ニュースレターは実験開始から一定期間後から定期的に送られたのだ。詳細は省くけど、レターは中国国内では検閲対象になるような政治的にセンシティブなニュースにアクセスするよう促すものだったのだ これら各グループのアクセス量、知識量や中国政府への態度等を一年半に渡って比較したのだ。 (4/10)
実験の結果、海外ニュースに触れるようになった学生はその他のグループと比較して色々な違いが出て、例えば中国経済や中国政府の政策をより厳しく評価するようになったのだ。「検閲で遮断されていた情報を得るとより政府に批判的になる」とも言えるけど、この実験のキモはその前段階にあるのだ (5/10)
アクセスツールを貰い、更に海外ニュースサイトにアクセスするようレターを送られた学生の大部分は実際にツールを使っていて、継続的に海外サイトにアクセスするようになったのだ。でも、ツールを貰っただけの学生は全然使わなかったのだ、やろうと思えばタダで簡単にできるにも関わらず! (6/10)
キモは「情報の主観的価値」なのだ。事前調査では、実験以前からツールを使っている学生は使っていない学生と比較して「海外ニュースは有益な情報源」と答える確率が高かったのだ。ツールを持っていなかった人が海外ニュースが有益だと考えるようになったのは「海外ニュースに触れた後」なのだ (7/10)
これは、中国政府の検閲(サイトブロッキング)が既にめちゃくちゃ上手く言っていることを示唆しているのだ。つまり、検閲下にある人は海外ニュースをそもそも重要だと考えないし “知りたいとも思わない”と言えるのだ。検閲によって市民の情報への需要をぶち壊すことに見事に成功しているのだ!! (8/10)
論文はここから読めるのだ。 sticerd.lse.ac.uk/seminarpapers/… この研究はAmerican Economic Reviewって言う経済学の世界ではトップの学術誌に掲載されたのだ。実験は匿名で行われたから学生の身の危険は無いんだけど…この話はオチがもう一つあるのだ。 (9/10)
実はこのガチ中のガチな論文、スタンフォード大学と北京大学の研究者の共同研究なのだ。もちろん中国の科研費も使われているのだ。それだけ中国政府は検閲の効果をしっかり検証したかったんだと思うのだ…。良い結果が出て政府は満足満足、中国の検閲は終わらないのだ!! (10/10)
(補足) 補足というかこぼれ話なんだけど、Great Fire Wall(中国政府によるアク禁の通称)をツールで回避して海外サイトにアクセスした学生のうち、7割以上が少なくとも1回は海外エロサイトにアクセスしていたのだ。エロは万国共通で人間を能動的にするのだ!!
気がついたらもう15個も研究を紹介していたのだ!まだまだ続けるのだ〜! アライさんのお尻と学ぶ統計学 - Togetter togetter.com/li/1342003
国家の根幹を成すのが憲法だけど、その内容は国によって様々なのだ。でも憲法は中身だけじゃなくて、「寿命」にも大きな違いがあるのだ。 一体どんな憲法が長生きし、あるいは早死にするのか?その要因に500以上の憲法を統計分析して迫った研究があるのだ。 (1/7)
実は日本国憲法は現存の憲法で一番長生きなのだ。彼らの考察によれば、日本国憲法は他国の憲法と比較して人権に関する規定がより詳細に定められ、かつ統治に関する規定がそこまで詳細じゃないから、改憲(廃止)も修正も免れてきたのとのことなのだ。 (6/7)
現在まで10年以上続くメキシコの麻薬戦争は、既に15万人を超える死者を出しているのだ。もちろん政府は麻薬カルテルを取り締まる政策を実施しているのだ。 …でももしかしたらその政策は逆に死者数を増やしていたかも知れない可能性があるのだ。今回は超大長編かつかなりテクニカルなのだ! (1/16)
論文はここから読めるのだ。 scholar.harvard.edu/files/dell/fil… この研究で使われた分析手法は「不連続回帰デザイン(Regression Discontinuity Design)」というのだ。統計学では他にも偶然を利用した手法があって、因果関係を確かめるにはとっても有効なのだ。長々と付き合ってくれてありがとうなのだ! (16/16)
独裁者は体制の安定性を維持する為に日々様々な抑圧を市民に対して行っているのだ。でも、中国の文化大革命の現在まで続く影響を分析した最近の研究によれば、弾圧は常に体制にとって「お得」な訳ではなく、かなり慎重を要するものであることがわかったのだ。 (1/12)
文化大革命はどんな影響を人々に及ぼしたか?家族や友人、隣人が政府の指示で殺されるところを見てしまった人(=暴力に曝された人々)は、政府なんかもう信用しなくなるのだ。いかに経済が成長し、暮らし向きがよくなったとしても、その不信は拭えないのだ。 (4/12)
分析の結果、文化大革命期(調査時点より40年も前!)により人が殺された地域の人ほど、中央政府への信頼が低いことが明らかになったのだ。しかもこの不信は世代を越えて受け継がれているのだ。確かに若い人ほど効果は弱まっていくけど、弾圧された地域の人はやっぱり政府を信頼していないのだ。 (6/12)
どうやって政府への不信感は継承されるのか?この研究によれば、鍵となるのは「家族」なのだ。分析の結果、「家族と政治的な事柄についてよく話す若者」ほど、過去の弾圧の影響が大きいことがわかったのだ。お家の中なら文句言っても平気なのだ!! (7/12)
論文はここから読めるのだ。 poseidon01.ssrn.com/delivery.php?I… まだどこかから出版されている訳では無いから内容は変わるかも知れないので注意なのだ。でも大枠は変わらないと思うのだ。 「中国における弾圧の効果の検証」としてなかなか面白い論文なのだ〜! (12/12)
日常でも極限的な状況でも「情報」は人間の意思決定にとって重要なのだ。現代社会では情報の多くを(マス)メディアを通じて得る訳だけど、メディアが暴力を扇動したらどうなるか?そんな問題をルワンダの虐殺とラジオの関係から考えてみたいのだ。 (1/13)
ちなみに、教育程度が高い村ではラジオの影響は小さかったことも同時にわかったのだ。単純にプロパガンダの影響を受けない判断力があったかのかも知れないけど、複数の情報ソース(例えば字が読めるから新聞が読めるとか)を持っていたことで集合的な行動が抑制された、と考えることもできるのだ (12/13)
論文はここから読めるのだ! yanagizawadrott.com/wp-content/upl… この研究の凄いところは「今までそうだと思われてきたこと」に実証的な根拠を与えたことなのだ。事実、ラジオに扇動された市民が…というよく聞く話と実情はちょっと違った可能性が示唆されているのだ〜! (13/13)
今日懲戒解雇された東洋英和女学院長(ドイツ宗教学)の研究不正問題は、 ・架空の論文を捏造 ・架空のデータを捏造 ・ついでに盗用 という役満状態なんだけど、それを徹底的に調べ上げた調査委員会の仕事が鮮やかすぎてもう逆に笑えるのだ。 toyoeiwa.ac.jp/daigaku/news/t…
日本のポピュリスト筆頭である小池百合子は、2016年に都知事となり、2017年の都議会選挙では「都民ファーストの会」は自民党を破り第1党となったのだ。 でも実は彼女らの支持者がポピュリズムに傾倒している訳ではなかったことが、最近の研究で明らかになったのだ。 (1/7)
ポピュリズムは、 1: 反エリート主義(Anti Elitism) 2: 人民主権(Popular Sovereignty)/人民重視 3: (人々の)一体性/同質性(Homogenity) を重視すると言われているのだ。サーベイではこの3つの項目(+α)に関して質問し、回答者がどの程度ポピュリズムを信奉しているのかを計測したのだ。 (3/7)
統計分析の結果、都民ファーストの会(TFP)に投票した人は、他の政党に投票した人と比較して、よりポピュリズムを信奉している訳ではないことが明らかになったのだ。各政党への好感度を見ても、ポピュリスト的な有権者の方がTFPを好き、という訳でもなかったのだ。 (4/7)