51
興味深いのは、欧米の有権者を対象とした分析では「反エリート主義・人民重視・同質性」が互いに強く相関しているのに対し、今回の東京都民を対象とした分析では、同質性はその他2つとの相関が弱かったのだ。日本のポピュリズムイデオロギーは欧米とちょっと違うかもしれないのだ。
(5/7)
52
53
54
55
ナチスは選挙を通じて権力を掌握した訳だけど、もしヒトラーの演説に大衆が揺り動かされていたなら、彼が演説をした地域ではナチスへの得票が増えていたはずなのだ。そこで実証の出番なのだ!この研究チームは、1927年から1933年までのヒトラーによる演説の日時・場所のデータを収集したのだ。
(2/12)
56
57
演説をどこで・いつするべきかをヒトラーの気持ちになって考えたとき、簡単に大衆を動員できそうな場所や他の政党との競争が激しい場所を優先するはずだけど、どちらも「選挙に効果がありそうな所」と言えるのだ。でも効果があるかどうかは、選挙情勢によるのだ。
(4/12)
58
59
彼らはまず、「ヒトラーがどこで演説するか?」を説明できるような統計分析をしたのだ。そこでは前回選挙の情勢なんかが使われたのだ。そのモデルから「ヒトラーがその地域で演説する確率」を予測したのだ。この予測に「当たり」と「外れ」があるのがキモなのだ。
(6/12)
60
61
62
63
ヒトラーは確かに演説は上手かったかも知れないのだ。でもそれは選挙に大きな影響を与えるほどではなかったのだ。ヒトラーのパフォーマンスで有権者の心は動かされたかも知れないけど、体は動かされなかった…ということをこの研究は示唆しているのだ。
(10/12)
64
もちろんヒトラーの演説が選挙以外(党員の勧誘とか)に影響を与えた可能性はあるのだ。それに、ヒトラーやナチスによるプロパガンダの全てが影響が無かった訳ではないのだ。ナチスのプロパガンダの話はまた次回するのだ〜。
(11/12)
65
今回の話はこの論文からなのだ。
cambridge.org/core/journals/…
正確にはこの論文は傾向スコア+Difference in Differenceという手法の合わせ技なんだけど、それ以外にも色々行き届きすぎてるバリバリの因果推論の論文で、さすがはAPSR(トップ中のトップジャーナル)掲載論文という感じなのだ〜。
(12/12)
66
67
68
歴史的に元々反ユダヤ的だったり、経済的な不平等が大きい地域ではラジオの効果はやっぱり大きかったのだ。
でもそうではない地域では、ラジオの利用率が「高い」ほど、なんとユダヤ人への迫害は「少なかった」のだ!関係が逆転していたのだ!
(12/19)
69
70
話を一旦まとめると、ナチス・ドイツの文脈では、
1:ラジオ(プロパガンダ)の影響力は確かにあった
2:どのように影響するかは「誰がラジオをコントロールするか」により異なった
3:プロパガンダの影響力は「聞いている人がどんな人か」により異なった
と言えるのだ。
(14/19)
71
72
演説に効果が無くてラジオに効果があるのは、単純に接触量の問題だと思うのだ。たった一回の演説よりも、毎日聞くラジオの方がプロパガンダとしての役割は大きいと思うのだ。そういう意味で、マスメディアはめちゃくちゃ重要なのだ。
(17/19)
73
74
75