論文はここから読めるのだ。 nber.org/papers/w20150 もう5年ぐらい前から更新が続いてる論文で、この前久しぶりにアップデートされたから目を通したらめちゃくちゃ洗練されてて笑ったのだ〜。 (12/12)
ナチズムは国家のあらゆる部分を侵食したんだけど、司法制度もその例外ではなかったのだ。特に悪名高いのが「人民法廷」と呼ばれる反逆罪専門の裁判所なのだ。今回はその人民法廷やナチス政権下の裁判がどういうものだったか、特に死刑判決に注目した研究を紹介するのだ。 (1/10)
ナチスは政権を奪取する以前の1932年時点で120万人、1933年末までには390万人もの党員がいたのだ。1920年には100人ちょっとだった党員が何故ここまで増えたのか?その答えに「社会関係資本」の視点から迫った研究があるのだ。 (1/15)
社会関係資本(ソーシャル・キャピタル:以下、SCと略すのだ)という概念を一躍有名にしたのはパットナムの2冊の本なのだ。それぞれイタリアとアメリカの地方政治を分析しているんだけど、要は「市民社会」が良い暮らしには必要、ということを言っているのだ。 (2/15)
SCは社会関係の充実度合を表していて、自発的に作られた水平的なグループ(メンバー間は平等な関係)やネットワークのような “人々の豊かな繋がり”が “豊かな社会”をもたらすのだ。その主張自体は大いに納得できるけど、この研究はSCの “ダークサイド”に注目しているところが面白いポイントなのだ (3/15)
ドイツでは19世紀初頭以後、色々な「クラブ」が都市部を中心に形成されたのだ。中には政治的・宗教的なグループもあったけど、例えば労働者による歌唱クラブやスポーツクラブ、ペットの為のクラブのような趣味の集まりも沢山あったのだ。 (4/15)
社会関係資本のナイーブな見方に沿うと、自発的かつ水平的なグループの形成により市民社会が成熟し、民主主義を脅かすような過激な思想に感化されづらくなるのだ。ドイツの文脈で言えば、人々の繋がりが濃い地域ほど、ナチスに入党したり投票する人は少なくなる、という予測が立つのだ。 (6/15)
でも著者達によれば、実はこうしたクラブはナチスへの勧誘に格好の場を提供していたのだ。クラブの中に1人ナチス党員がいると、クラブ内のネットワークを活かしてどんどん党に勧誘されていくのだ!カルト宗教やア●ウェイの人が全然関係無い集まりに現れる状況に超似てるのだ! (7/15)
統計分析の結果、クラブの数が増えると、ナチスの入党者も増えていたことがわかったのだ! この結果は、クラブを非政治的な団体に限定した分析や、様々なその他の要因を統計的に排除した分析でも一貫していたのだ。 (8/15)
さらなる統計分析の結果、クラブの増加はナチスの入党者の増加を通じてナチスへの投票を増やしていたこともわかったのだ(媒介分析という手法を使っているのだ)。クラブは党員の拡大だけじゃなくて中央政界でのナチスの台頭をきっちり手助けしていたのだ〜!! (9/15)
でもパットナムは社会関係資本の「負の側面」にちゃんと気づいていたから、SCを2つに分けていたのだ。 1つは「橋渡し型」と呼ばれ、異なる背景をもつ人々を繋ぐ “外向き” のもので、例えばチェスクラブみたいな趣味人の集まりや、誰でも参加できるボランティア団体なんかを指すのだ。 (10/15)
もう1つは「結束型」で、排他的で内向きなもので、一部の人しか入れない団体を指すのだ。外に開かれた「橋渡し型」は豊かな社会をもたらすけど、「結束型」はそうではなく、内向きの忠誠心を喚起するテログループなんかが利用するSCとされているのだ。 (11/15)
…でも!!より詳細な統計分析によると、橋渡し型でも結束型でも、とにかく数が増えればナチスの入党者が増えていたのだ〜!! よく言われるような、「ナチスは大衆社会で周縁化された人達に支持された」という考えには疑問符がつくのだ。実は陽キャの集まりだった可能性があるのだ! (12/15)
ただ、このクラブの数がナチス入党に与える影響は、「政治的に安定している地域」だと弱くなることもわかったのだ。地域行政/政治がしっかりしていれば、例え勧誘されても政治的に極端な方向に感化される人は減る、ということを示唆しているのだ。 (13/15)
この研究は、”人々の豊かな繋がり”それ自体が何か良い結果を生む訳ではない、ということを示唆しているのだ。そりゃそうなのだ。ネットワークを利用して何かに動員しようとする人間が絶対出てくるのだ!どんな集まりでも関係無く起こることだと思うのだ。 (14/15)
今回の話は journals.uchicago.edu/doi/abs/10.108… からなのだ。タイトルがパットナムの本のもじりになっていてオシャレなのだ。 社会関係資本は一時期めちゃくちゃ流行った記憶があるけど、最近はダークサイドに注目した研究も増えているから陰キャのお尻さんには嬉しいばかりなのだ😊 (15/15)
「 “豊かな繋がり”?:社会関係資本とナチス」として追加しておいたのだ〜。 アライさんのお尻と学ぶ統計学 togetter.com/li/1342003
気軽にのだのだ言いながらリプを返した後に気づいたんだけど、板橋先生じゃん…ドイツ政治の専門家じゃん…本もウチにあるじゃん…もう絶対お尻さん身バレ出来ないのだ…。 でもこれまでも本業の方にのだのだ言ってきたし、もうこのまま失礼を貫くのだ…!
最終的に膨大な数の党員を抱えることになったナチスだけど、党の他にもナチスには色々な組織があったのだ。 前回はナチスの党勢拡大の話だったけど、今回はどんな人がどんなナチスの組織に加入しやすかったのかを分析した研究(進行中)の一部を紹介するのだ。 (1/10)
Google Scholarで論文探す ↓ コレ面白そうなのだ!(保存) ↓ 引用文献も眺める ↓ コレ面白そうなのだ!(保存) ↓ その論文の引用文献も眺める ↓ コレ面白そうなのだ!(保存) ↓ アラート「新しいの出たやで〜」(保存) Mendeley「お前こういうの好きだろ?」(保存) ↓ 大量の文献を抱え一日が終わる
ナチスの青少年部として組織された「ヒトラーユーゲント」では、子供たちに対して軍事的な訓練だけでなく、ナチズムのイデオロギーを徹底的に刷り込まれたのだ。今回はそのイデオロギー教育の効果を検証した研究を紹介するのだ。 (1/8)
アメリカから始まった世界恐慌の影響をモロに受けたドイツは、企業の倒産などが相次ぎ国内経済がめちゃくちゃになったんだけど、その隙を上手くついたのがナチスだったのだ。今回は緊縮財政とナチスの台頭を分析した研究を紹介するのだ。 (1/11)
戦後賠償という大問題を抱えていたドイツは、ハイパーインフレを乗り越え1920年代後半には経済が回復しつつあったのだ。でもタイミング悪く世界恐慌の余波を受け、GDPはガタ落ち、失業率も跳ね上がって破綻状態に陥ったのだ。 (2/11)
ワイマール政権が国内経済建て直しの手段として採用したのがデフレ/緊縮政策だったのだ。当時の首相、ブリューニングは緊急法規を利用してまで強引に政策を推し進めたんだけど、結果的にはどうしようもないぐらい大失敗だったのだ。 (3/11)
緊縮政策として政府支出の削減と新税の導入+税率の引き上げが行われたのだ。この政策を一番嫌ったのは誰か?失業者ももちろん歓迎しなかったけど、中/上流層にはたまったもんじゃないのだ。税金上げるとかふざけるな!って感じなのだ。 (4/11)