最近どういう訳か、20代後半の男女グループの宿泊客が増えている。どれも30人くらいの大所帯だった。旅館側が言うのもなんだけど、大人ならもっと、良い旅館に泊まれるだろうに。気になったので、どういう集まりなのか聞いてみた。 「昔、コロナで行けなかった修学旅行を今、取り戻してるんですよ」
歴史に疎い魔王「私が滅びても、第二第三の私が現れるだろう…」 つよつよ勇者「大丈夫。先代も先々代も同じこと言ってたから」
「僕、本気で漫画家目指すんで、学校辞めました。漫画の勉強に集中したいので」 なんて馬鹿な事をと周りは呆れたが、俺は彼の目の奥に、熱く固い意志を見た。 「頑張れよ。俺は応援してるからな」 「ありがとうございます!」 「お前なら、第二の手塚治虫になれるかもな」 「手塚治虫って誰ですか?」
「寒いねー!」 「寒いね~」 「雪だねー!」 「雪だね~」 「このまま私達、凍っちゃえればいいのにね」 「どうして?」 「それでね、未来で目が覚めるの。世間の目なんて気にしなくていい、ずっと未来で」 「…いま、こんなに幸せなのに?」 私は手袋を脱ぐと、彼女の手袋も脱がせて、手を繋いだ。
退職願を勘違いしてる新人「課長、退職して下さい」
【続き】 新人「課長は、こんな会社にいるべき人ではありません」
「コレ下さい」 「彼女さんにですか?」 「あ、はい…そうなんです」 俺が照れ笑いを浮かべると、店員さんは優しく微笑んで、ヌイグルミを丁寧に梱包してくれた。次のデートで渡すのが楽しみだ。きっと喜んでくれる。LINEを開くが、なぜか彼女の宛先が無い。そうだ。先週フラれて、消したんだった。
小・中学校では、運動が出来る奴がモテると知り、俺は必死に体を鍛えた。 高校・大学では、勉強が出来る奴がモテると知り、俺は必死に勉強した。 社会では、金を持ってる奴がモテると知り、俺は必死に稼いだ。 あの世では、生前の徳を積んだ奴がモテると知ったが、もう手遅れだった。
ゲーム脳客「このジャケット、防御力いくつですか?」 慣れてる店員「お客様のレベルでは、まだ装備できません」
「お前ってミステリマニアだよな」 「そうだよ」 「今までで一番、読者へのミスリードが上手かった作品って何がある?」 「そりゃ〝名探偵コナン〟一択だよ」 「あぁ…やっぱり?」 「うん。最終回でコナンが大人に戻った時、工藤新一じゃなかった衝撃は忘れられないね」
「出来たぞ助手君!精度100%の嘘発見器だ!装着せずとも嘘を検知してブザーが鳴る優れ物だ」 「本当ですか⁉︎凄いです博士!これで、病気で亡くなった博士の奥様も浮かばれますね」 ビービービー! 「あれ?博士、この嘘発見器、まだ精度がイマイチみたいですよ」 「……」 ビービービー!
イジメ社員「お前ホントに仕事できねぇな。辞めちまえよ」 イジメられ社員「本当にいいの?僕が辞めたら、次は君の番だよ?」
「変だな…味がしない…」 コロナを確信した俺は内心歓喜していた。これで仕事を休める。 しかし、医者の「コロナではありません」というセリフに俺は激しく落胆した。医者は続ける。「おそらく、鬱による味覚障害です。仕事は休んでください。そして、大事な人と、穏やかな時間を過ごしてください」
母「宿題やったの?次にお前はこう言う、『今やろうと思ってたのに』」 息子「今やろうと思ってたのに!……ハッ!?」
夕日がさす放課後の廊下。 生徒指導室に、意外な生徒が入っていくのが見えた。 「ん?いまの2年A組の委員長だよな。あんな真面目な子でも、生徒指導室に呼ばれたりするんだな」 俺はそれが少し嬉しかった。人間、誰でも過ちはあるんだな。 生徒指導室の前を通り過ぎる時、中から鍵をかける音がした。
ルンバが壊れたので、廃棄場所に置きにいった。去り際に、涙が溢れた。仕事が出来なくなったからといって、ゴミとして捨てられるこのルンバに、自分を重ねてしまったのだ。雨の中、俺はルンバを拾い上げ、胸に抱き、人目もはばからず泣き叫んだ。ここまで説明して、ようやく警察は俺を解放してくれた。
【憐憫】 ※140字以内で完結する小説でした。 ※再掲 今までに投稿してきた140字小説は、溜まり次第、以下のブログに格納していくので、ちょくちょく覗いていただけたら嬉しいです☺ hojokai.blog/?cat=2
「またお腹が痛くなったのかい?」 「うん!でももう治った!」 そう言ってこの母子はいつも帰っていくのだ。看護師曰く「多分あの子、待合室の鬼滅の刃が読みたくて、仮病使ってるんですよ」との事だ。 後日、いつもの母子が来ると、奥さんはひっそりと私に聞いた。 「あの…先生って独身ですか?」
ダメだダメだ…! 書けたはいいが、読み返す度につまらなく感じる。俺は尊敬する大作家さんに助言を求める事にした。 『どうしたら納得のいく作品を書けるのでしょうか?』 『簡単だ。私の言う通りにしてみなさい』 俺はコンビニに走り、ウォッカを買って一気に飲んだ。俺の作品が、傑作に化けた。
『俺と……………付き合ってくれない?』 『その前に、言いたい事が5つあるの。 1: LINEで告白はやめようね。 2: 3点リーダで溜め過ぎてなんかキモい。 3:先月失恋して凹んでたくせに立ち直り早いね。 4:彼女作る前に部屋は綺麗にした方がいいよ。 5:送り先は確認しようね。私はあなたの母です』
道端に財布が落ちていた。 俺の中の悪魔が囁く。 「貰っちまえよ…!」 次に天使が囁く。 「無理しないでいいの…貴方は頑張ってる。これは神様からのご褒美なの。だから、貰っていいのよ」 隣の娘が囁く。 「パパ、どうしたの?」 俺は笑顔で答える。 「なんでもないよ。さ、警察に届けに行こう」
医者「残念ですが手術は出来ません。あなたには、異常に麻酔耐性が出来てるようで…」 毛利小五郎「なぜ…」
「素敵なお写真ですね。可愛らしい女の子だ。お孫さんですか?」 「いや、妻だよ」 「…失礼。今、なんと?」 「笑ってくれたまえ。私はね、『君のお嫁さんになりたい』と言ってくれた幼馴染の言葉を、未だに守っているのだよ。私の方が、ずっとずっと年上になってしまった、今になってもね」
クソ上司にはウンザリだ。 1発当てて脱サラしようと、ラノベを書く事にした。まず、勇者として召喚されて… 「勇者ってなに?」 息子が純粋な瞳で聞いてくる。 「悪い奴に負けない、勇敢な人の事だよ」 「じゃあ、パパは勇者だね!」 俺は泣きながら息子を抱きしめた。 パパ、上司になんか負けないよ。
ぐっ……滑って打った頭から、血が止まらない…。 まずいぞ…意識が薄れてきた。救急車は呼べたが、間に合うだろうか…。万が一……俺が死んでも家族が処理に困らないよう…PCや銀行のパスワードを遺さねば……ペン……無い……仕方ない、血文字で残すか……パスは…最愛の…弟の…名……『masayuki』