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しかし僕をさらに悩ませたのが駆除しても駆除してもゆったりと現れ続けるカメムシでした。彼らは潰すと物凄い匂いで報復してきます。私はトイレに流していましたが、水道代が凄いことになりました。そこでとうとうキレた私は、カメムシの侵入路を発見し、そこに塩素を大量投入しました。
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深夜に出張から帰宅した時、床一面に蟻の大群がいた時は、もう気持ち悪いとかを通り過ぎて、「僕はどこで眠ればいいんだ?」と悩んでいるうちに世が明けました。翌日、「アリの巣コロリ」で全滅させましたが、この日が僕が(理系は役に立つなあ)と思った学びの日でもありました。
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赴任間も無くのころ、窓から目線を感じました。僕は幽霊の類は恐ろしくない人間なので、このイライラを幽霊にでもぶつけようとガラリと窓を開けました。すると物干し竿に逆さまにぶら下がっているコウモリと目が合いました。本当に落ち込みました。
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しかしもっと恐ろしいものがありました。ガス料金と電気料金の請求書でした。そもそも林の中に住宅を建てたのは東京の工務店でした。東京の工務店なので、住宅は北海道仕様ではありませんでした。底冷えが酷く足が氷のように冷たくなりました。冬の電気代一月で3万円でした。ガス代は4万円でした。
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だいたいこれが1年のうち243日続きます。残り122日は虫から解放されます。極寒の冬だからです。虫の中でうずくまっていた日々が懐かしくなるほど、それはそれは辛い季節でした。
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街灯に集まる虫たちは何をしているのでしょうか。もちろん光を楽しんでいるわけではありません。食い合っているのです。翌日、大学に出勤しようと玄関を出ると、無数の虫の残骸を足元に見ることになります。昨夜の戦いの激しさが如何に凄まじかったかを知ります。
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教員住宅の入り口は、とにかく「飛ぶ系」の虫が待ちかまえております。これをかいくぐり自宅に入るのです。口と目は閉じますが髪の毛に潜入する虫の全てを回避することはできません。
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スマホの写真には映りませんが、実は空間は全て蚊で満たされています。フロギストンのように。自宅に着くまでに蚊の大群の中を通過するのです。豊かな自然を映した写真には蚊は映らないのです。そして問題はこの街灯です。暗くなると灯されますが、あらゆる種類の虫がこの街灯の光に集まります。
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アメリカの「民主政の危機」について、確認しておきたいこと。まず、近世末期のアメリカ革命(アメリカの独立)は、共和政への統治体制の転換なのであって、この当時の読書階層の常識では、民主政が「善き」統治体制とは考えられていなかった。→
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東京に来てみて、東京にしか居住経験がなく、その他は留学先だけという人がかなりいることが分かった。それで職を得られず苦労している。しかし専任職歴があるのとないのとでは雲泥の差で、「東京の人」は東京にしか住めない感じがあるが、その感覚は捨てて地方でもし可能なら職を得るべきです。
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知っている人は知っていると思うが、アメリカ合衆国の監視システムは物凄い。物凄いのだが、とにかく監視する側の仕事がずさんで、さらにアメリカ人の自由さはそれを上回り、司法制度がカジュアル。アメリカの仕組みを日本に導入したら大変なことになる。息もできなくなる。
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歴史を考える時に重要なのだが、主権国家の完全で対等な独立というのは歴史上それほど多くない。①植民地、②属国、③属国的同盟国、④重んじられる同盟国、⑤完全な独立国、⑥覇権国(帝国)までグラデーションがあり、今の日米同盟下の日本はアメリカの衛星国(④)だけど、歴史的には珍しくはない。
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メイウェザーは、強い格闘家をボクシングのリングに上げることで、楽々億の金を稼いだわけです。格闘技はどちらのリングに上がるかで勝敗は決まります。ボクシングのリングでボクサーに敵うわけがない。猪木は空手家もボクサーも柔道家もアメリカプロ空手も全部プロレスのリングに上げた。
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RIZINが、引退したライト級のメイウェザーを足元見られて大金払ってお呼び申し上げた無様なサル芸とはワケが違う。ボクシングの歴史上最強の一人だった現役の世界ヘビー級チャンピオンを、むしろ騙してプロレスのリングに上げちゃったのが猪木だったのですよね。
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馬場は偉大なビジネスマンだったが、猪木はただのビジネスマンではなかった。日本の格闘技の今日的状況の源流だった。僕は猪木vs. アリは4歳だった。床に寝転がって、テレビの前で若かった父親が猪木を罵倒しているのを眺めていた。鮮明に覚えている。「アリキック」「猪木アリ体勢」は素養だった。
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「事象を観察し、仮説を立て、検証する」。これなのですよね、大学院でやるのは。ルース・ベネディクトみたいな文化人類学者まで動員する。分からないからあらゆる専門家を集めて、プリミティヴな計算や図を書いて理解に努める。「頭の回転」など慣習とか空気の奴隷ですからね。素朴に考えて考え抜く。
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助手の頃マサチューセッツから保健法の教授が来日していて、ところが研究会の出席者の人数が足りなすぎてサクラとして急遽呼び出されて出席したことがある。日本の学生なら皆まで言わんでも分かるような計算や図を必死で書いていた。アメリカ人どんくさ(笑)、と思ったがこんな彼らが日本軍を破った。
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日本が学位の高さよりも出身大学(さらには出身高校)に主たる関心を示すのは、「地頭(じあたま)」主義の現れが一端にあると思う。常に変転する世の中への対処法であるようにも見える。でもこの「地頭(じあたま)」なるものは、本当に有効なんだろうか。先の大戦を見る限り、ノーなんじゃないか。
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「資本主義だろうが、社会主義だろうが、教育の平等なんかあるわけないじゃないですか」と、お、お、おー!!と真顔で言われて、学生相手に言葉に詰まったのは初めてだった。
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「でも中国でそんな感じになったのいつから?社会主義だから大学はタダでしょ?」と聞いたら、私立はあるけど下の下だと。だから国立はタダ。ただ上位国立に入れる人はごく一部だけど昔は知らないが今は大学院には行くと。「いくら市場経済とはいえ、社会主義だよね?」に対する応えが凄かった。
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「日本は、武断の国で学歴社会じゃないんだろうね。星の数よりメンコの数で、さすがに高卒では昇進に頭打ちがあるから大学には行くけど、大学院に行くよりは社会経験がものをいうんだろうね。日本は、学歴に関係なく新入社員は最下級スタートだから」とは言ったが、(こりゃあ将来負けるな)と思った。
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昨日の大学院の演習で、中国人の留学生から「なぜ日本では大学院進学が少ないんですか」と聞かれて吃驚した。日本でも理系は大学院進学が多いが、何でも中国では文系も多いと。はっきりと給与額が学歴に反映しているのだとか。変われば変わるもんだなあ、アメリカみたいだと驚いた。
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「頭では分かってたけど、東京に来て階級や文化資本の格差をしみじみと理解しましたよ。僕は何をどう足掻いても庶民でした。その証拠にちょいちょい庶民どもに炎上させられますでしょ。これは庶民の友の運命です」と友人に話したら、彼は優しく「庶民は嫉妬深いからね。貴族じゃなく仲間を燃やす」と。