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「結婚相手との出会いってどこが多いか知ってる?」改札までの道のりで先輩は私に尋ねた。「アプリですか?」「残念。職場が多いらしいよ。身元がはっきりしてるのがいいよね」なるほどと頷いた。「こういう話するの珍しいですね」「告白の成功率を上げたいから」先輩は改まった顔で私の名前を呼んだ。
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好きな子からライブに行こうと誘われた。知らないバンドだったが結構聴くよなんて嘘をついた。ライブまでの二週間、毎晩聴いたがあまりハマれなくて焦った。当日は炎暑の駅前で待ち合わせ。演奏が始まっても中途半端にしか乗れない僕に「無理に誘ってごめんね」と君が謝る、間違いだらけの初恋だった。
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「生まれ変わっても夫婦になろう」はい、と頷く君の涙が頬に落ちた。時代は移り変わり、春。僕はまた人として生まれた。前世の記憶を残したまま。だがこの時代の君は僕のことを忘れていた。想いの差だろうか。それでも惹かれ合いやがて夫婦になった。年老いた君が病床で僕に言う。「来世はまた夫婦に」
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「お互い人気歌手になろうね!」桜の木の下でそう言って幼馴染と握手をした。大きな夢を胸に宿して。高校を卒業して幼馴染はすぐに成功した。「今作ってる曲、どう思う?」人気者になったあの子は今も時々デモ音源を送ってくる。東京でまだ何者にもなれない私へ。嬉しいはずなのに胸がチクリと痛んだ。
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「次付き合う子が初めての彼女ってことにしてほしい」親友はそう言って頭を下げた。聞けば、好きな子に「人生で初めて好きになったのが君だ」と伝えたらしい。呆れる。確かに自分らが手を組めばバレないだろうが。今、親友の隣で新しい彼女が微笑んでいる。彼が私と付き合っていたとは知らないままで。
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「君の友達になりたいな」春、母の再婚相手はそう言って握手を求めてきた。彼は私の父になろうとはしなかった。あれから十年。周りからは奇妙な関係だと時々言われる。けれどいいのだ。私が実の父を慕っていることを彼は知っている。それに私にはこの年の離れた友達が、父と同じくらい大切なのだから。
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よく冷たいと言われる。確かに僕は物事を合理的に考える方だ。大学時代に後輩からの告白を受け入れたのも、単に断る理由がなかったから。それでも交際は長く続いた。恋人が不慮の事故に遭うまでずっと。僕は考えた。人と人とはいずれ別れる。それが少し早かっただけだ。そう解釈しながら僕は号泣した。
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君の秘密を知っている。『夏祭り一緒に行こうよ』LINEの通知を見ただけで胸が高鳴った。好かれている、たぶん。先週は映画に誘われた。瞼の裏ではもう二人の夜が始まっていた。浴衣は白地。ラムネにりんご飴。嬉しくて返事ができなかった。恋人はいないと答えた嘘つきな君を、まだこんなに愛している。
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土曜の九時に通話しようと約束した。初めてできた彼氏。それだけで一週間頑張れてしまった。『ごめん。課題が忙しくて』LINEがきたのは夜の八時過ぎ。『分かった』が書けなくてスタンプだけ返した。あと十年もすれば懐かしくなるだけだろう、今夜のことも。布団の中で十五の私がこんなに泣いていても。
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「別れよう」と言われて、うっかり「ありがとう」と返しそうになった。危ない。それじゃ彼女との別れを望んでいたみたいだ。冬の日、白い息を吐く彼女に「分かった」と返事をした。それから最後のハグをして帰った。僕の大事な試験が終わるまで別れ話は伏せておく、そういうところが本当に好きだった。
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『会いたい』真夜中にLINEの通知がきた。送ってきたのは甘え下手な彼女。こんなことは初めてだ。まだ終電あったっけ、なかったら電話するか、と考えながらベッドから起き上がる。もう遅いし電話かな。トーク画面を開くと『会いたい』の一言が消えていた。『送信を取り消しました』という表示を残して。
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余命わずかの僕はコールドスリープを勧められた。低温で眠ったまま、医療の発達を待つのだ。皆にさよならを言って眠った。目を覚ますと、そこは病室だった。そばには見知らぬおばあさんがいた。看護師さんかと聞いたが、違うという。病室を出たきり見ることはなかった。初めての恋人に、少し似ていた。
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『泊まっていい?終電なくなっちゃった』深夜、片思いしている人からLINEが来た。泊まる?うちに?舞い上がらない訳がなかった。ベッドの上、まずは息を整える。部屋はそこそこ散らかっている。水回りも掃除して、後は……。考えているとまたスマホが鳴った。『他の子がOKしてくれたや。急にごめんね』
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好きな人の思い出になりたい、と思っていた。忘れられない青春の一部に。大人になってあなたと出会うまでは。「明日はどこ行こうか?」二人で掃除をする日曜日の朝。当然のように投げられた質問に心を打たれた。愛は健やかに芽吹く。お互い語らない過去があっても。いま私は、あなたの未来になりたい。
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大人になり恋をするのが上手になった。いい人と悪い人を的確に見抜き、短期間で距離を詰める。初めての彼氏より二番目の彼氏の方が優しくて、三番目の彼氏は優しい上に格好良い。だから不器用だった頃の自分が恋しくなる。次に付き合う人はもっと素敵かも、なんて考えずに手を繋げる私で生きたかった。
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彼女の父は厳しい。「君のような人間と結婚させる訳にはいかない」最初は玄関で追い払われた。長く続けられる仕事に就きなさい。身なりを整えて、言葉遣いも丁寧に。忠告の山に耳が痛くなる。それでも努力して、一年後に僕は気づいた。あれ、僕の暮らしは良くなったし、もうリビングまで通されている。
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キッチンに立つたびに昔の恋人のことを思い出してしまう。大げさに褒めてくれるから、いつの間にか料理が好きになった。本当は面倒臭がりだったのに。置きっぱなしだった服も歯ブラシも処理したけれど、思い出は戸棚の中に詰まったまま。ばかだなぁ私。一人じゃ使わないのに、こんなに調味料を買って。
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結婚するらしい。独身のままがいいと言っていた元彼が、唐突に。「相手は?」「同僚」「へえ」電話をするのは二年ぶり。雨の夜に私達は別れた。彼に結婚願望がなかったから。だから何故と聞きたくなってしまう。けれど聞かずに電話を切った。分かっている。彼は確かに結婚したくなかったのだ、私とは。
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私ばっかり浮かれてる。「三ヶ月記念とか祝うの面倒だよな」彼の言葉は質問というより断定で。放課後、一人で教室を出た。「記念日なのに二人で帰んないの?」廊下で声をかけられた。隣のクラスの、先月私に告白してきた人。「祝うの面倒だって」「え?冷たいね」無言で歩いた。天秤が傾かないように。
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「そんなだせぇ服で同窓会行くわけ?」家を出る準備をしていた私に彼が言った。「え、可愛いじゃん」「どこがだよ」服、靴下、帽子、ピアス。険しい顔で腕組みをした彼から全部変えるよう命じられた。困った人だ。渋々着替えをして外に出る。相当心配なようだ。服も帽子も全て彼から貰ったものだった。
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「先輩って、恋愛とか興味なさそうですよね」仕事人間として有名な先輩は、私の言葉に淡々と答えた。「いや?好きな子は他にとられる前にガンガン飲みに誘うけど」意外だ。普段着が想像できないあの先輩が。その後、先輩はいつものようにワインを頼み、二人で乾杯した。なぜか今日はため息が多かった。
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今夜、恋人は同窓会に行くらしい。高校時代のメンバーで集まるそうだ。いってらっしゃい、と笑顔で見送った。その背中が徐々に遠くなる。夕方のネットニュースはこう語っていた。『嫉妬心が強い人は一途なのではなく、むしろ浮気への関心が高い』と。だから行かないでと言いたくなる自分が嫌いだった。