126
こういう手法を会話の一部に少し取り入れるだけでも変化はあるはずだし、そうするとこちらのモチベーションも高まり、手法をさらに学ぶことで会話運びが上手くなり……、という相乗効果が期待できる。
患者さんのためにも、医療者自身の精神衛生のためにも、本書を勧める。
amzn.to/3MTeE9x
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これは障害の有無にかかわらず、強く意識しないといけないと思う。
育児での役割は、無意識のうちに固定してしまう。そして、「主担当」「副担当」で分けると、たいていは上記のように副が負担の少ないほうに固定しがちなのではなかろうか。
これ、意識するだけじゃダメ。
強く意識する必要がある。
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「無意識の松葉杖」の典型パターンは、診察室でのこんな会話だ。
「お仕事は何を?」
本人「営業です」
父「何の営業とかあるでしょ」
本人「あっ、車です」
「土日は何を?」
本人「ぼーっとしてます」
母「買い物行ったり、洗濯手伝ったりするでしょ」
本人「あっ、うん。買い物とか洗濯とか」
続
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依存症の人たちには、子どものときに身につけるべきだったスキルが欠けている人が多い。
そのスキルとは何か。
挨拶、お礼、謝罪
ではない。
そういう社会的マナーは問題なく身につけている人が多い。
彼らに欠けているのは、「NOと断るスキル」だ。
続
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薄く関連する話として、ブックオフのことを書く。
ブックオフがなぜこうも受け容れられたかというと、古書店に古本を持っていって「値踏み」されるときの居心地の悪さをなくしたから。破れてさえいなければ、どんな本でも引き取る。それも明るく。
故・坂本社長がそんなことを語っていた。
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祖父母は農家だったし、叔父が継いでいるが、こんなことはまったくない。
帰省すると採れた野菜や果物が食卓に出てくるし、帰りにもらうことも多いが、それらは市場に出せないもの(叔父は「クズみかん持ってけ」などと言う)だ。
農業は仕事だ。
より高く売れるものを自家消費なんてしない。 twitter.com/fujitatakanori…
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重病で入院しているパパやママについて、
「◯◯ちゃんがお利口にしてたら帰ってくるよ」
などと励ますのは良くない。
もしもそのまま亡くなったら、その子はその死を誰の責任と考えるだろうか?
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岩永直子さんからブロックされているんだけど、気に入らないことがあると些細なことでも手あたり次第にブロックしている人にフラットな意見が集まるとは思えないし、その状態でなるべく正確中立公平な情報発信をできるとも感じられないので、彼女発の記事はほとんど読まなくなった。
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相手の話をネガティブに解釈する患者さんがいる。
「検討します」と言うと「ダメってことですか?」。
あることについて尋ねられ、「諦めたほうがいいとも、諦めるなとも言えない」と答えると「諦めろってことですか?」。
さて、どう返しているか。
「僕は、なんと言いました?」
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高齢といっても、中学生には高齢に見えただけなのかな?
正確には美術ではなく技術・家庭の先生で、たしか本来の技術の先生が病欠されたときの代打で、定年過ぎた先生だった。
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我が家で考えると、俺が三姉妹をみて、7ヶ月の長男を妻がケアすることになりがち。だから、なるべく長男をみるように強く意識する。
もしも、役割負担の大小がいまいち分からないという人がいたら、配偶者にこう声をかけてみてはどうだろう。
「今日は役割を交代しよう」
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「ありがとう」を言う言わないの話題に入るなら知っておいてほしいのが、ひたすら「ありがとう」を言うだけで、言われる機会がほとんどない・皆無という人がいるということ。
だからなんだ、と言われたらそれまでなんだけど、「だからなんだ」というその空気が俺なら辛いだろうなと思う。
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我が家には4人の子どもがいる。
自分の子、かつ家の中でさえ、「あれ? 三女ちゃんはどこ?(トイレ)」「長男くんは!?(机の下)」と見失いヒヤッとすることがある。
まして他人の子。常に完全把握するのは無理。
だから名簿で確認するなどのシステムが絶対に必要。
www3.nhk.or.jp/news/html/2022…
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学校を卒業するまでは、両親によるこうした「無意識の松葉杖」に支えられ、「ちょっと反応の遅い子」くらいの評価で切り抜けられたのが、松葉杖のない環境に置かれることで困難が見える化する。
続
140
一番最初の会話、せっかく「ダイエットと健康のため」と患者さんが言っているのに「いいですね」と承認しているだけなので、これは惜しいやりとりだった。
「ダイエットと健康のためですか、いいですね。何かそう考えるキッカケがありましたか?」
ここまで尋ねれば、動機が意識されて良かった。
141
介護する家族が、要介護者自身のことを「イヤだな」と思い始めたら、それは愛しつつ手放すときがきたサイン。
尊敬するベテラン内科医の言葉。
142
ナチスからユダヤ人を匿った人たちの調査で、彼らも、彼ら以外も親から「人にやさしく」という教育は受けていたが、少し内容が違っていた。
匿わなかった人が「やさしくしなさい」と行動を教育されていたのに対して、匿った人たちは「やさしくできる人でありなさい」と人格への教育を受けていた。
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60%の力で、全力投球。
「日常業務は60パーセントの力でこなす」
これがモットー。
トラブル発生時のための余力を用意しておくということ。
同時に「平時の日常業務くらいは60パーセントの力でこなせるようになろう」と心がけることでもある。
続
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職員を恫喝するような人はみない。たとえ俺に対しては礼儀正しくても。
その逆は、みる。
診察室では言いたい放題でも、受付や電話で最低限のマナーを守る人なら、みる。
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夕方に電話をかけてきて、すぐにでも入院したいという本人、今すぐ入院させてほしいという家族。その日の対応は無理なので、翌日午前に入院手配。
いざ翌日になると、両者とも「やっぱり大丈夫」でキャンセル。
ところが、その日の夕方になると両者して「今すぐ入院を!」。
やはり対応不可能。 続
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こういうケースでは、診断結果を伝えるのに神経をつかう。
自分たちがサポートしているなんて思いもせず、「ちょっと反応は遅い子だけど知的には普通」と考えている両親にとって、知的障害というのはまさかの診断だ。
だから、心理師と協力して、焦らずゆっくり理解してもらう。
続
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いよいよ自殺すると決意したら、最後の挨拶をしに受診してください。そのときは強制入院させてでも全力で阻止しますから。こんな話をすると、だったら受診せずに決行しようと思う人もいるかもしれませんが、あなたは挨拶に来てくれる人だと信じているので、あえてこうしてお伝えしています。続
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以後、希死念慮や自殺願望を語る患者さんには、こちらから「次の外来には必ず来る」という約束を提案することが増えた。
患者さんから教わることは多い。
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後日、孫にこの話をしたところ、
「あーっ……」
と後悔なのか反省なのか、続く言葉を失っていた。
農薬への長期間の暴露は、パーキンソン病のリスク因子と考えられている。
彼女は現在90歳を超え、精神科医である孫は祖母の訴えを聞き流さぬよう気をつけるようになった。
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体からウンチのニオイがするんじゃないかと不安な患者さん。
「ニオイなんてしない」と家族や友人や病院スタッフが伝えても、なかなか不安が消えない。
そこで、少し言いかたを変えてみた。
「もしニオイがしたら、僕が正直に、コッソリ教えてあげますよ」
これで少し安心された。