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「失敗の本質ー日本軍の組織論的研究」合理性を突き詰めざるを得ない戦争において、日本軍においては「本質にかかわりのない庶務的仕事に没頭する」ことが起きたとのこと。パワポの細部やエクセルのセルの調整などがそうだけど、我々がいかに庶務に癒されるかをよく示すエピソードである。
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フロイトが次々と考えや愛が移ろっていくさまについて「水のなかで字を書いていた」と美しい表現をしている。このツイートも含めてSNSってそんな感じで、水のなかで字を書いては、水に流されて文字が消えていく。それがまたいい。
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「かなたからかなたへと呼び声がする。呼び声に打たれるのは、連れ戻されたいと思っている者なのだ」
一見、米津玄師作詞かと勘違いしてしまうカッコ良さだが、ハイデガーの「存在と時間」の一節。哲学者はカッコいい文章を書きますな。
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大学の講義はオンライン化するわけですが、こういうときだからこそ「コロナ時代の心のケア」をテーマにするべきではないかと考え始めている。オンラインによるつながりを通じて、オンラインによるつながりを共に考える講義。みんなが当事者だからこそ、これまでの専門知の限界と可能性を考えられる。
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この本、ゲームによって子どもの暴力性が引き起こされることはあまりなく、むしろ家族が「力づくで」ゲームをやめさせようとすることで、家族への反抗心が強まり、孤立や暴力に至ると書かれている。ゲームそのものではなく、ゲームをめぐる人間関係に暴力が宿っている。 twitter.com/ktowhata/statu…
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同じことをグルグル考えているとき、絶対に答えが出ない気がするけど、実際には半年や一年単位で違う風に考えるようになるものです。思考とはカタツムリのようで、研究もカウンセリングもそういう営みだと思う。問題は考え続けることが難しいことなので、同じことを話せる相手がいるのには価値がある。
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「心の革命」。フロイトとユングの決裂が、街中のクリニックと精神病院という働く場所の違いであり、見ている患者の違いであったことが見事に描かれてる。心理学理論は本質的に特定の人たちの心を描いたローカルなものなのに、普遍的な人間心性として語られがちであることの悲劇。
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以前書いたけど、日の目を見ずに夕闇へと消えゆかんとするエッセイが発見されたので、ブログに載せました。
「心は太陽が南中しているときには目立たない。心は光の中ではなく、影の中に宿る」という河合隼雄論。
「夕闇の心理学―河合隼雄と小室哲哉」
stc-room.blogspot.com/2021/01/blog-p…
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河合隼雄が「変わるも変わる、人生が360度変わりました」とクライエントが言ったと書いてたけど(確か)、これは人生が1ミリ変わったことの逆説的な表現です。「人が変わる」は結構みんな知ってはいるが、表現するのはとても工夫がいる。この1ミリを描くために文学がある。 twitter.com/ktowhata/statu…
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熊谷晋一郎さんが、分断されているコミュニティ同士が連帯するには、そのコミュニティの中心人物同士ではなく、むしろコミュニティの周縁にいる人同士で語り合いを始めることが大事だと言っていて、納得。確かに民俗学や人類学でも、通商とか交易は周縁の民が担っていると語られていた。#TICPOC
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受験における親子関係の難しさは、受験というものが社会秩序の根幹で機能しているので、親も直接間接に受験によって傷ついたり、プライドを得たりしていることによる。そのことで、受験をめぐっては、生々しい感情が立ち現れやすい。そのあたりが、運動会とか部活の勝ち負けと受験の勝ち負けは異なる。
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小説というのは葛藤の芸術で、AかBか、右か左か、白か黒かで、身動き取れなくなった主人公が、結論を保留にして、運命に身を任せる中で、Cっていう新しい世界の見方に開かれていく。この時間と偶然による思索の深まりというのが、学術書では太刀打ちできないし、僕らの実生活もそんな感じで流れてる。
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「涙は極度の悲しみからは生まれないが、ただ、なんらかの愛あるいはまた喜びの感情を伴ったり引きずったりする中くらいの悲しみから生じる」
これもデカルトの言葉だが、正鵠を得てる。悲しいことを涙するためには、もう泣いても大丈夫なくらいには、良いものが手元にないといけない。
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オンラインのつながりは清潔だ。飛沫は飛び散らず、臭いもしない。だからウイルスは感染しない。比べるとリアルなつながりはなんと不潔だったことか。しかし、その不潔さにこそ他者のリアリティがあり、心を支える力があった。「昔はよかった」ではなく、オンラインは不潔になりうるかという問いとして
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心理療法は前景に「心」があるが、後景には常に社会がある。つまり、時代の問題や社会の歪みがある。前景だけを語れば普遍的な人間の心性が浮かび上がるけど、後景を語ればローカルな営みが見えてくる。もちろん、両方必要だが、この20年は前景重視で、後景を語る言葉が貧しくなっていたのではないか。
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この前聞いたいい話。親密性とは何か?それは震度2の地震があったときに、「地震あったね、大丈夫だった?」「大丈夫、そっちは?」「こっちも大丈夫」と絶対大丈夫なのに、気遣う話ができる関係性。逆に孤独だと、震度2の地震は、なにも起きなかったのと同じことになってしまうのだとのこと。
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ケアについての講義をしたら、学生がリアクションペーパーでの感想で「ケアは優しさではなく、賢さから生まれる」と書いていた。けだし名言。
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臨床心理学増刊号「心の治療を再考する」出ます。僕は編集も担当したのですが、渾身の一作です。心の治療について、人類学や宗教学など人文知はさまざまな分析をしてきたわけですが、それらの蓄積を一望し、かつ臨床家の応答も寄せられた特集になります。目次は以下のリンク
kongoshuppan.co.jp/smp/book/b6083…
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ゴールデンウィーク10連休、過剰に「居る」がある日々を前にして、みんな何を「する」かに悩まされているわけですが、これこそまさに「居るのはつらいよ」状態。したがって、覚悟を決めて、「居る」を決め込んで、贅沢な退屈を堪能するのが吉ですな。
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バズフィードさんに取材をしてもらいました。葛藤を抱えることや依存の価値について、そのより広い文脈を記事にしてくれました。お時間あるときにでもご覧ください。
だから、あえて「居るのはつらいよ」と言葉にする。葛藤を抱きながら生きるために
buzzfeed.com/jp/yutochiba/i…
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読了、素晴らしかった。ゲームそのものではなく、それをめぐる親子のコミュニーケーションの方に問題があり、改善の余地があるという視座で一貫している本。ゲーム機は親が子に貸すという形式が良いが、サンタクロースがそれを妨害するので、サンタにはソフトの方を任せるといい、という話は特に良い。 twitter.com/ktowhata/statu…