101
絵を描く上で一番大切な事は技術ではなく、自分の心が何を求めていて、何を魅力に思い、何を美しいと感じるかを分かっているという事で、それに忠実であるという事だと思う。
102
芸術において優劣を付ける事に納得がいかないという思いと、競争が嫌い、組織が好きではないという思いから、今まで一度も絵画公募展に出品した事がない。
積極的に出品していればより多くの人に届いていたかもと考える事はあるが、肩書で人や作品を判断する世界と関わりたくないので良いのだ。
103
辛い練習を乗り越えないと上手くならない、何事も達成できないという精神論は何かの呪縛であり、これに足を取られない方がいい。
好きだから下手でもいいから続けていると自然に上手くなるし、惹かれれる程に真剣になるので鑑賞に耐えうるものになる、と言う事の方が真だと思います。
104
鬱気質の人の特徴である、真面目さ、几帳面さ、責任感の強さ、繊細で豊かな感受性、創造性、全体を把握する力、というのはそのまま、より良い社会を作っていく為にに必要な能力であって、この気質を持つものが社会に貢献できるポテンシャルはものすごく高いのだと思っている。
105
逆にこれとは対極の性質である鈍感さ適当さ打たれ強さ図太さ責任感の無さは今の弱肉強食の経済社会では出世しやすく生きやすい資質なのかもしれないけれど、平和なより良い社会のために貢献できる資質であるかどうかは疑問に思ってしまう。
106
悲しさと美しさはなぜか相性がいい。
107
気にしなくて良いような事を気にしたり、考えなくてもいいような事を考えたりして、周囲との間に温度差が出来てしまうような人は、創作活動に向いている人と言えると思います。
その感受性で繊細な精神の機微や、周りが気付かない美を捕まえる事ができるという事だから。
108
全ての人に好かれようと調整しながら作っていると薄っぺらな物ができる。幅を限って掘り進んで行くと、一部の心を深く掴むような表現が出来る。執拗に作品と対峙し主観的になって掘り進んだ先は再び視界が開け、深く且つ幅広く共感されるような普遍的な景色が現れる。
109
たとえ作っているものが仕事に結びつかなくとも、それを作っている時の何事にも代え難い、掛け替えの無い時間こそが生きていると言う事であり、それによって自分が生かされていると言う事。「売れなければ無駄」などと言う人の意見を聞く価値はない。
110
音楽は見ている景色を変える。
絵画は心に音楽をかける。
111
モネは「人は私の作品について議論し、まるで理解する必要があるかのように理解したふりをする。私の作品はただ愛するだけでよいのに。」と言ったそうだが本当にそう思う。絵は理解するしないで語ると魅力がわからなくなる。あぁいいなと思う感覚が全て。
112
ラピュタで「良いまじないに力を与えるには悪い言葉も知らなければならない」のような事を言っていたけど。生きていく上での明るさやポジティブな気持ちをリアリティのあるものにするには、暗さや悲しさという本質に蓋をせず受け入れるという事が必要なんじゃないかと思う。
113
「全ての創造的な仕事の後ろには必ず子供の心があります」のような事を司馬遼太郎が言っていたけれど、本当にそう思う。金や権力欲という動機ではなく、子供が目を輝かせる時のように、心を動かされるからそれをするという気持ちからのみ本当に良いものは生まれる。
114
心が成長するにつれ、物事を理解するにつれて、好きなもの、心奪われるものが変わっていくのは当然であり、その年齢、時期だからこそ感じられる感動というものが音楽や映画、絵画にはあると思う。なので好きになれる時に思いっきり好きになっておいた方がいい。
115
悲しみには二種類ある。何かのきっかけがある一時的なものと、ずっと続いていくもの。
ずっと続いていく悲しみのうちで、明確な心的外傷を原因としないもの、すなわち治療のしようが無いものを哲学的悲しみと呼びたい。哲学的悲しみの帰すところが芸術なんだと思う。
116
「どんなに教養があって立派な人でも、心に傷がない人には魅力がない。他人の痛みというものがわからないから。」フジコヘミング
心に傷があるから他の人の痛みを解ることができ、その慈しみがその人やその人の作るものを魅力的にするという事もあるのかもしれない。
118
絵を描く人にとっては、ずっと前に描いた作品と全く同じものを、もう一度描くという事は難しいという事が分かるはず。それは、時間とともに技術力が変わり、心境も変わっていくから。
人間の精神は時とともに変容するもので、絵はその人のその瞬間の精神を封じ込めている。
119
描いている絵をどの時点で完成とするかは難しいですが、「音楽が聴こえるか」「詩が聞こえるか」の二つの基準にするとうまく行くことが多いです。
120
砂糖は甘いけれど本当は甘い訳ではなくて、人にとって効率的なエネルギー源だから多く摂取させる為に脳が「甘い」という幻想を人に見させているだけ、という風に考えていくと、自分が感じること、楽しいとか苦しいとか言う事も全部幻なんだなと言う気がしてくる。
122
心に何か抱えた人が作る作品には星が入っていて、その星は誰かの心に直接届くことになっている。
例え売れたり人気になったとしても星の入っていない作品は忘れられていく。星の入っている作品は、たとえ人気にならなくとも、届いた一人の心に深く刻まれて、時代を経て光を灯し続ける。
123
一人で曲や絵を作っていても需要ないかも知れないし、周りからはお金にもならないのに何をやっているんだと言われたりすると本当に萎えるけれど、やめなくていい。それが好きなら堂々と好きでいればいい。たとえ誰も聞いてくれなくても作った曲や絵は絶対にあなたの支えになる。
124
昔から集団が嫌いでどんな所にも所属しているという感覚が無かった。常にここは僕がいるべき所ではないという疎外感があった。時を経て、人が形成する集団に心から帰属できる場所などないと言う事に気付いた。しかし、何かに帰依する感覚が美しい自然の中にいる時と絵や音楽を作っている時にある。
125
ルノワールは「人生には嫌な事が多すぎるのでこれ以上嫌な物は作りたくない、愛らしく美しいものだけを作りたい」の様な事を言ったらしいけど、その気持ちも良く分かる。暗く辛い事ばかりの世界で、生きるためにファンタジーが必要な時もある。