初版道(@signbonbon)さんの人気ツイート(いいね順)

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「読まないと人生において損な近代文学は何でしょうか?」という質問を受けました。読んで良かったと思う作品は数え切れませんが、得をしたと感じたものはなかったです。文学作品はノウハウ本や攻略本ではないので、損得勘定を抜きに読んだ方が楽しめるし、結果として得られるものも多い気がします。
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『140字の文豪たち』(秀明大学出版会、税込千円)が完成しました。来週末から発売ですが、小出版社による少部数の本なので、紀伊國屋書店(全国に配本)と神保町の東京堂書店以外は大きな店舗しか置かれません。お近くの書店にない場合は、お手数をかけますが店舗かネットでご注文いただければ幸いです。
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今日は宮沢賢治の命日です。賢治の最後の言葉は「ああ、いいきもちだ。」オキシフルを付けた消毒綿で手と首と体を拭き、この言葉を繰り返しました。そして潮が引くように、呼吸が途絶えたそうです。享年37歳。苦しまずに旅立ったのが、せめてもの救いだと思います。
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ご依頼を受け、(仮称)芥川龍之介記念館の令和4年度開設に向けて、色々とご協力することにしました。芥川の名を冠する初めての記念館が、彼や彼の文学を愛するすべての人の聖地になるように、微力ですが努力します。
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某テレビ局の人に「小道具として使いたいので、復刻本でいいから『月に吠える』を貸してほしい」と頼まれ、言下に断りました。「復刻本ならばよかろう」とばかりの物言いに腹が立ったからです。書物に対する愛情のカケラもない者に貸す本は一冊も持っていません。
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太宰治の墓前にいます(お供え物は『桜桃』初版本)。桜桃忌に来たのは久しぶりですが、日曜日ということもあってか既に混雑。もちろん、向かいにある没後100年の森鷗外の墓にも手を合わせました。尊敬する鷗外を喧騒に巻き込んで、太宰は恐縮しているでしょう。#桜桃忌
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室生犀星の詩「本」。季節違いだけれど、美しい詩はいつ読んでも美しいです。そして「新しい頁をきりはなつ」(アンカットのこと)と書いた時、意識せずとも犀星は初版本を思い描いたに違いありません。それは、あるいは盟友・萩原朔太郎の詩集だったのでしょうか。この詩に心から共感できて幸せです。
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佐藤春夫の名言。「若さは、夢であり、花であり、詩である。永久の夢といふものはなく、色褪せない花はない。また詩はその形の短いところに一層の力がある。若さも亦、それが滅び、それがうつろひ、それが長くないところに一しほの魅力がある」。若さの魅力をこれほど的確に表現した言葉を知りません。
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昭和2年の今日、芥川龍之介の葬儀がありました。友人総代の弔辞を読んだ菊池寛は、溢れる涙を抑えられず「友よ、安らかに眠れ!」の後は言葉になりませんでした。当時の新聞には「氏は遂に慟哭しばし霊前に泣き伏して仕舞つた」と。近代作家の葬儀でこれほど満場が涙で包まれた瞬間を他に知りません。
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一般に古本屋で聞かない方がよい(聞いてはいけない)質問 ①「本は消毒してありますか?」 ②「この署名は本物ですか?」 ③「もっと安くなりませんか?」 ④「何でこんなに高いんですか?」 ⑤「仕入れ値はいくらですか?」 ⑥「いつ入荷しますか?」 店によっては怒られたり、出入り禁止になります。
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『文藝別冊 永遠の太宰治』(河出書房新社)に「初版本『晩年』をめぐる物語」を寄稿しました。土井雅也さんの「資料で読み解く太宰治の生涯」、斉藤壮馬さんのインタビュー「朗読する太宰治」など、とても読み応えがあります(中の画像のアップは版元の許可を取得済)。5月11日発売です。
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芥川龍之介は雨の日に菊池寛と歩いて、「僕はその時、ぬかるみに電車の影が映つたり、雨に濡れた洋傘が光つたりするのに感服してゐたが、菊池は軒先の看板や標札を覗いては、苗字の読み方や、珍しい職業の名なぞに注意ばかりしてゐた」と。面白いですね。『蜜柑』と『真珠夫人』ほどの違いでしょうか。
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萩原朔太郎は谷崎潤一郎の妹(末)とそれとなく見合いをしたものの、その先に進みませんでした。佐藤春夫によれば、朔太郎は「ドイツの少女のやうな趣は悪くなかつたが、何しろあまりに潤一郎と似てゐるのがいやであつた」そうです。確かに子どもの頃の写真ですが、面差しが谷崎に似ている気がします。
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水着姿の谷崎潤一郎。あまり目にしない写真です。撮影者は存じません。
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知人の高校国語教師は近代の詩歌が大好きで、3人の子どもの名前は賢治・晶子・光太郎。「よく奥さんはOKしましたね」と言ったら、「いや、次男は中也にしたかったんだけど激しく拒否され、朔太郎もダメ。ようやく光太郎で了解してもらった」と。それを知ったお子さんは、母親に感謝していたそうです。
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「『人間失格』の初版本が手に入りません。もう死にます」というDMが来たので、放置もできず「死なないと約束するなら差し上げます」と返信。約束してくれたので送ったら、受領の連絡もなくアカウントが削除されました。残念だけれど元気でいてくれれば。「死にます詐欺」ではなかったと信じたいです。
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芥川龍之介は海軍機関学校の教官時代「小説は人生にとって必要ですか?」と学生から質問され、「それなら君に聞くが、小説と戦争とどっちが人生にとって必要です?」と切り返し「戦争が人生にとって必要だと思うなら、これほど愚劣な人生観はない」と断じました。場所柄を弁えない勇気ある発言ですね。
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芥川龍之介は大正時代に文壇で流行ったスポーツやゲームが嫌いでしたが、菊池寛の家で川端康成とピンポンをさせられる羽目に。どちらも非常に下手だったので、中々勝負がつかなかったそうです。芥川と川端がラケットを持つ姿を想像するだけで可笑しくなります。画像は久米正雄のピンポン姿であります。
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今日は谷崎潤一郎の命日です。三島由紀夫は「これだけの作家が亡くなれば、国家が弔旗をかかげてもいいし、国民が全部黙祷してもいいんじゃないかと思いますがね」と語りました。谷崎にも桜桃忌・河童忌のような作品由来の文学忌がほしいですね。「刺青忌」「春琴忌」など皆さんも考えてみてください。
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今日、さいたま文学館を訪れ、永井荷風の机に懐かしむように触れていた高齢の女性は、17歳の時、荷風と浅草の蕎麦処「尾張屋」で会ったそうです。そこの店主が教えてくれました。「いつもストリップの帰りに来るんだよ」と。ちなみに彼女は神保町に住み、なんと古本屋の娘。ドラマのような話ですね。
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中学1年生の時、『太宰治全集』の「人間失格」を教室で読んでいると、担任の国語教師から「そんなものを読むと自殺したくなるぞ」と言われたので、「じゃあ、なんで図書室にあるんですか?」と尋ねたら凄い表情で睨まれました。「感想を聞かせてほしいな」と言ってくれる先生と巡り合いたかったです。
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高校国語教師の知人によると、『羅生門』「下人の行方は、誰も知らない」の続きを考える問いに、「下人は反省して老婆に着物を返した」と答える生徒が最近増えたそうです。初出誌で「下人は、既に、雨を冒して、京都の町へ強盗を働きに急ぎつゝあつた」と書いた芥川龍之介が知ったらさぞ驚くでしょう。
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芥川龍之介は、未来の妻である塚本文に微笑ましいラブレターを何通も送りましたが、個人的には「この頃ボクは文ちやんがお菓子なら頭から食べてしまひたい位可愛いい気がします。嘘ぢやありません」が秀逸だと思います。「お菓子」というところが、いかにも甘党の芥川らしいですね。
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素晴らしい所が沢山あるのに、自信があまりにもない若者を数多く見てきました。謙虚であることは大切だし、自信過剰は感心しませんが、自分を過小評価するのも勿体ないです。だから新成人に、そして若い方々に、あえて谷崎潤一郎の「たとへ神に見放されても私は私自身を信じる」という言葉を贈ります。
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大谷崎だから許される言葉なのでしょうか?いや、誰もがこのくらい強い気持ちで生きてもよいのだと思います。