俺は激しく後悔していた。 最後まで見たら死ぬ呪いのYoutube動画は本物だったんだ。開いた瞬間、俺は金縛りになった。指も瞼も動かせない。動画の中で、髪の長い女性が、ゆっくりとこっちに近づいてくる。もう終わりだと思った瞬間〝彼〟が現れ、金縛りは解けて助かった。ありがとう、楽天カードマン。
【収益化の弊害】 ※140字以内で完結する小説でした。 ※再掲 今までに投稿してきた140字小説は、溜まり次第、以下のブログに格納していくので、ちょくちょく覗いていただけたら嬉しいです☺ hojokai.blog/?cat=2
級友が次々と卒業証書を受け取る姿に、涙が溢れてきた。もう皆と一緒に登校したり下校する事も無いんだ…。 出来る事なら、私も一緒に卒業したかった。でも、私は留年を選んだ。 私にはやり残した事があるから。彼氏を作って一緒に登校する夢は、一生で今しか叶えられない。 青春の延長戦が、始まる
愛犬が死んだ。私の孤独を支えてくれた、大切な家族だった。有給理由を書いて申請すると、案の定却下された。上司から電話だ。 『犬が死んで1日休みたい?何言ってるんだ?』 もう、いっそ辞めてしまおうか。 『家族だったんだろう?もっと休め』 枯れたはずの涙が、また溢れて、愛犬の遺影に落ちた。
「ママ 兎と亀の話は妙だよ」 「どうして?」 「そもそも亀はなぜ不利な勝負を仕掛けたんだろ?兎が寝たのも亀に都合が良すぎる。亀が仕組んでたんじゃ…」 「そうね。でもママはこう思うの」 「?」 「亀は万年だから…きっと、兎が生きてる内に遊びたかっただけなのよ。大事なのは、勝敗じゃないの」
「なんだこれ?」 届いた書留を夫が開くと、中身はご祝儀袋だった。私も首を傾げた。私達はもう結婚7年目なのに。だけど差出人である先輩の名を見て、私は彼の言葉を思い出した。 『ごめん…金無くて結婚式行けない…俺が人気作家になったら、必ずお祝いするから』 ご祝儀袋には、100万が入っていた。
ある、雪の日の事だ。 チャイムに出ると、お隣の奥さんが立っていた。 「あの…作りすぎちゃったんで、よければ」 そう言って奥さんは、抱っこしている赤ちゃんを僕に差し出した。 「はは…冗談ですよね?」 「……」 「冗談ですよね?」 奥さんは俯いて、無言で帰っていった。 もう、5年も前の話だ。
「…課長、その腕時計は?」 「あぁ、可愛いだろう?」 俺はキティちゃんの腕時計を誇らしげに見せた。 「え、えぇ…でも仕事場には…」 「そんな顔するな。娘からの誕生日プレゼントなんだよ」 「あ、なるほど」 部下は微笑んでくれた。まぁ、娘なんていないんだが。まだまだ、世の中はポイズンだぜ。
「今日は皆に転校生を紹介する…が、その前に転校生の鈴木さん、君に言っておく事がある」 「なんですか先生?」 「パンを咥えながら登校するな。朝食は家でとりなさい」 「はぁい」 「あとバイク通学は禁止だ。いいな?」 「はぁい」 「よし。じゃあ君の席は、今朝病院に運ばれた安田の隣だ」
不思議な本があった。 カバーは真っ白で、タイトルすら無かった。中身も、全ページが白紙だった。 「それは完璧な本です」 「完璧?」 「はい。あらゆる表現規制の声に忖度した、誰も傷つけない本です」 数年後、その本は発禁となった。 444というページ数が、死を連想させて不快だと言われたからだ。
描いた絵を投稿していると、憧れの絵師さんがイイネをくれた。 私はそれが嬉しくて、沢山絵を描いた。 自分でも、昔より大分上手くなったと思う。フォロワーさんもかなり増えた。でも、憧れの絵師さんは、いつの間にか私にイイネをくれなくなっていた。 私はそれが嬉しくて、もっと沢山絵を描いた。
和装に身を包み、背筋の伸びた義祖父は、老齢ながらも実に凛々しい。 「僕も義祖父さんのように、良い歳の取り方をしたいものです」 義祖父は首を振り、自室に戻ると、グラサンにパーカー姿で出て来た。 「良い歳の取り方とは、人生を楽しむ心を、忘れない事じゃろ?」 最近HIP-HOPにハマったそうだ。
俺の目の前で、おっちゃんがひったくりにあった。俺は急いで犯人を追いかけ鞄を取り返してやった。 後日 就活の面接に向かうと、あの時のおっちゃんがいた。志望会社の役員だった。 「君のような若者と私は働きたい」と言われ内定ゲット。その夜、俺はひったくり犯を演じてくれた友人と祝杯をあげた。
【企業研究】 ※140字以内で完結する小説でした。 今までに投稿してきた140字小説は、溜まり次第、以下のブログに格納していくので、ちょくちょく覗いていただけたら嬉しいです☺ hojokai.blog/?cat=2
俳優の夢を諦めた時、人生が一気に色褪せた。 どうやって死のうかと毎日考えてた俺に友人が言った。 「死ぬ前に、この漫画読んどけ」 それが、尋常じゃないくらい面白い。あっという間に最新刊まで読んだが、まだ完結してないらしく、親友に聞いてみた。「なぁ、HUNTER×HUNTERの続き、いつ出るんだ?」
彼はスマホを眺めて、愛しそうに微笑んでいる。 ちょっとだけ、嫉妬してしまった。そんな微笑みを向けてくれるのは、私に対してだけだと思ってたから。 「ねぇ、何見てるの?」 「え?あー…コレ」 彼が照れ臭そうに画面を向けると、私の頬は熱くなった。画面には、雪の中の、私の写真が映ってたから。
「俺の上司、一日に最低でも10回はバカって言ってくるんだよ」 「いいなぁ、一昔前のツンデレ美少女みたいで」 「いや、一度にじゃねぇよ?」
新しい町に着いたら、民家を漁るのが勇者の特権だ。さっそく箪笥を開けると、中に冷たくなった老婆がいた。返事は無い。 「見ましたね」 後ろを振り向く間もなく、俺の頭に壺が叩きつけられた。教会で目覚めると、神父は「何があったか、覚えていますか?」と笑顔で言った。俺は「いいえ…」と返した。
映画館のチケット売り場でバイトしてると、カップルがやってきた。 「ここと、ここの席でお願いします」 妙だなと思った。空いてるのに、敢えて席を離して指定したからだ。 「いいんです。隣同士で座っちゃうと、ドキドキして映画に集中できないんです」 俺は思った。 これで時給900円は安すぎると。
俺は昔から霊感が強く、友人は大体幽霊だ。父の葬儀に、親友霊が来てくれた。 「盛り塩も恐れず、来てくれてありがとう…」 「何言ってんだ、当然さ」 父さん、俺にはこんなに素晴らしい友がいます。俺の事は気にせず、どうか成仏して下さい。坊さんの読経が終わり、隣を見ると、親友も成仏していた。
「僕と結婚して下さい」 「嬉しい…夢みたい…」 「頬っぺたでも抓ってみるかい?」 抓ってみると、目が覚めた。 え、本当に夢? 嘘でしょ…? 抓らなければよかった…。 「起きて~!朝ご飯できたぞ~」 リビングから、夫の声がする。 もう少しあの時の幸せに浸っていたかったけど、まぁ、いいか。
「~以上が、御社を志望した理由です」 よし、練習通り言えたぞ。面接官は満面の笑顔だし、手応えアリだ!憧れの大企業に入れるかもしれない。ただ、面接官がずっと指で机を叩いているのが気になるな。 トン・トーン・トン…… これはまさか…モールス信号? 『ニゲロ ココ ハ ブラック キギョウ ダ』
神は俺に言った 「いつに戻りたい?」 「その前に確認させて下さい」 「何だ」 「俺は今まで何回、時間を戻してもらいましたか」 「97回だ」 「…もう、戻さなくていいです」 神は頷き、霧散した。 なぜ…何度繰り返しても、彼女を救えない…。 どうして…。 ………。 「神様、やはり、もう1度だけ…」
「SNS見てるとバズって流れてくるのって、子育ての大変さとか夫への不満ばかりで…なんか、結婚願望無くなっちゃった」と友は語る。 SNSはユーザーが見たいものを優先的に見せる。 友の話は、順序が逆なんじゃないか? つまり、結婚しない理由を求めてるだけなんじゃ…。 少なくとも、俺はそうだった。
撮られると死ぬ。 このカメラには、そんな迷信があるらしい。しかしその真相は、撮った相手をターゲットにする殺人鬼がいたというわけだ。そいつを検挙した俺は、撮られて生き残った記念すべき最初の一人だ。これで、思い残す事は無い。俺はビルの屋上から晴々とした気持ちで飛び降りた。