51
似たようなケースで、一人暮らしの高齢患者さんが、
「夜中にドーンと大きな音がして、起きると部屋が荒らされてた。寝なおして起きたら片付いてたのでたまげた」
と訴え、家族は苦笑。
「タヌキに化かされたんですかねぇ」
と言うと、患者さんは嬉しそうに爆笑。これもまた、しばらくは治まった。
52
幻聴や妄想を否定せず修正に持ち込むのに必要なのは、ほんの一工夫だ。
そういう症状のある人たちと頻繁にやり取りしながらでないと磨けず、漫然と対応していても身につかず、また身についても使わなければ鈍る。
これはセンスではなく、技術だ。
53
高齢者の施設や家に訪問診療に行くと、暑い部屋でエアコンつけずに過ごしている人がチラホラいる。
本人は「寒がりだから」「クーラー嫌い」と言うが、試しにリモコンを操作させると、
!エアコンのつけかたが分からない!
ことがある。
これは盲点だった。
本人の言い訳を信じず、要チェック!!
54
近隣住民も被害に遭っており、納屋に置いていたものが頻繁に盗まれていたらしい。
家族に信じてもらえたことが良かったのか、よく眠れるようになったそうでめでたく終診。
もし初診の時点で物盗られ妄想だと判断して薬を処方していたら、彼女の残りの人生は大きく損なわれていたのではなかろうか。
55
医師「たとえば、カロリーはどれくらいか確認されてますか?」
患者「100くらいでした」
「カロリーについてはしっかり確認されているんですね。塩分はどうでしょう?」
「いや、そこまでは……」
「いま調べてみますね。……だいたい1.5g前後です。3食ということは……」
「4.5gですね」
56
限られた診察時間で、こんなまだるっこしいやりとりなんてできない!
という意見が出るだろうし、実際まったくそのとおりだと思う。
とはいえ、効果が薄いことを重々承知で、あるいは効果がないことにイライラしながら、一方的な情報提供を続けるのも精神衛生上よくない気がする。
57
俺が不在のとき、かかりつけ患者さんから仕事を辞めるため「働けない」という診断書を書いてほしい、しかも今すぐ欲しい、と電話。
受付が医師不在で対応できないと伝えると、しつこく、恫喝に近い要求をされた、と。
次回診察で伝えること。
次にそれやったら、うちではもうみないよ。
58
「WHOでは、一日の減塩目標を5gに」
と言いたくなるのをこらえて、
「一日の塩分はどれくらいに抑えるほうが良いか、ご存知ですか?」(知識の確認)
「いえ、8gとか?」
「おしい! WHOの目標についてお伝えしてもいいですか?」
59
客観的には分からない「内的体験」について、幻聴・幻視・妄想という解釈・説明をされるのは、体験した本人にとっては「自分の頭がおかしいと言われている」「否定されている」ようなものだろう。
初手でここからスタートすると、後々がうまくいかないのではなかろうか(たぶん)。
60
5年前の今日、当時3歳4ヶ月の長女による #育児のヒヤリハット。
目撃した妻によると火花が散ったそう。
細いリングは焼き切れている。
長女は親指に小さな水ぶくれで済んだ。
家中のコンセントにカバーをつけるのは現実的ではないが、育児中の人は何かしらの対策を。
61
名前を呼ぶ幻聴のある人。
「呼びました?」
「(呼んでません、じゃなくて)なにか聞こえました?」
「名前を呼んだでしょ?」
「なんて呼ばれました? 苗字? 名前?」
「苗字」
「◯◯さんって?」
「うん」
「私の声?」
「うん」
「口は動いてました?」
「いや……見てない……」
62
ここにきて、ついに当院でも患者さんやスタッフにコロナが発生。
年度始めの朝礼で、職員に向け院長はこう言いきった。
「ここまで感染者が出なかったのは皆さんが対策してきたからこそ。それでも、感染は誰もがかかりうるもの。安心してください。一切責めません。引き続き、一緒に頑張りましょう」
63
以前このエピソードを書いたとき、「自業自得だ!」「因果応報だ!」みたいなリプがついたが、ちがう、そうじゃないんだ……。
その発想は、たぶん、疾患差別と根っこのところでつながっている、あるいはつながろうとしている。
誰にでも起こりえるのが、病気なんだ。
64
中高生のころ、近所にある作業所に通う人をバカにして、「キチガイ」と呼んでからかっていた。でも、いまは自分がそこに通ってる……。
過去にそういう話をしてくれた人がいて、「いつ自分や家族が発症するか分からない」という警句を書くときには必ず思い出す。
65
74歳女性。
津波から逃げるとき、孫が助かったのを見届け、自分は逃げきれないと悟り、
>「生きろよ! こっち見るな! 後ろを振りむくなよ、がんばって生きろよ! バンザイバンザイ!!」と流 れていきました。
amzn.to/3ZwJqcS
66
>偉大なアーティストは同時に偉大な知性であって欲しかった。
普通の人は、アーティストより大学講師にこそ知性と理性が備わっていて欲しいと思うのでは?
松任谷由実さんに「早く死んだほうがいい」 政治学者・白井聡 j-cast.com/2020/09/013933…
67
田舎で生活保護をもらっている中年女性。
プランターで野菜を作ろうとしたら、保護課から、
「少しなら良いが、たくさんはダメ」
と指導された。理由は「販売するかもしれないから」。
自立させたいのか、させたくないのか、よく分からない仕組みだ。
68
ある患者さんから「CIAに電話して」と言われたことがある。
「否定しない」精神で考える。
用件は?
向こうの担当者は?
電話番号が分からない。
実際には、「分かりました、電話番号を教えてください」と答えた。
患者さんはそれ以上なにかを言うことなく、ニヤリとして去って行った。
69
質問を繰り返していると、「あれ? 気のせいだったかな?」という様子で首をかしげながら、うやむやに終わることがある。
こうすれば、否定された、聞いてもらえなかった、という感覚は芽生えない。
70
精神科医からのお願い。
家族が「死にたい」と言い出して受診させる場合、クリニックではなく、その場で入院を決められる精神科病院を選んでください。
一日の遅れ、場合によってはたった数時間が、取り返しのつかない自殺決行につながることがあります。
71
ここで、患者さんが「お願いします」と答えてくれるようなら、「家族が死んだ」という妄想は少し緩和・修正されたようなものである。
幻聴や妄想の訴えには、とっさに「そんなことないよ」と否定してしまいがちだが、真実を答えるのではなく、いったん受け止めて返してみる。
72
「近くにその子のパパがいて、言えなかったんだよね」
たしかに、すぐ側に、一人だけで参加している男性がいた。
そういうことだったのか……。
次になにか行事があるなら、そしてママが参加できていないようなら、たくさん撮ってあげたい。
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「なんでも鑑定団」の中島誠之助さんの解説だけ集めたDVDがあったら欲しいくらい大ファン。
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娘たちが「ずるい」を頻繁に使うようになったので、なるべくやめようと話した。
「ずるい」は相手の行動や考えを悪く言う言葉。でも、言いたいのは「いいなぁ」「イヤだな」「私もしたいな、欲しいな」ということだよね。その気持ちを言おう。
「パパいいなぁ、私もほしい!」
ナイスです!!👍
75
園児がバスに取り残されて亡くなった。
その子の水筒は空っぽで、おそらく自分で飲んだのだろうと思われる。
事実(園児が取り残され亡くなった)に比べると、ストーリー(水筒が空っぽ)は、感情を激しく揺さぶる。
この揺さぶりが世論を動かし、世の中を良くすることもあるし、その逆もある。