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三島由紀夫が亡くなったのは45歳だけど、この年齢の前後くらいに多くの作家の代表作が書かれている。夏目漱石の「こころ」は47歳、遠藤周作の「沈黙」は43歳、村上春樹の「ねじまき鳥」は45歳。経験と体力のバランスが絶妙なのがこの時期なのだろうか。人生100年時代だと、まだ半分も来てないのになあ
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この前授業で「自分を好きになるにはどうしたらいいですか?」というベタな質問をされたのだけど、自分という曖昧なものを直接好きになるのは至難の技だから、先に他者を好きになった方がいい。それは嫌いな自分を和らげる。とはいえ、リアルな他者を安定して好きでいつづけるのも大変なのだけど。
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長く続く非常事態は気が張って高揚するので、調子は見えないところで崩れやすい。気づかれにくい躁や鬱がうごめく感じ。だから、「いつも」を知ってる人とお互いの「ちょっとおかしくなってる部分」を話し合えると良い。顔を合わせなくてもできる、テキストメッセージによるセルフケア。
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色々な業界を見てて思うのが、若手を育てるために年長者がなすべき最も重要なことは、雇用を作ることですな。教育プログラムや訓練ももちろん大事だけど、きちんと生活することができて、学んでいるものを実践する仕事があることが、若手を育てる。雇用なしの教育はしばしば搾取のようになりますし。
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昨今あまり語られないのは、カウンセリングには長い長い話を聞く仕事という側面があること。できるだけ長く(つまり、複雑な話を複雑に)話してもらうためには、ときに専門的な知識や技術がどうしても必要になるが、長い長い話には心を支える深い力がある。ただファスト文化は長い話の価値を見失いやすい
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勉強より研究が好きなタイプと、研究より勉強が好きなタイプとふた通りいる気がする。研究者タイプと学者タイプ。そして、勉強と研究の両方をやらないといけないのが大学院生で、だから結構楽しい時期なのだろうな。大学への関わり方で、一番いいポジションは院生なのではないか、とよく思う。
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新刊「なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない」が3月16日に出ます!現代におけるカウンセリングとかセラピーについて真正面から考えた本であり、そして読者にとって「読むセラピー」になればと願って書いた本です。
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「心が病む」というとき、心は基本的に二人称なのではないか。世の中には様々な苦悩があるが、そのほとんどが他人からもたらされるか、「他人がいない」ということからもたらされる。他人は万病の元だが、同時にその万病の薬でもあるのが面白い。
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末木新「自殺学入門」面白い。動物は自殺するのかという章で、カマキリのオスが交尾中にメスにわざわざ食べられる自殺のような行為をするのだが、それはメスはオスを食べている間は他のオスと交尾をしないからなのだそう。命を捧げることで支配するという生命の神秘というか恐ろしさを感じる。
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書けないというのは基本的には「よくわかってない」ということなので、考えを深める必要があるが、考えようとして考えられるくらいなら書けてるはず。だから、本を読む。本とは人が代わりに考えてくれたプロセスそのものなので、1人では考えられないことを考えることを可能にしてくれる。
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上野千鶴子氏が「ケアという商品は価格とクオリティが連動しない」と書いている。確かに、大変評判がよくて超高額の介護施設も、スタッフが入れ替わると、評判が悪くて超高額の施設に容易に変わってしまう。ケアはシステムや施設ではなく、人に属す。そして人にはどうしても金に属せないときがある。
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「私たちはコロナの時代に孤独になったと言われますが、それはコロナが孤独をもたらしたのではなく、以前から存在していた孤独を誤魔化しようがなくなってしまったということだと思うのです」
ここが一番言いたかったことかもしれない。 twitter.com/ktowhata/statu…
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「私は淋しい人間ですが、ことによるとあなたも淋しい人間じゃないですか。私は淋しくても年を取っているから、動かずにいられるが、若いあなたはそうは行かないのでしょう。動けるだけ動きたいのでしょう。動いて何かにぶつかりたいのでしょう」
言うまでもなく、夏目漱石の「こころ」だが、至言だ。
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「火事場のクソ力」のように、身体は追い詰められると凄い力を発揮することもあるが、心は追い詰められると基本フリーズして、自由に動かなくなる。心によい動きをしてもらうためには、なんなら働かないでもいいくらいに、ふんわりした環境が必要だと思うけど、働かす側はなかなかそう思わないですな。
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重い指摘。今進んでいるメンタルヘルスの自助化や互助化は、新しい魅力的な実践を生み出しているわけだけど、それが公助(つまり国による支援)削減のアリバイとされてしまう危険性。人々が自前で「社会」を充実させることが、国が「社会」を維持することから撤退する理由とされないようにしないと。 twitter.com/yasuhikomuraka…
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ポジティブ心理学もアンガーマネジメントもそうなのだけど、感情の中に明確に善と悪を設定すると組織の研修に受け入れられやすく、そこをフラットにして色々な気持ちがあっていいじゃないかとなると、個人心理療法的になる。個人であるとは、感情のレベルで自由であることなのだろうな、と思う。
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世の中には本が溢れているので、知らない分野について検索をかけても、どれがきちんとした本なのか判断するのが難しい。そういうとき、以下の大学図書館を検索できるサイトは便利。ここで多くの図書館に収められている本は信頼がおけるので、Amazonで探すより断然効率がよい。
ci.nii.ac.jp/books/?l=ja
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出典はミュリエル・ジョリヴェ「日本最後のシャーマンたち」面白い本です。
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「ど素人でも三日で心理カウンセリングをマスターする技術」を読んで思ったが、実際テクニック自体は三日でマスターできるようなものなのかもしれない。問題は心理学的に理解することを習得するのに、大変長い時間がかかること。そして、理解を伴っていない技術は全く役に立たないこと。
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フロイトが次々と考えや愛が移ろっていくさまについて「水のなかで字を書いていた」と美しい表現をしている。このツイートも含めてSNSってそんな感じで、水のなかで字を書いては、水に流されて文字が消えていく。それがまたいい。