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人質を救い出すことができなかった以上、政府の責任が問われるのは当然です。しかし、交渉と身代金提供による人質解放の可能性を確実とするような議論には賛成できません。他方国会での首相答弁は、集団的自衛権の承認や憲法改正に言及している。それでは力で人質を奪回できたのか。私は疑問です。
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イスラム国ないしISILは、大量殺戮を行ないそうなのではなく、現に行なっている存在です。戦争と破綻国家のなかに生まれた急進的暴力組織であり、交渉の合理性も抑止の合理性もない。イラクのフセイン政権などのような独裁体制と異なる、現在の危機です。
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東京大学法律相談所の企画により、日本の安全保障についてお話しいたします。入場無料とのこと、日曜の午後に恐縮ですが、お運びいただけますと幸いです。
日時 2015年10月 25日 (日)午後2:00(受付開始)から午後4:30まで
会場 東京大学本郷キャンパス 法学部31教室
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この状況のなかで何ができるのか、何を優先するべきか。2013年にシリア内戦が激化してからずっと考えてきました。難民移動の安全を確保すること、そして難民キャンプの安全と結びつけて相対的に安全な区域を面として広げてゆくのが私の意見です。先週月曜のNEWS23でもそう申し上げました。
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アメリカ大統領選挙、クリントン候補とトランプ候補の差が縮まったのは確かですが、クリントン優勢は動かないことを確認しておきたいと思います。世論調査の方法型と異なるLAタイムズのものを別とすればクリントン優勢との調査が圧倒的多数に上るからです。
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イギリスが統一を保つことができるかどうかも問題です。今回の国民投票では連合王国全体は離脱優位でもスコットランドは残留支持が多数を占めました。独立論を抱えるスコットランドの将来も課題です。
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アメリカ大統領選挙、クリントンに肩入れしているわけではありません。私がトランプ候補を批判するのは、クリントンがよい候補だからでも、また民主党を支持するからでもなく、ドナルド・トランプにアメリカ大統領という権力を委ねてはいけない、そのようなことがあってはならないと考えるからです。
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イギリスが脱退した(あるいは二年後の脱退に向けて進み始めた後)のEUの行方も課題です。それでなくても難民問題をきっかけに加盟各国が国境を閉鎖したりしているさなかのこと、加盟各国の移民規制派が勢いづくことは避けられない。ユーロを導入していないデンマークでは脱退論が強まるでしょう。
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「そう、ぼくたちの生きる時代は暗い・・・笑う人たちは、恐ろしい事態をまだ聞いていないだけだ」すでにナチが権力を握り、オーストリアも併合した1938年にブレヒトが書いた詩の一節です。
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日中関係の緊張について中国政府の責任が大きいと思いますが、その緊張を打開するためには中国から見た世界に目を配る必要がある。中国に妥協するとかおもねるとか言うことではなく、日本の主張に相手を引き寄せるために必要です。それが不可能だと割り切れば外交の選択を自ら封じることになります。
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アメリカの大統領選挙は最終的にクリントン優位だろう、よほどのテロ事件でも起こらなければトランプは大統領にならないだろうと考えてきました。その、「よほどのテロ事件」が起こってしまいました。銃乱射事件に、そしてそれが招くアメリカ政治の混乱に戦慄しています。
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ところが、力をどう行使すればよいのか。ここで新たなジレンマが生まれます。シリアでいえば、大量殺戮を繰り広げているのはイスラム国だけではない。むしろ、殺害した数でいえばアサド政権の方が酷いでしょう。また、地上軍を展開せずに空爆に頼るなら一般国民が巻き添えになってしまう。
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私は中国の最大の敵は日本でもアメリカでもなく、中国自身だと考えます。独裁の下で権力を拡大した国家がその権力を外に行使する誘惑は大きい。だがそれは、中国を取り巻く諸国にとっても中国にとっても自滅的な選択に過ぎません。
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キャンベラでもワシントンでも、安倍首相は軍国主義と現在の日本を切り離し、民主主義国としての日本のイメージを示し、議会の喝采を受けました。ですが、日本国内では、首相は歴史問題についての発言を避けている印象があります。終戦70周年の談話は戦時戦中と異なる日本を内外に示す機会です。
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ガーディアン、パリのテロ事件容疑者がシリアからギリシャ経由でフランス入りと報道(CNNも同趣旨)。パリのテロ事件がシリア難民問題とリンクし、そのリンクが移民排斥政党の台頭を誘い、ヨーロッパ諸国の政治を変えてしまう構図。 RT gu.com/p/4e85v/stw#bl… …
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中国との関係を打開する必要があると申し上げたら、左翼だと言われました。中国共産党による極度の人権抑圧を前にして見て見ぬふりを続けた人たちと一緒にされるのは残念ですが、それ以上に、緊張の打開などを図るのは相手におもねることに過ぎないという考え方がとても残念です。
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7月29日金曜日昼のNHK BS1で、米民主党大会を解説しますが、気が重くなりました。トランプの世論調査優位は共和党大会による一時的上昇である可能性が高く、いまだクリントンは基本的に優勢。でも、サンダースを支持するあまりトランプが大統領になることを放置するとは。愚かしい自滅。
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落選の可能性が高まるなか、トランプは演説のなかで銃砲器を保持する権利に触れ、クリントンが大統領になって(最高裁)判事を選んだらもうできることはない、修正第二条の人たちにはあるかも知れないけれどと述べました。不完全な上に曖昧な表現ですがクリントン暗殺をほのめかしたとしかとれません。
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ウクライナはオバマのアフガンになるのかと以前ツィートしましたが、その可能性が見えてきました。不介入政策を基本としたカーター政権がソ連のアフガン侵攻を契機に政策を転換したように、ロシアのウクライナ介入がオバマ政権の対ロ政策を変える引き金となる可能性です。
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過去二回の大統領選挙を正確に予測したネイト・シルバー、今回はトランプ勝利の可能性が低いという分析を発表し続けたんですが、最近はトランプが勝つという前提のもとで記事を書き、そのなかで、アメリカの政党再編成が始まると述べています。fivethirtyeight.com/features/dont-…
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ロシア、シリア空爆。アサド政権とISの双方を忌避しながら軍事介入の成果が上がらないアメリカを横に、ロシアはアサド政権支援を明確とした空爆に踏み切ったわけです(今回が初めてとして、ですが)。シリア内戦が国際政治の構図を変える事件に発展しました。