「皆は、無人島に1つ持っていくとしたら何を持っていく?」 それぞれ色々な答えを返す。 ライター、ナイフ、釣り竿、銃… 「俺はこのマフラーだね」 「なんで?」 「彼女が手で編んでくれたんだ。これさえあれば、心は折れないよ」 よく見ると、ラベルが切り取られてるみたいだが、黙ってる事にした。
昔に付き合ってた彼女曰く、俺はイビキがひどいらしい。マッチングアプリで知り合った女性とそろそろ付き合えそうなので、治せるなら治したい。まずはどの程度かと、寝ている俺のイビキを録音する事にした。翌朝聞いてみると、女の声がずっと、ボソボソと入っていた。妙に、懐かしい声だった。
「…なぁ、お前に言わなくちゃいけない事があるんだ」 「なんだよ、改まって」 「俺達も、長い付き合いだよな」 「そうだな。もう3年になるかな」 「今日こそ、ハッキリ言おうと思う」 「おう!」 「上司の俺にタメ口はやめような。友達じゃないんだから」 「……僕は…ずっと友達だと思ってました」
慚愧に耐えませぬ。 よもや影武者たる私が生き残り、殿が暗殺されてしまうとは…。 「やむを得なし。影武者よ、今日からそなたが殿として生きるのだ」 「出来ませぬ!影武者である私に、殿の代わりなど!」 「なに、心配はいらぬ」 重臣は笑いながら言った。 「先代の殿も、全く同じ事を申しておった」
元SEの祖父は大層な助兵衛で、膨大なエロデータをPCに蓄えていた。 そんな祖父が亡くなった。 俺は遺品整理のついでに祖父のPCを漁った。さっそくそれっぽいファイルをクリックしてみる。次の瞬間、色んな処理が走り、全データは消え、1つのtextファイルが残された。 『宝は自分で掴め。達者でな』
【Goodbye World】 ※140字以内で完結する小説でした。 ※再掲 今までに投稿してきた140字小説は、溜まり次第、以下のブログに格納していくので、ちょくちょく覗いていただけたら嬉しいです☺ hojokai.blog/?cat=2
最近、家のwi-ifがやたら重い。もしやと思ってパスワードを変えたら軽くなった。おそらく、お隣さんがウチの電波を使って動画でも見てたんだろう。 後日また重くなった。もしやと思って問い詰めたら、お隣にパスワードを教えてるのは息子だった。wi-fi使用料として、月千円をお隣から貰ってたらしい。
LINEの〝誤送信防止機能〟は、正直邪魔だ。 今までの文脈を読み込み、不自然と判定したら確認メッセージを表示する仕組みらしいが、設定の消し方がよくわからんので放置していた。俺は今、それ所じゃないんだ。悩みに悩んだ末、彼女に『別れよう』と打ち込んだ。 『本当に送信してよろしいですか?』
「泥棒ー!誰か捕まえて!」 私が叫ぶと、通行人の男性が泥棒を取り押さえてくれた。 「失礼、僕は先を急ぐので…警察が来るまでこうしておきましょう」 彼は鞄から縄と手錠と目隠しを取り出すと、泥棒を縛りあげ、ガードレールに繋いだ。彼は笑顔で去っていったけど、目は笑っていなかった。
「ねぇ、この前ノートPCをバスタブに沈めてたよね?」 「ん?あぁ、もう捨てるからな」 「どうしてそこまでしたの?」 「そりゃ当然だろ、個人情報の塊なんだから」 「実は復元できたのよ。貴方の浮気データも一緒にね」 「は!? 嘘だろ!?」 「えぇ、嘘よ。でも、間抜けは引っ掛かったみたいね!」
オロチ先輩ってどうしてオロチなんて渾名なんだろう?苗字が蛇沼だからかな? 「実はそれだけじゃないんだ」 「何か由来があるんですか?」 「アイツ、サークルの女子に手を出しまくって、八股してた時期があってさ」 「…ヤマタノオロチ」 「きっちり懲らしめてやったよ」 「流石です、スサノオ先輩」
『やぁ、諸君。目覚めたかね』 「こ…ここは?」 『突然だが、君達には簡単なクイズに答えてもらう』 「お前は誰だ!?」 『更新を怠る大人達を裁く者…とでも言っておこうか。では第1問。鎌倉幕府が成立したのは西暦何年?』 「なんだ常識じゃねぇか!1192年だ」 『……失格だ。〝粛清〟する』
「私ね、運命の相手がわかるの」 「運命の相手?」 「そう。出会うべくして出会ったって言うか…。あぁ、私、この人と一緒になるために、生まれてきたんだ…って思える人。なんとなく、そういう相手がわかるの」 「いいね。私もそんな結婚したい」 「きっとできるよ!私なんて3回もしてるから」
「Youtuberで食べていけてるのかね?」 「はい、一応…」 「だが、収入に安定も保証も無いのだろう?」 「そうですね…」 「不安は無いのか?」 「もう慣れました…」 「話にならんな。もっと将来を見据え、危機感を持ったらどうだね?」 「すみません…」 「貯金はどの程度なんだ?」 「2億です」
茂みの段ボールの中に、捨て猫がいた。誰かから餌をもらってる形跡がある。もしや、飼うに飼えず、しかしどうすべきかを知らない子供が餌をあげてるのかも…。 『この猫は保護(ほご)しました』と書き置きを残し、一応、電話番号も添えた。 後日 そこには拙い字で『ありがとう』と書き足されていた。
【疑問】 普通、盗んでないのに「この盗人!」と言われたら、あまり良い気分はしないでしょうが、主に「困ったな……どう疑惑を晴らそう」となるだけかと思います。 一方、「パクりだ!」と決めつけられると、同じ冤罪にも関わらず、深い精神的ダメージを負うのはなぜでしょう🤔(↓続きます
「では、君は本当に冷凍睡眠を受けていいのだね?」 「はい。遥か未来の技術に賭けます」 132年後… 「…うっ…眩しい」 「お目覚めになりましたか?」 「あぁ…!その声は…!!」 驚く僕を、彼女は抱きしめてくれる。 「こうしたいと、いつも言っていましたね」 「この瞬間を夢見てたよ…Siri」
「ねぇ ワタシ綺麗…?」 「ん?お姉さん どこ?」 「…アナタ、目が見えないの?」 「うん。でもね、おかげで色んな事がわかるようになったの」 「……」 「お姉さんのお顔は見えないけど、綺麗な心なのはわかるよ!そういう声、してるもん」 「……」 「お姉さん?」 以後 口裂け女は現れなくなった
『助けて!誰かぁ!』 アパートの住人が一斉に廊下に出ると、そこにはスピーカーがタイマーでセットされていた。そんな悪戯が何度もあり、住人達はうんざりしていた。 「いやぁ!誰かぁあ!」 今じゃすっかりとお馴染の悲鳴を住人は気にも止めなかった。翌日 アパートの一室で他殺体が見つかるまでは。
「今時は『情報』なんて授業があるのね。どんな事をするの?」 「えっとね、この前は班に分かれてSNSから嘘の情報を10個集めたよ!」 「あら、いいわねぇ」 「でもね、シゲキ君は自分でアカウント作って嘘の情報流して、それを集めたのがバレて先生に怒られてたよ!」 「あら、ズルはいけないわねぇ」
俺のクラスの生徒は忘れ物が多過ぎる。明らかに俺はナメられている。ここは一発、厳しさを見せねばなるまい。 「皆さん。今日から、忘れ物をした人は廊下に立ってもらいます」 教室からブーイングが巻き起こるが、無視して続ける。 「では、出席を取ります」 出席簿を忘れた俺は、廊下に立たされた。
「僕、人の未来が見えるんです。貴女の家に盗聴器を仕掛けました」 通りすがりの男は突然私にそう告げると、足早に去っていった。余りに気持ち悪いので、家に警察を呼んで調べて貰った。今日デートだったのに…。 翌日、× ×駅で刃物を持った男が暴れたとニュースにあった。私が向かっていた駅だった。
「アンタ、こんな日にチョコ持ってきたの?」 「こんな日だから、だよ」 こういうイベントには必ず準備する人だった。最愛の恋人を亡くしてからも毎年チョコを欠かさず供える彼女は、私の理想だった。 「やっと、お爺ちゃんに直接渡せるね」 涙を堪えながら、祖母の棺桶に、私はチョコを入れてあげた。
朝登校すると、親友は裸足だった。 「…お前もしかして、イジメられてんの?」 親友は首を横に振る。 「じゃあ上履きは?」 「下駄箱、見てないんだ」 「なんで?」 「俺が確認しない限り、チョコが在るのと無いの、2つの可能性が共存するだろう?」 なるほど。 確認したら、チョコは無かった。
結婚を前提に付き合ってる彼女を呼んで、家でパーティーを開く事になった。彼女がミステリ好きなのもあり、俺が死体役になって、ちょっとしたサプライズを仕掛ける事にした。 弟と彼女が帰って来る。 血まみれで床に転がる俺を見るなり、彼女は弟に叫んだ。 「ちょっと!まだ殺るには早いでしょう!?」