「博士。進化したポケモンを、元に戻す事は出来ませんか?」 「残念じゃが、それは不可能じゃ。なぜそんな事を聞く?」 「…ヒトカゲからリザードンって、大分、大きくなりますよね」 「そうじゃな」 「ピカチュウを抱っこしていると、リザードンが時々、羨ましそうな目でこっちを見ているんです」
弟は時速5kmで家を出ました。その30分後、弟の忘れ物に気付いた兄は時速15kmで追いかけました。兄が弟に追いつくと、弟は兄の彼女とキスしていました。兄は物陰で茫然と立ち尽くした後、弟の忘れ物をゴミ箱に捨て、時速1kmで家に帰りました。弟と兄の心の距離が縮まるには、何年かかるのでしょうか。
34歳になった日の朝、男は唐突に予感する。 「あ…俺、近々死ぬかも」 男は亡くなる前に、疎遠になってた友人も含め、1人1人に会ってまわる事にした。それは、昔話に花を咲かせる事で『案外、悪くない人生だったな』と、己が人生を見つめ直す旅でもあった。その後、死は訪れた。97歳の大往生だった。
「お箸はおつけしますか?」 「はい」 店員はバーコードを読み取る。 「お箸はおつけしますか?」 「はい」 店員はレジ袋に商品を入れる。 「お箸はおつけしますか?」 「はい」 3度も聞いてくるなんて、相当お疲れらしい。労いの言葉をかけると、店員は嬉しそうに微笑んだ。お箸は入ってなかった。
〝独りが好きな人〟オフ会に参加してきた。 店を貸し切り、全員独りで座り、黙々と酒と食事を楽しむ会だ。勿論、話しかけるのはご法度。沈黙に始まり、沈黙に終わる。 そんなオフ会も、今や参加しているのは俺だけだ。俺は〝蟲毒〟の作り方を思い出しながら酒を飲んだ。毒のように、美味い酒だった。
彼女の母姉父は、プロゲーマーだった。 結婚を認めてもらうために、某格ゲーで家族全員に勝つ条件が課せられた。死に物狂いで特訓した結果、なんとか、俺は母姉父に勝つ事が出来た。恋人を抱き締めようとしたら、彼女はコントローラーを手に取った。 「黙っててごめんなさい。一番強いのは、私なの」
「浮気なんて、バレなきゃいい話だよな」 「…ここに、拳銃があったとする」 「拳銃?」 「あぁ。低い確率…例えば1/100の確率で、弾が出る拳銃だ。お前はその引鉄を、彼女に向けてこっそり引けるか?」 「……」 「お前がやってるのは、そういう行為なんだよ。ちなみに俺は、既に2回撃たれている」
宿題もせず遊ぶ息子に怒り、ゲームは鍵付きの箱に入れた。宿題を済ますまで鍵は開けない。それ以来、息子は必死に勉強した。そして見事にピッキングで鍵を開けられるようになった。思えば、それが奴の最初の〝盗み〟だった。 今や大泥棒となった奴を、俺は止めねばならない。 刑事として、父として。
「この病院 "出る"んだってよ」 入院初日から 隣のベッドの爺さんが脅してくる。 「冗談ですよね…」 翌日 目が覚めると 隣のベッドは空だった。看護師曰く そのベッドの人は既に亡くなっていたらしい。 恐怖に怯えていると 昨夜の爺さんは向かいのベッドでニヤニヤしていた 故人のベッドで悪戯するな
「PS5欲しいんだよなぁ」 友人のその一言が嬉しかったんだ。最近じゃ、身近な友人はゲームなんてやらなくなって、語り合える相手は俺の周りにすっかりいなくなっていたからだ。 「あー、まだ入手困難だね…。でも大丈夫!再入荷の情報入ったらすぐに知らせるよ♪」 「マジ?悪いな…息子が喜ぶよ」
田中 弘 本庄 綾子 白鳥 啓介 全力院 玉蹴之助 神田 淳史 山田 由香里 「まただ…登場人物一覧ページの時点で、もう犯人わかっちまった」 「どうしてわかるの?」 「この推理作家、せっかく謎は面白いのに、同じ名前の子が現実でイジメられないようにって、犯人には必ず存在しない名前つけるんだよ」
「俺、彼女出来た」 「マジ!?」 昔ついた嘘を嘘と言えず、架空の彼女との関係は順調だと親友に3年間、報告し続けた。そして、遂に結婚する所まで来た。もはや嘘も限界だ。 「ごめん…彼女なんて実はいないんだ」 「…架空は、彼女だけか?」 「え?」 顔を上げると、親友の姿は何処にも無かった。
「ドラ〇えもん、日誌なんてつけてるのか…ちょっと見ちゃえ」 【1月5日】 の〇太君の経過は非常に順調。今回こそセワシ君の未来を変えられそうだ。タイムマシンで戻る度、〇び太君の『初めまして』を聞く事に僕はもう堪えられない。どうか…今回こそ… 「……表紙の〝81回目〟って、もしかして…」
私が男と付き合うと、その人が死ぬ。大学の間にそれが3回起きた。私が愛する人は死んでしまうと皆に噂された。それでも恐れず私と付き合ってくれた4人目が今の旦那だ。 そして、私達の間に男の子が産まれた。でも、1年と半年後、最愛の我が子は死んだ。夫だけは今でも死なず、私の傍で微笑んでいる。
戦友の戦死報告を受けても、彼は眉1つ動かさなかった。 「お前、何も思わないのか?」 「当然だ。もう慣れたよ」 そんな彼だが、死んだはずの戦友と再会できた時、別人のように泣いていた。 「安心したよ。お前も人の子だったんだな」 「…生還してくれる事には、まだ慣れてないだけさ」
「住宅街にも、最近じゃ防犯カメラが増えたなぁ」 ずっと見張られているようで良い気分はしないが、安心と言えば安心だ。 なのに、日課のランニングに言ってる間に空き巣に入られた。たかが30分だから、いつも面倒で鍵をかけていなかったのだ。見ると、家の前の防犯カメラが1つ、無くなっていた。
「この度は弊社がご迷惑をおかけしてしまい…申し訳ありません…」 「誠意が感じられんなぁ…」 「誠意?」 「日本にはあるだろう?両手と頭を地面につける、伝統的な謝罪方法がさぁ…」 悔しさに歯を食いしばりながらも、俺は従った。 「この度は申し訳ありません!」 「うん、三点倒立じゃなくてね」
母校で、旧友たちとタイムカプセルを掘り出し、皆で開いた。 「聡君は何入れてたの?」 「昔、君に渡せなかった物だよ」 聡はカプセルの中から小箱を拾い上げる。開くと、手作りの拙い指輪が入っていた。 「僕と結婚して下さい」 「ふふ…もう1度、式も挙げる?」 彼からの、2度目のプロポーズだった。
「呪いの市松人形はありませんか?」 俺はあらゆる手段を駆使して日本中から呪いの市松人形を集めた。そして噂通り、人形達の髪は日に日に伸びていった。 俺は歓喜した。 人形達から髪を根こそぎ収穫し、それを持って病院に駆け込んだ。 「先生、お願いします。この髪を俺の頭皮に移植してください」
こんな惨めな新郎がいるだろうか。 なぜかって、俺側の友人席は、全員レンタル友達だからだ。席を埋める程の友人なんて俺にはいない。スピーチをしてくれる親友もレンタルだ。俺との架空の思い出を語る姿に、涙が出そうになる。結婚2年目にして知った事だが、妻の側も、全員レンタルだったらしい。
「1024円か…キリの悪い数字ですね」 「いえ、2の10乗ですので、とてもキリの良い数字です」 「では、343は?」 「7×7×7。7は神秘的な数字です」 ふと気になったので、聞いてみる事にした。 「博士の1番好きな数字は何ですか?」 「1029です」 「どんな計算なのです?」 「私と妻が出会った日です」
「組長、ウチの組員が殺し屋〝ルシファー〟に殺られました…」 「クソッ!またあの中二病野郎かッ!」 「ですが、腕は確かッス。調べようにも、奴の顔を見て生き残ってる奴がいないんスよ…」 「うるせぇ!必ず捕まえてぶっ殺せ!ところでおめぇ、見ねぇ顔だな。新入りか?」 「ルシファーと申します」
「…ねぇ」 「ん?」 「洗濯物、靴下は裏返すなって言ったよね?」 「はぁ…いいだろそんくらい」 「そういう問題じゃなくて。思いやりとか無いの?」 「っせぇなぁ…仕事で疲れてるんだよこっちは」 「はぁ?私もアンタのお守りに疲れたんですけど?」 最近の園児のおままごとは、リアル過ぎて怖い。
「失礼、警察です。貴女の恋人に殺人容疑がかかっておりまして…」 「え?」 「逃走中の彼について、お話しを聞かせていただきたく…」 ショックで茫然とする私を見かねて、刑事達は質問もそこそこに帰っていった。 彼が…殺人鬼だったなんて……探されちゃう…彼をもっと遠くに…埋め直さないと……。
気が狂いそうだ。 もう何時間も、ベルトコンベアーの上を流れてくるペットボトルを眺めている。100本に1本くらい、倒れてるのを直すのが俺の仕事だ。こんな単純作業、人間のする事じゃない。機械にでもやらせせせせせ世せ世せseesese逕溘″縺溘> 「おい、K-203がまた故障したぞ。早く技術者を呼べ」