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人は孤独になると「おかしなこと」をしてしまう。だけど、周囲は「おかしなこと」をしてるんだからと、より孤独に追い込もうとしてしまう。そして、より「おかしなこと」をせざるを得なくなってしまう。ここが悲痛なところです。
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心理学用語を乱用して、意味がありそうで意味がないことを語ることを「サイコバブル psychobabble 」と言うらしいのですが、優れた言葉。大学院とかで勉強し始めたくらいのときに、ひたすら全てが心理学用語で説明できる気分になって、サイコバブってましたね。楽しいんですよね、バブってると。
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ある編集者から書き手には若き天才が綺羅星の如くいるけど、若き天才編集者というのは稀有だと聞いた。書く能力と違って、読む能力というのは経験抜きにはどうしても成り立たないということ。大量の物語に触れることでのみ育つ心の器みたいな感じ。これは喋る能力と聞く能力にも言えることだと思う。
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スクールカウンセラーの知人に聞いたのだけど、6月と11月に仕事が凄く忙しくなるとのこと。それは勿論調子を崩す生徒が多くなるということなのだけど、やはり人間頑張れるのは2ヶ月くらいが限界なのかもしれない。そこからはケアされながら不調をしのいで、ギリギリ休みに逃げ込めるのが健康なのかも。
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朝井リョウが週刊文春の「私の読書日記」で、小説家は古今東西のどんな人間でも登場人物として描くことができるが、自分より頭の良いキャラだけは描けないと書いていて唸らされる。「人間を描くとはどういうことか」という本質的な問いだ。あるいは人は神を描けないという限界性の話でもある。
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オンライン授業で失われるのもケアだ。オンライン授業にたどり着くためのケアをオンラインでするのは至難の技だ。おせっかいや親切が不可能になって、学生は自分で自分の環境を整えなくてはいけなくなる。「対面」とはヘルプに開かれている空間だったのだと、今になってわかる。
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「居るのはつらいよ」が大佛次郎論壇賞を受賞しました。この賞は過去に、国際関係など大きな社会の問題を扱った著作に贈られていますが、小さな場所で行われているケアの本がその対象になったのは意味深く感じています。応援いただいた方々、深く感謝申し上げます。asahi.com/articles/DA3S1…
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マレーでは呪術をかけられたら、相手に呪術をかけ返すしか対処法がなかったらしい。これは「目には目を」の精神で不穏に見えるが、実は報復を呪術に限定することで、物理的暴力や経済的制裁を防ぎ、村の平和を守るためであったとのこと。確かに呪いには直接的行動に出ない、という人間的抑制がある。
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ちなみに心が回復したことを示す写真を撮ってきてくれと頼むと、笑顔の写真とか、仲間と楽しんでる写真が出てきそうなものだが、ネパールだとヤギの写真を持ってくるのだそう。ヤギを飼えることが健康であるという文化。これは結局労働と心の健康の結びつける思想であり、考えさせられる。
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「自分らしく生きる」という言葉には、どこかポジティブな感じがある。しかし、この言葉の前提には「あの人みたいには自分は生きられない」という幻滅と諦念がある。あの人と自分は違う。この痛みや悲しさを消化した果てにこそ「自分らしさ」の本質がある。ネガティヴの中のポジティブなのだろうな。
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「ものはなぜ落下するのか。地球の中心が『本来の居場所」だから。なぜ次第に落下速度を早めるのか。旅人が故郷に近づくと足取りを早めるのと同じで、喜びに興奮するから」
バーマン「世界の再魔術化」による、ガリレオ以前のアリストテレス物理学の世界観なのだが、なんかいい。彩りがある。
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これは大事な記事。僕らはしばしば、恥ずかしさによって、頼れるはずのものに頼れなくなってしまう。
うつ病告白のいしだ壱成 「恥ずかしいことじゃない」周囲の助言きっかけに生活保護受給(スポニチアネックス)
#Yahooニュース
news.yahoo.co.jp/articles/544df…
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ヴァージニア・ウルフは「女性が小説を書こうと思うなら、お金と自分ひとりの部屋を持たねばならない」と言い「ドアの鍵は自分のことを考える力のたとえ」と書いた。これはオンラインカウンセリングにあってもリモートワークにあっても真理だ。他者の世話から解放され、自分を世話する環境を得る難しさ
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吉川ばんび「年収100万円で生きる」とてもよかった。特にあおり運転をする男性が仕事も家庭もつらい状況で、ハンドルを握ってるときだけ自分の人生をコントロールできている感覚があるがゆえに、それを邪魔されると攻撃的になってしまうエピソードは考えさせられた。いかに日々がコントロール不能か。
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哲学は健康に良い。ただし、埃をかぶった図書館の書庫ではなく、体育館で哲学をしている限りは。というのが古代哲学の姿勢だったそう。つまり、かつての哲学にはエクセサイズがあって、それを通じて苦しい日々を生きることに役に立つものとしてあったという話。近代には見失われたガチの臨床哲学です。 twitter.com/ktowhata/statu…
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「はてしない物語」とかはまさに心の個室にこもることを描いた本であり、かつ読むと個室にこもれる本だから凄いな。
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オンライン幼稚園という話を聞いた。ただパソコンをzoomに接続しておくと、子供同士でおもちゃを自慢したり、なぞなぞをしたり、勝手に遊び始めるのだという。面白いのは、大人がzoomをやると1人ずつしか喋らないけど、子供は好き勝手にしゃべるところ。オンラインの斬新な使い方を子供から学べる。
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三月に出る本のゲラが来る。編集者の提案通り、接続詞を取ってみると、文章が小川のように流れるので、衝撃を受ける。「だから」「しかし」は、書いてるときにはどうしても必要に思えるのだが、実際には散乱した瓦礫のように流れをせき止めている。文章は本来、ポンポン置いとけば流れるという学び。
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衝撃的。正常な心理状態ではいられない事態を受け止め、扱うことが如何に難しいかが全く想像されてないと感じる。心というものは時に正常心理の範疇から大きく外れて動くことがあるから専門性が必要なのだけど、そういうことは正常心理で対応可能な日常を送っていると理解が難しいのかもしれない。 twitter.com/emil418/status…
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普通に暮らせる給料を得ながら、社会にとって善きことをなそうとした若者が、理想を持つことを愚かだったと思い、他者のことを考えようとするなんて甘かったと絶望してしまう。労働力の基準では換算できない深い損失のはずなのに。
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ラポール(信頼関係)について、それは支援の前提であり、最初にラポールを作るべしと語られがちだが、まだなんの役にも立っていない専門家を信頼することができようか。ラポールとは「ひとまず役に立った」ときに形成されるもので、そのために専門家は問題の整理や環境調整を最初になさねばならぬ。
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卒業式のない卒業。子ども達がうまく心に折り合いをつけられるといいのだけど。儀式は形式主義的だから、なくても良いもののように思えるけど、実際には人生の別のステージに移るときの不安定な心をフワッと包み込んでくれるもの。みんなと一緒に「儀式すること」が、人生の移行を支える。
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「お金にならないけど素晴らしいこと」が世の中には色々あると思うのだけど、それを収益化しようとした瞬間にその素晴らしさは消し飛んでしまう。だけど、「お金にならない」と継続するのが難しいし、徐々に虚しくなりやすい。「お金にならない」にかかっているこの深い呪い。