕は其の人に欺かれてもよい、弄ばれてもよい、殺されてもよい。」「其の人の夫となれずば、甘んじて其の人の狗、其の人の馬、其の人の豚とならう。」文豪の名前は書くまでもありませんね。もちろん谷崎潤一郎です。
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梶井基次郎を見舞った三好達治は余命いくばくもないことを悟り、淀野隆三らと小説集の出版に奔走。彼らの友情により、梶井は生前に自著を手にすることができました。そして、その『檸檬』は「君の本が出る。永久の本、確かにこれは永久に滅びない本だ」と三好が語った通り、昭和の古典となったのです。
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戦前に検閲で文字を削除された小説です。「。」がポツンと残っているのが不気味。検閲の不条理さを際立たせています。
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大学生の時、読書家だった友人が急に本から離れたので理由を尋ねたら、「1日1冊読破という目標を達成しようとするあまり、本を読むのが楽しくないを通り越して、苦痛にさえなってしまった」と。何事も目標がノルマに変わってはいけないということでしょう。
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川端康成や三島由紀夫が愛した『山の上ホテル』のコーヒーパーラー「ヒルトップ」の季節限定メニュー「苺のクレープシュゼットとクリームチーズのアイス」です(来年2月28日まで)。温かいイチゴのクレープとアイスの取り合わせが絶品。間違いなく幸せな気分になれます。
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「お前の指を、手を、腕を、胸を、頬を、瞼を、舌を、歯を、脚を愛着した。」谷崎潤一郎ではありません。川端康成『少年』の一文です。歯から脚への移動が秀逸だと思います。
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多少なりとも貴重な(高額な)本の所蔵者が亡くなった時、遺族が一番気をつけなければならないのは、友人を名乗って書斎に入りこもうとする人間です。ほぼ確実に何冊も本が消えます。過去に数多くの研究者・コレクターの家がこの被害に遭いました。中でも最も憎むべきなのは、「弟子」と称する輩です。
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尾崎紅葉夫人によれば、関東大震災の後で紅葉の墓に行くと、倒れていたであろう石が元通りになっていました。花屋の仕事かと思ったら、実は泉鏡花が友人たちと直したのです。しかも人知れず。「力がないので定めし困つたことでせう」と笑って語る夫人は、鏡花に心から感謝していたのに違いありません。
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今日は芥川龍之介の命日「河童忌」です。昭和2年7月は連日猛暑で、今年も東京は真夏日でした。「僕は一番暑い日に死んで、みんなを困らしてやるんだ」と言っていた芥川は、天国で微笑んでいるでしょう。ちなみに内田百閒は「あんまり暑いので、腹を立てて死んだのだろうと私は考えた」と語っています。
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三島由紀夫は高校生とのインタビューで「太宰を見ていつも危険に感じるのは、もし自分がね、太宰を好きで太宰に溺れればね、あんな風になりゃしないかって恐怖感もあるわね。だから自分は違うんだっていう立場を堅持しなきゃ危ないと思ったんですね。太宰の作品読んだ時には」と。本音だと思います。
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梶井基次郎は、川端康成の妻にもらった林檎(檸檬ではありません)を夜通し磨いて床の間に飾りました。そしてその一個を齧った三好達治に対して「梶井君はものを云はずに、いきなり三好君の頭を殴つた」と川端は書いています。暴力はいけませんが、梶井にとって単なる林檎ではなかったのでしょう。
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「人生は狂人の主催に成つたオリムピツク大会に似たものである。」 こんな言葉を百年近く前に残した芥川龍之介は、やはり天才です。
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坂口安吾は「芥川は太宰よりも、もつと大人のやうな、利巧のやうな顔をして、そして、秀才で、おとなしくて、ウブらしかつたが、実際は、同じ不良少年であつた」「芥川も、太宰も、不良少年の自殺であつた」と書いています。太宰はともかくとして、芥川を不良呼ばわりできる安吾は凄いです。
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今日は泉鏡花の誕生日です。子どもの頃に母親を亡くした鏡花は、終生母への思慕が消えませんでした。母親の愛情に飢えていたのは夏目漱石や芥川龍之介も同じで、それが彼らの文学の源泉の一つだったのかもしれません。ちなみに鏡花の母と妻の名前は共にすゞ。鏡花にふさわしいロマンチックな話ですね。
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『新潮』大正12年7月号合評会の写真(田端自笑軒)です。左から芥川龍之介・千葉亀雄・菊池寛・中村武羅夫・久米正雄・久保田万太郎・徳田秋聲の豪華メンバー。あまり目にしませんが、芥川が話をしている写真(口が少し開き、みんなが芥川を注目)は非常に少ないので貴重だと思います。
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3年半ぶりに再び伺います。以下に挙げるのは、高校国語教科書によく採録される「定番小説四天王」です。一番好きな作品はどれですか?
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泉鏡花と志賀直哉が一度だけ将棋をした時、駒を並べて始めようとしたら、飛車と飛車、角と角が向き合っていました。志賀が遠慮がちに注意すると、鏡花は慌てて置き直しましたが、実は間違って置いていたのは志賀の方でした。二人ともへぼ将棋だったのかもしれませんね。ちなみに勝ったのは鏡花です。
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NHKの朝ドラを見ていたら「ねえ君、僕と共鳴せえへんか」「何それ、織田作?」という会話が出てきてビックリ。織田作で分るのかなと思っていたら「織田作之助なんか読むん?」と。今日の舞台は昭和37年の道頓堀。ちなみに主人公の高校時代のアルバイト先は古本屋です(画像は『夫婦善哉』初版本より)。
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「金色夜叉」の新聞連載を愛読していた若い女性が死に際し、続きを墓に手向けてと遺言。それを泉鏡花から聞いた尾崎紅葉は「あゝ、然ういふのは、作者の守り神といつていゝな。疎かに思ふなよ、お前なぞも」と教えました。「七たび生れかはつて文章を大成せむ。」鏡花が伝える紅葉の臨終の言葉です。
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6月13日は太宰治が山崎富栄と入水した日です。太宰の服装は白のワイシャツにねずみ色のズボンでした。長雨により、太宰の捜索は難航を極めました。そして三鷹は今日も雨。富士には月見草がよく似合いますが、やはり太宰には雨がよく似合う気がします。
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漱石も谷崎も芥川も川端も太宰も三島も、多くの近代作家のかなりの数の作品は古典の素養がないと面白さが半減するので、「近代文学は本当に必要なのか」と問われているのに近いと思います。 #古典は本当に必要なのか
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「親の蔵書数と子どもの学力は比例する」という説が定期的に話題となりますが、過剰な蔵書はむしろ子どもの学力に悪い影響を与えるかもしれません。廊下・階段といった共用スペースまで本が侵食すると、親(ほとんど父親)と共に本を憎むようになるからです。そして親が死んだらすぐに本は処分されます。
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川端康成『少年』(新潮文庫)の見本が届きました(28日発売)。巻末に宇能鴻一郎さんのエッセイ「川端康成の少年愛」を収録。この小説を読むために、わざわざ図書館で全集を借りる方が多くいることを知り企画したので、文庫本にできて本当に嬉しいです。ノーベル賞作家の絶妙な筆致を堪能してください。
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芥川龍之介の家の手伝いをしていた森梅子によれば、芥川は死の前日の7月23日、「三年ぶり」という客2人と自宅で夕食を共にしたそうです(10時半頃帰る)。芥川が酒を飲み「大変元気にお話し遊ばされ」たという2人は名乗り出ておらず、いまだに特定できません。最後の晩餐での会話の内容が気になります。