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谷川俊太郎の「色」という詩がすごかった。「希望は複雑な色をしている」という一文から始まり、「裏切られた心臓の赤」とか「日々の灰色」とか「原始林の緑」とかあまり希望っぽくないカラフルさが列挙され、「絶望は単純な色をしている 清潔な白だ」で締められる。確かにそんな感じがする。
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レンタルさんとの対談が記事になっております。「遊び」がいかに人生を支えるか、あるいはガチとエンタメなどについて話しています。
この社会はガチすぎる…「レンタルなんもしない人」が求められる理由 @gendai_biz gendai.ismedia.jp/articles/-/664… #現代ビジネス
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10連休(人によってだけど)というのはたしかに破壊力があって、普段仕事があることによって、見ないで済んでいたプライベートな問題に目を向けざるを得ないくらいの長い時間ですね。働くことを問われ続けた平成の終わりにふさわしいのかもしれない。
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宮崎市定「科挙」を読むと、昔から子供が勉強するのを嫌がってくると、大人たちが「今頑張れば、将来最高だよ」と励ましていたことがわかる。その結果、科挙に通ると汚職をしまくるわけであるから、欲望を後回しにし続けると、何をしても満たされぬ欲望となって暴走してしまうのではないかと思いますな
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ある編集者から書き手には若き天才が綺羅星の如くいるけど、若き天才編集者というのは稀有だと聞いた。書く能力と違って、読む能力というのは経験抜きにはどうしても成り立たないということ。大量の物語に触れることでのみ育つ心の器みたいな感じ。これは喋る能力と聞く能力にも言えることだと思う。
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彼氏にお金を貢いでしまう「課金彼氏」についての卒論。当初はお金を出すことで彼氏をコントロールしようとしていたのが、気づけばお金を出すよう彼氏からコントロールされるようになっているというプロセスが描かれていて大変面白い。お金にはコントロールの魔力が潜んでいることがよくわかる。
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ファンタジー小説だと、呪いの解き方は、呪いをかけた人の名前を言い当てることなのだけど、これは学問でも同じ。誰の呪いで、それがどのように思考を制限しているかを明らかにできると、呪いは解ける。つまり、多くの場合、自分が何の呪いにかかってるのかがわからないのが、呪いの恐ろしいところ。 twitter.com/ktowhata/statu…
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マレーでは呪術をかけられたら、相手に呪術をかけ返すしか対処法がなかったらしい。これは「目には目を」の精神で不穏に見えるが、実は報復を呪術に限定することで、物理的暴力や経済的制裁を防ぎ、村の平和を守るためであったとのこと。確かに呪いには直接的行動に出ない、という人間的抑制がある。
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哲学は健康に良い。ただし、埃をかぶった図書館の書庫ではなく、体育館で哲学をしている限りは。というのが古代哲学の姿勢だったそう。つまり、かつての哲学にはエクセサイズがあって、それを通じて苦しい日々を生きることに役に立つものとしてあったという話。近代には見失われたガチの臨床哲学です。 twitter.com/ktowhata/statu…
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「ものはなぜ落下するのか。地球の中心が『本来の居場所」だから。なぜ次第に落下速度を早めるのか。旅人が故郷に近づくと足取りを早めるのと同じで、喜びに興奮するから」
バーマン「世界の再魔術化」による、ガリレオ以前のアリストテレス物理学の世界観なのだが、なんかいい。彩りがある。
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「はてしない物語」とかはまさに心の個室にこもることを描いた本であり、かつ読むと個室にこもれる本だから凄いな。
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「視点・論点」で話した「新型コロナは心にどう影響したのか ~奪われたケアについて~」がテキストになっています。
コロナが心に与えた影響は「間接的」であったこと、そして先送りと誤魔化しが、心にとって実に貴重なものであったことについて。
nhk.or.jp/kaisetsu-blog/…
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「スッキリする」って良いことのように言われていて、確かに気持ちいいのだけど、実はスッキリとは葛藤を投げ出して決着をつけてしまうということでもあります。だけど、高野秀行さんが「葛藤が続く限り、青春は続く」と名言を残していたように、葛藤は多くのものをもたらしてもくれるものなのです。
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「火事場のクソ力」のように、身体は追い詰められると凄い力を発揮することもあるが、心は追い詰められると基本フリーズして、自由に動かなくなる。心によい動きをしてもらうためには、なんなら働かないでもいいくらいに、ふんわりした環境が必要だと思うけど、働かす側はなかなかそう思わないですな。
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朝井リョウが週刊文春の「私の読書日記」で、小説家は古今東西のどんな人間でも登場人物として描くことができるが、自分より頭の良いキャラだけは描けないと書いていて唸らされる。「人間を描くとはどういうことか」という本質的な問いだ。あるいは人は神を描けないという限界性の話でもある。
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カウンセリングとコーチングの違いについての記事で面白かった。付け加えると、カウンセラーは人間の心のネガティブな領域ー例えば自己破壊性などーを扱う訓練を受けているように思う。それは普通の人間関係やセルフケアだと手に余る部分で、「専門性」が必要なところ。
note.mu/marisakura/n/n…
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出典はミュリエル・ジョリヴェ「日本最後のシャーマンたち」面白い本です。
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三島由紀夫が亡くなったのは45歳だけど、この年齢の前後くらいに多くの作家の代表作が書かれている。夏目漱石の「こころ」は47歳、遠藤周作の「沈黙」は43歳、村上春樹の「ねじまき鳥」は45歳。経験と体力のバランスが絶妙なのがこの時期なのだろうか。人生100年時代だと、まだ半分も来てないのになあ
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「何でも話せる友人が一人いるかいないかが、実際上、精神病発病時においてその人の予後を決定するといってよいくらいだ」と中井久夫が言っているように、友達というのはメンタルヘルスケアの最重要ファクターの一つだと思うんですね。今度出る「聞いてもらう技術」本も本質的には友人論になってる。 twitter.com/shintak400/sta…
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「お金にならないけど素晴らしいこと」が世の中には色々あると思うのだけど、それを収益化しようとした瞬間にその素晴らしさは消し飛んでしまう。だけど、「お金にならない」と継続するのが難しいし、徐々に虚しくなりやすい。「お金にならない」にかかっているこの深い呪い。
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森本あんり「不寛容論」とても面白かった。アメリカ草創期の宗教的迫害の歴史を追いながら、寛容とは「しぶしぶ」するものであり、つまり不快さに耐えながらなされる努力であり、そのために必要なのは相互の礼節であったという話。寛容な忍耐のためには、気持ちをどうこうするより、礼儀が役に立つ。
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色々と読み比べてみて、自己啓発本は「心を一つ」に集約する技術書なのだと結論。心が複数あると「〇〇したいけど、でもやっぱり」と葛藤が生じるが、心が単数だと迅速な行動が生じる。ただし、葛藤からは物語も生まれるから、ビジネスは単数の心に、文学は複数の心に、ということなのかもしれぬ。
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「自分らしく生きる」という言葉には、どこかポジティブな感じがある。しかし、この言葉の前提には「あの人みたいには自分は生きられない」という幻滅と諦念がある。あの人と自分は違う。この痛みや悲しさを消化した果てにこそ「自分らしさ」の本質がある。ネガティヴの中のポジティブなのだろうな。