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「自殺しない約束はできない。でも、次の外来には必ず来るという約束ならできる。その約束を積み重ねていきたい」
患者さんの言葉に胸を打たれた。
「死なない約束」より前向きだし、24時間じわじわ続く「死なない約束」より期限がハッキリしていて良い。
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「病院を脅迫する家族がいる」というのは、とても大切な診療情報である。
これを隠したまま他院に紹介するのは、他院からしたら騙し討ちのようなものだ。
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自己肯定感に「褒められる体験」はあまり関係ないだろう、と個人的経験から感じる。
俺の自己肯定感は祖父のおかげだと思っているが、祖父から褒められたことは記憶にない。
ただ、「大切にされている」という感覚、いや、感覚以前のもの、何も恐れず伸び伸び生きられる、その環境を与えてもらった。
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児童思春期の精神科専門で頑張っているクリニックがあって、院長一人じゃ新患が数ヶ月待ちの状態になってしまった。
そこで二人の医師を雇い、新患もあまり待たずに済むようになり、余裕も出て、治療内容もより良くなった。
その結果、赤字になったらしい……😢
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物盗られ妄想の人だと、これが逆になる。「いつ盗られたのかは分からないし、現場を見たわけでもないが、盗んだのはアイツだ」と、自分の感情にとって都合の良い決めつけをする。
彼女の場合、それが全くなかった。続
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訪問診療の猟銃事件。
亡くなった患者さんの弔問にスタッフを二人も連れて行くくらい、熱心な先生だったのかもしれない。
あるいは、もしかすると生前からひどいモンスター家族で、後のトラブル回避のため弔問に、しかもその場での万が一に備えて男性二人を同行させて行かれたのかな……。
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患者さんと話すときは、「どうして◯◯ですか?」「なぜ◯◯なんでしょう?」という尋ねかたをほとんど使わなくなった。
「◯◯にはなにか理由がありますか?」
どういう状況・文脈であっても、「どうして」「なぜ」より「理由がありますか」のほうがニュートラルで無難だから。
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>大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物
医療に携わる者として、この一文には強く激しく怒りをもって抗議します。
日ごろこんなことは書きませんが、これは謝罪とともに撤回すべきです。 twitter.com/norinotes/stat…
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話を聞くと、妄想っぽさがない。この感覚の説明は難しいが、敢えて言えば「都合の良い決めつけ」がない。
例えば「いつ盗られたことに気づいたか」という質問には具体的に答えられるのに、「犯人の目星はあるか」という問いには「さっぱり分からない」と言う。続
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認知症の検査では、年齢のわりにしっかりしたほうだった。とりあえず診断は保留。2週後の再診予約とした。
次の診察時、息子がやや興奮ぎみに語った。
「先生、どうやら本当に盗まれているみたいです!」
続
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ずいぶん前、赤ちゃんの幻視に悩まされる90代女性を診察した。
よく話を聞くと、彼女が若いころ、不幸にして喪った新生児がいたことが分かった。それは、診察に同伴した60代70代の息子や娘も知らなかった「母のつらい過去」。
家族みんなで慰霊するようになり幻視は改善。
医療と怪談の狭間か。
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一番最初の会話、せっかく「ダイエットと健康のため」と患者さんが言っているのに「いいですね」と承認しているだけなので、これは惜しいやりとりだった。
「ダイエットと健康のためですか、いいですね。何かそう考えるキッカケがありましたか?」
ここまで尋ねれば、動機が意識されて良かった。
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当時と今では状況がちがう、というリプをもらったが、状況次第で石を投げたり出ていけと紙を入れたりする加害行為を正当化できるはずがない。
それとも、正当化できるとでも思うのだろうか?
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大学病院の看護師さんが仕事するかしないかはおいといて、看護実習生の挨拶をほぼ全員しらーっと無視するの、あれはなんなんだろう……?
これは大学病院に限らず、市中病院でも見られる光景ではあるが。
90
体からウンチのニオイがするんじゃないかと不安な患者さん。
「ニオイなんてしない」と家族や友人や病院スタッフが伝えても、なかなか不安が消えない。
そこで、少し言いかたを変えてみた。
「もしニオイがしたら、僕が正直に、コッソリ教えてあげますよ」
これで少し安心された。
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アルコール依存症の人に普段なに飲んでるか聞いたら、10人中11人くらいがストロングゼロって答えるよなってくらい、ストロングゼロばっかり。
92
こういう手法を会話の一部に少し取り入れるだけでも変化はあるはずだし、そうするとこちらのモチベーションも高まり、手法をさらに学ぶことで会話運びが上手くなり……、という相乗効果が期待できる。
患者さんのためにも、医療者自身の精神衛生のためにも、本書を勧める。
amzn.to/3MTeE9x
94
生活保護を受給していた患者さんが、65歳になったことで生保廃止され、年金生活に移行した。
そして言う。
「生活保護のときのほうが余裕があった」
制度には詳しくないが、とてもモヤモヤ。
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「薬を飲むと霊感が弱まる」と言って、治療を拒む患者さんがいた。
「霊感で得したことは?」
「ありません」
「辛いことは?」
「よくあります」
「だったら、薬で霊感を弱めるほうが楽なのでは?」
「確かにそうですね」
こうして、霊感を否定しなくても治療を継続できた。
続
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これは障害の有無にかかわらず、強く意識しないといけないと思う。
育児での役割は、無意識のうちに固定してしまう。そして、「主担当」「副担当」で分けると、たいていは上記のように副が負担の少ないほうに固定しがちなのではなかろうか。
これ、意識するだけじゃダメ。
強く意識する必要がある。
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“カウンセリングをやっておりますと、「こうなった原因は何ですか?」ということをよく聞かれます。ここでみなさんに少し想像してほしいんですけど、たとえば赤信号で突っ込んだ車が事故したとします。一命をとりとめた運転手は酒気帯びだった。どうやらこれが原因らしいぞと思いますね。続
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精神科医1年目のとき、統合失調症を患う音楽家が入院していた。
若い頃に発症し、処方薬を飲まず、重症化して日常会話はできなかった。
その人のお気に入りは病棟のピアノで、しかしもう演奏はできず、一つの鍵盤を人差し指でそっと押しては、響く音を愛でるかのように目を閉じるのだった。
続
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コロナ対応で病院が大変な現在、大量飲酒して救急に運び込まれる人に腹立たしくなる医療者のお気持ちはよく分かる。
ただ、断酒会やAAなど自助グループは、会場の貸し出しストップにより休会しているところが多く、依存症の当事者にとっても受難の時期ということも、どうか頭の片隅に……🙇
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辞めろ辞めろと言っていたのに、辞めるとなれば無責任となじる人がいるようで、どういう思考回路なのか……。