101
俺は激しく後悔していた。
最後まで見たら死ぬ呪いのYoutube動画は本物だったんだ。開いた瞬間、俺は金縛りになった。指も瞼も動かせない。動画の中で、髪の長い女性が、ゆっくりとこっちに近づいてくる。もう終わりだと思った瞬間〝彼〟が現れ、金縛りは解けて助かった。ありがとう、楽天カードマン。
102
【収益化の弊害】
※140字以内で完結する小説でした。
※再掲
今までに投稿してきた140字小説は、溜まり次第、以下のブログに格納していくので、ちょくちょく覗いていただけたら嬉しいです☺
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103
級友が次々と卒業証書を受け取る姿に、涙が溢れてきた。もう皆と一緒に登校したり下校する事も無いんだ…。
出来る事なら、私も一緒に卒業したかった。でも、私は留年を選んだ。
私にはやり残した事があるから。彼氏を作って一緒に登校する夢は、一生で今しか叶えられない。
青春の延長戦が、始まる
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愛犬が死んだ。私の孤独を支えてくれた、大切な家族だった。有給理由を書いて申請すると、案の定却下された。上司から電話だ。
『犬が死んで1日休みたい?何言ってるんだ?』
もう、いっそ辞めてしまおうか。
『家族だったんだろう?もっと休め』
枯れたはずの涙が、また溢れて、愛犬の遺影に落ちた。
105
「ママ 兎と亀の話は妙だよ」
「どうして?」
「そもそも亀はなぜ不利な勝負を仕掛けたんだろ?兎が寝たのも亀に都合が良すぎる。亀が仕組んでたんじゃ…」
「そうね。でもママはこう思うの」
「?」
「亀は万年だから…きっと、兎が生きてる内に遊びたかっただけなのよ。大事なのは、勝敗じゃないの」
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「なんだこれ?」
届いた書留を夫が開くと、中身はご祝儀袋だった。私も首を傾げた。私達はもう結婚7年目なのに。だけど差出人である先輩の名を見て、私は彼の言葉を思い出した。
『ごめん…金無くて結婚式行けない…俺が人気作家になったら、必ずお祝いするから』
ご祝儀袋には、100万が入っていた。
107
ある、雪の日の事だ。
チャイムに出ると、お隣の奥さんが立っていた。
「あの…作りすぎちゃったんで、よければ」
そう言って奥さんは、抱っこしている赤ちゃんを僕に差し出した。
「はは…冗談ですよね?」
「……」
「冗談ですよね?」
奥さんは俯いて、無言で帰っていった。
もう、5年も前の話だ。
108
「…課長、その腕時計は?」
「あぁ、可愛いだろう?」
俺はキティちゃんの腕時計を誇らしげに見せた。
「え、えぇ…でも仕事場には…」
「そんな顔するな。娘からの誕生日プレゼントなんだよ」
「あ、なるほど」
部下は微笑んでくれた。まぁ、娘なんていないんだが。まだまだ、世の中はポイズンだぜ。
109
「今日は皆に転校生を紹介する…が、その前に転校生の鈴木さん、君に言っておく事がある」
「なんですか先生?」
「パンを咥えながら登校するな。朝食は家でとりなさい」
「はぁい」
「あとバイク通学は禁止だ。いいな?」
「はぁい」
「よし。じゃあ君の席は、今朝病院に運ばれた安田の隣だ」
110
不思議な本があった。
カバーは真っ白で、タイトルすら無かった。中身も、全ページが白紙だった。
「それは完璧な本です」
「完璧?」
「はい。あらゆる表現規制の声に忖度した、誰も傷つけない本です」
数年後、その本は発禁となった。
444というページ数が、死を連想させて不快だと言われたからだ。
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描いた絵を投稿していると、憧れの絵師さんがイイネをくれた。
私はそれが嬉しくて、沢山絵を描いた。
自分でも、昔より大分上手くなったと思う。フォロワーさんもかなり増えた。でも、憧れの絵師さんは、いつの間にか私にイイネをくれなくなっていた。
私はそれが嬉しくて、もっと沢山絵を描いた。
112
和装に身を包み、背筋の伸びた義祖父は、老齢ながらも実に凛々しい。
「僕も義祖父さんのように、良い歳の取り方をしたいものです」
義祖父は首を振り、自室に戻ると、グラサンにパーカー姿で出て来た。
「良い歳の取り方とは、人生を楽しむ心を、忘れない事じゃろ?」
最近HIP-HOPにハマったそうだ。
113
俺の目の前で、おっちゃんがひったくりにあった。俺は急いで犯人を追いかけ鞄を取り返してやった。
後日 就活の面接に向かうと、あの時のおっちゃんがいた。志望会社の役員だった。
「君のような若者と私は働きたい」と言われ内定ゲット。その夜、俺はひったくり犯を演じてくれた友人と祝杯をあげた。
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【企業研究】
※140字以内で完結する小説でした。
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俳優の夢を諦めた時、人生が一気に色褪せた。
どうやって死のうかと毎日考えてた俺に友人が言った。
「死ぬ前に、この漫画読んどけ」
それが、尋常じゃないくらい面白い。あっという間に最新刊まで読んだが、まだ完結してないらしく、親友に聞いてみた。「なぁ、HUNTER×HUNTERの続き、いつ出るんだ?」
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「俺の上司、一日に最低でも10回はバカって言ってくるんだよ」
「いいなぁ、一昔前のツンデレ美少女みたいで」
「いや、一度にじゃねぇよ?」
118
新しい町に着いたら、民家を漁るのが勇者の特権だ。さっそく箪笥を開けると、中に冷たくなった老婆がいた。返事は無い。
「見ましたね」
後ろを振り向く間もなく、俺の頭に壺が叩きつけられた。教会で目覚めると、神父は「何があったか、覚えていますか?」と笑顔で言った。俺は「いいえ…」と返した。
119
映画館のチケット売り場でバイトしてると、カップルがやってきた。
「ここと、ここの席でお願いします」
妙だなと思った。空いてるのに、敢えて席を離して指定したからだ。
「いいんです。隣同士で座っちゃうと、ドキドキして映画に集中できないんです」
俺は思った。
これで時給900円は安すぎると。
120
俺は昔から霊感が強く、友人は大体幽霊だ。父の葬儀に、親友霊が来てくれた。
「盛り塩も恐れず、来てくれてありがとう…」
「何言ってんだ、当然さ」
父さん、俺にはこんなに素晴らしい友がいます。俺の事は気にせず、どうか成仏して下さい。坊さんの読経が終わり、隣を見ると、親友も成仏していた。
121
「僕と結婚して下さい」
「嬉しい…夢みたい…」
「頬っぺたでも抓ってみるかい?」
抓ってみると、目が覚めた。
え、本当に夢?
嘘でしょ…?
抓らなければよかった…。
「起きて~!朝ご飯できたぞ~」
リビングから、夫の声がする。
もう少しあの時の幸せに浸っていたかったけど、まぁ、いいか。
122
「~以上が、御社を志望した理由です」
よし、練習通り言えたぞ。面接官は満面の笑顔だし、手応えアリだ!憧れの大企業に入れるかもしれない。ただ、面接官がずっと指で机を叩いているのが気になるな。
トン・トーン・トン……
これはまさか…モールス信号?
『ニゲロ ココ ハ ブラック キギョウ ダ』
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神は俺に言った
「いつに戻りたい?」
「その前に確認させて下さい」
「何だ」
「俺は今まで何回、時間を戻してもらいましたか」
「97回だ」
「…もう、戻さなくていいです」
神は頷き、霧散した。
なぜ…何度繰り返しても、彼女を救えない…。
どうして…。
………。
「神様、やはり、もう1度だけ…」
124
「SNS見てるとバズって流れてくるのって、子育ての大変さとか夫への不満ばかりで…なんか、結婚願望無くなっちゃった」と友は語る。
SNSはユーザーが見たいものを優先的に見せる。
友の話は、順序が逆なんじゃないか?
つまり、結婚しない理由を求めてるだけなんじゃ…。
少なくとも、俺はそうだった。
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撮られると死ぬ。
このカメラには、そんな迷信があるらしい。しかしその真相は、撮った相手をターゲットにする殺人鬼がいたというわけだ。そいつを検挙した俺は、撮られて生き残った記念すべき最初の一人だ。これで、思い残す事は無い。俺はビルの屋上から晴々とした気持ちで飛び降りた。