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学生がホラー映画を見まくって、心理士・精神科医がどう描かれているのかを卒業研究で調べたのですが、彼らが人間らしい側面を見せてしまうと、殺されたり、大怪我を負ったりすることが多いという大変味わい深い結果を得ました。
あと、ブルーのシャツを着ていることが多いとのことでした。
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アメリカのある先住民では、「うつ」がそれ単体では病気でないという話も面白かった。落ち込みや悲しみを部族と分かち合ってる限りはそれは正常なプロセスで、人に話せなくなり、悲しみを一人で所有しているのは病いと捉えられる。心は人々の間を回遊してるのが自然で、個人に閉じ込められると病気。 twitter.com/ktowhata/statu…
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成功体験によって自己肯定感が上がるというのはよく言われていて、それもそれでそうだと思う。ただ、実は失敗体験について、自分ではなく、環境や社会に問題があったと気がつくことの方が自己肯定感にとっては大事なのではないか。自己賞賛を高めるよりも、残酷な自己批判を和らげる方に本質がある。
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「将来の夢」についての卒論。面白かったのは子供たちが夢を語ったり、発表したりするとき、「自分のレベルにあった夢」を言わねばならぬという強い圧力を感じていること。夢みたいな夢を語ると人の目が怖いので、夢を語るためには現実を見ないといけないという諦めの装置としての夢教育。いや悪夢か。
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コロナのストレスについて授業でアンケートを取った。恋人や家族など親密な人との間で、衛生意識が違うことが多く挙げられていた。どの程度外出自粛するかの感覚が違うことで、カップルが別れたり、家族で争いが生じる。言葉で話し合うことが最も難しいのが清潔さと不潔さ、安全とリスクの感覚。
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以前、学生が「アイドルに裏切られるとき」という卒論で、裏切られたファンがいかにして自分の「信じること」を再生していくかを書いていたのだけど、逆に言えば宗教が難しい現代人はもはや「ファン」という形でしか自らの宗教性や「信じること」へのニーズを満たせないということなのかもしれない。
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これは大事な記事。僕らはしばしば、恥ずかしさによって、頼れるはずのものに頼れなくなってしまう。
うつ病告白のいしだ壱成 「恥ずかしいことじゃない」周囲の助言きっかけに生活保護受給(スポニチアネックス)
#Yahooニュース
news.yahoo.co.jp/articles/544df…
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もらうだけでありがたい気持ちになるようなメールを連発できるのを「メール力」という。これは文章力がすごいように見えて、本当は類稀なる事務能力の賜物。科挙で詩作が問われたり、平安時代の官僚が短歌で競ってたりするのと同じで、事務能力の本性は文書作成力であり、その根底にはポエジーがある。
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グリンカー「誰も正常ではない」、心の病の名指し方がいかに人々の意識に影響を与えるかの人類学で面白い。ネパールの僻地では「メンタルヘルス」と看板を出すと患者がこないが、「慢性頭痛」と看板を出すと不安や抑うつに苦しむ人がたくさんやってくるという。文化に合わせた心の翻訳の話。
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スマホも本も持たずに、一人で15分黙って座っていてもらうという実験。かなりの人数が6分たったくらいで、退屈のあまりに自分に電気ショックを与えるようになったらしい。実験前には「電気ショック?そんなバカなボタン押すはずがない」と言っていたにもかかわらず。いかに一人になれないかの実験。
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受験本を色々と読んで、共通しているのは「親が勉強を教えるのは難しい」ということ。それは勉強の難易度の問題ではなく、人間関係が傷つきに満ちてしまうという難しさ。実の子どものカウンセリングや外科手術が難しいのと同じ。親が教師になると、子は身近に教師を得るが、「親」を失ってしまう。
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「自己肯定感」って心理学的な言葉で、それを心理学的介入によって改善しようという意図をもつ言葉と思うが、実は「自己肯定感」の低さを「心のせいではなく、社会のせいだ!」と怒ったり、悲しんだりしたときに初めて、自己肯定の回復が訪れることはままある。これも心理学のパラドックス。
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そう思うと、出版不況というが、本というメディアはこの世の終わりまで残り続けるんじゃないか。他者とつながるためのメディアはたくさんあるけど、自分とつながるためのメディアってとても少なくて、そういう欲求は人間である限りの消えることがないはず。
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藤子不二雄Aさん。締め切りを破ったことで出版界から干されたという氏のエピソードに絡めて、僕は締め切りが怖いから2週間前には原稿を出すのだ、と連載に書いたら、お手紙を下さった。2週間は早すぎ、締め切り二日前くらいがちょうどいい、という激励の手紙でした。ご冥福をお祈り申し上げます。
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「普通の家族で育った」と思っている人がいかに傷ついてきたのかの卒論。そこでの傷つきは主に親の言葉によって生じるもので、それはその後の人間関係の消極性と繋がる。しかし、「経済的に支えてくれたから」という理由で「普通の家族」と思うのだとのこと。「普通」によって隠蔽されるものの話。
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これ、チンパンジーでもそうだと聞いたことがあります。遊びは集団の緊張を和らげるためになされるので、正体不明の新人がやってくると「遊ぶ」。付き合いたてのカップルがカラオケとかボーリングとかで遊ぶのは不安だからで、本当に信頼できると遊ばなくても一緒にいられる。 twitter.com/MajimeShunsuke…
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心の万能薬としての「時間をかける」。具体的には「寝る」と「様子を見る」に尽きるが、案外難しい。不安なときには、悪しきことが起こりそうで、時間が恐ろしく感じられるからだ。したがって、「とりあえず様子を見よう」と言ってくれる誰かがいると心強い。不安は分け持たれると、時間に耐えうる。
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重い指摘。今進んでいるメンタルヘルスの自助化や互助化は、新しい魅力的な実践を生み出しているわけだけど、それが公助(つまり国による支援)削減のアリバイとされてしまう危険性。人々が自前で「社会」を充実させることが、国が「社会」を維持することから撤退する理由とされないようにしないと。 twitter.com/yasuhikomuraka…
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「自分の頭で考えろ」とよく言われるが、これは呪いのようなところがある。自分の頭で考えているか、人の言ってることを鵜呑みにしてるかは判別つきにくいし(というか混ざってるのが常だし)、なにより「自分の頭で考えろ」という人は、しばしば自分と同じように考えると喜び、そうじゃないと怒る。
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心理学用語を乱用して、意味がありそうで意味がないことを語ることを「サイコバブル psychobabble 」と言うらしいのですが、優れた言葉。大学院とかで勉強し始めたくらいのときに、ひたすら全てが心理学用語で説明できる気分になって、サイコバブってましたね。楽しいんですよね、バブってると。
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心理学にせよなんにせよ世の中にはすでに十分過ぎるほど文献があるので、何を書いても全く新しいことを言えることはないのだが、それでも何かを書くことに意味があるのは、それが自分サイズの言葉を作る行為だからではないか。教科書や先生の言葉ではサイズ感が合わないから、手に馴染む言葉を作る。
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普通に暮らせる給料を得ながら、社会にとって善きことをなそうとした若者が、理想を持つことを愚かだったと思い、他者のことを考えようとするなんて甘かったと絶望してしまう。労働力の基準では換算できない深い損失のはずなのに。
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中学受験の合格発表の場で、大学受験の業者がチラシを配っているのを見るとつらい。マラソンのゴールの瞬間から次はトライアスロンを始めようとするようなもの。受験はたとえ受かったとしてもダメージがあるわけだから、しばらく休ませてあげてほしい。進学校の中1にいかにうつっぽい子が多いことか。