101
農業が始まって以来およそ1万年の間、種子を採り、育て、選ぶことで多様な品種を作ってきたのは農民である。品種改良で作られた登録品種も、もともとは農民が守ってきた在来種が原種だ。そこには許諾料などという概念ななかった。なぜなら種子は空気や土と同じ共有財産だったからである。
102
種苗法改正案が今国会で審議される。この改正は、規制改革の名の下、種子ビジネスへの民間企業の参入をさらに進めることを狙いとしている。自家採種を禁じ、多国籍企業による種子支配への道を開くこの流れは、まさにインドや南米をはじめ世界で問題となっている「モンサント法」そのものである。
103
家族農業はこれまで非効率な農業と言われてきたが、実は持続可能な農業として見直され始めている。家族農業は、世界の農家の9割以上を占め、資源エネルギーは25%しか使わないのに世界の70%の食料を供給している。一方、工業的大規模農業は資源エネルギーを75%も使って30%の食料しか供給していない。
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お菓子の添加物には、「増粘多糖類」という表示のものがある。これは類似した添加物をまとめた「類別名」の一つである。アイスクリームやゼリー、グミのようなお菓子に使われている。この類別名で使われることの多い添加物がカラギナンだ。カラギナンは海藻から抽出されるが、発がん性の疑いがある。
105
東大教授の安冨歩さんの著書「生きる技法」には、次のような言葉が出てくる。
「自立とは、多くの人に依存することである。依存する相手が増えるとき、人はより自立する。依存する相手が減るとき、人はより従属する。従属とは依存できないことだ。助けて下さいと言えたとき、あなたは自立している」
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種苗法改正の問題は、種や苗の自家増殖(採種)が一律に許諾性となることである。農家が自家増殖(採種)するには、これまで必要なかった手続きや許諾料の支払いが新たに必要となる。政府は、「許諾料はわずかだから心配ない」と言うが、価格や許諾を決定する権利は育成者にあり、当てにならない。
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2017年、スイスは憲法を改正した。新しく書き加えられたのは「食の安全保障」だった。国民へ安定的食料供給を維持する、農地を保全し、地域の資源が最も生かされる形で食料を生産する、フードロスを減らし、国際貿易は農業を持続可能な形で維持するように行う、等が書き加えられた。日本も学びたい。
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コロナの感染拡大で世界各地で食料が手に入らない人々が増えている。やむを得ず、都市住民が自分たちで野菜を作る動きが各地で広がっている。タイでは1200万世帯が「野菜を育てる運動」に取り組み始めた。パレスチナでは「100万本の野菜の苗を植えよう」キャンペーンが始まっている。
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2018年暮れ、改正水道法が国会を通過した。水道民営化につながる法案だった。日本の水道民営化をめぐっては、フランスの多国籍企業ヴェオリア社が日本市場を狙っていると言われてきた。注目すべきは麻生財務大臣の娘婿がヴェオリア社の重役だということである。水道が利権の対象にされてはたまらない。
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日本の食料自給率はなぜ下がったのか。よく言われるのは、日本の農地と農業生産力は限られているのに、食生活の変化に伴う食料重要が増大したため、対応しきれなくなった、というものだった。しかし、本当は貿易自由化を進め、輸入に頼り、日本農業を弱体化させる政策を採ったからだったのだ。
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ウクライナ戦争で世界の食料が不足しつつある中、政府は今なおコメを作るなと言い続けている。一方、麦、大豆、野菜、そば、餌米、牧草などを作る支援として支出していた交付金をカットするという。農業支援というより農家を苦しめる政策ではないか。このままでは耕作放棄地が拡大するだけである。
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外国人による日本の土地買収が問題になっている。本来、国土は歴史・文化・知財をも生み出す国家の礎、国富のはずだが、その国土が次々と外国人向けの資産の移転先となり、真の所有者は不明化し、次第に見えなくなっている。私たちは国土から得られるはずの果実を大量に失っていくのではないか。
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260億円もかけたアベノマスクはひどい失敗だった。でも、誰も反省していない。
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ヨーロッパ(EU)は、温暖化防止の切り口から農業の25%をオーガニック(有機農業)にすることを決めた。
①オーガニックを25%といままでの3倍に。
②農薬を50%削減。
③畜産や魚への抗生物質も削減。
④肥満を防止。
⑤アグロエコロジー、有機農業、自然農法、精密農業を推進する。
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フランス破棄院(最高裁に相当)は10月21日、モンサント(現・独バイエル)の農薬がフランス国内の農家に被害を与えたとして、バイエルに賠償を命じる判決を下した。賠償請求額は100万ユーロ(約1億2200万円)だったが、判決での賠償金額は未定。バイエルは同様の裁判で世界中で敗訴し続けている。
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昔は、農地面積が全部で100ha位という村が普通にあった。でも今は、農水省は100haなら農家一軒で足りると言う。一軒の農家になったら、おそらく外国から来た労働者が5〜10人働くような形になるだろう。「強い農家」はつくれるが、村落は崩壊、農地はケミカル漬け。こんなことをしていいのだろうか。
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外資による日本の土地買収で問題なのは税金面である。外国人が買収地を法人名義で購入し、海外在住のためと連絡不通にしておくと、「所有者不明」の扱いになる。転売しても法人登記をそのままにしておけば、所得税、不動産取得税、登録免許税等のほか、固定資産税も免れる。国は手出しができない。
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子供たちが食べているお菓子の表示の中で、安全性の面でとくに気をつけたいのが、「青色1号」「黄4」のような色名と番号で書かれている添加物の「タール系色素」である。発がん性やアレルギー性が報告されている。英国食品安全庁が児童の注意欠陥多動性障害(ADHD)にも影響していると報告している。
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モンサント社から突然、遺伝子組み換えナタネを栽培していると身に覚えのない通告を受けて以来、モンサント社と闘ってきたカナダの農家、パーシー・シュマイザーさんが昨年10月13日、89年の生涯を閉じた。シュマイザーさんは何度も来日し、タネが作り手である農民のものであることを訴えていた。
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学校給食に有機農法のお米を入れたい。全国の水田の2%を有機にすれば、全国で100%有機米給食が可能になるという。
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日本も学ぶべきだ。韓国のソウル市は、国公立と私立を問わず、今年から市内のすべての小中高校(特殊学校含む)で給食を無償化すると発表した。同市は2011年から学校の給食無償化の取り組みを始め、学年ごとに対象を拡大してきた。今年から小中高1348校の約83万5000人が給食無償化の対象となる。
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外資の土地買収が取り沙汰されるようになったのは2008年。以来、買収面積は公表値7607ヘクタール(2020年)まで増えた。この間、講じられた対策は、17道県が作った「売買の事前届出」条例(国内も国外も差別がない)くらいだ。「安全保障だから対策は国でしょう」と自治体は言うが国は無策を続けた。
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2018年にモンサント社を買収したドイツ企業のバイエル社は、除草剤「ラウンドアップ」訴訟で高額の賠償金を突きつけられ、経済的ダメージを受けている。農民の除草剤離れに加え、「ラウンドアップ」をめぐる米国の集団訴訟の和解金が7億5000万ドル(日本円で約776億3000万円)にも上ったからだ。
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ドイツのバイエル社がモンサント社を買収し、米国デュポンとダウ・ケミカル社が経営統合。また中国化工集団公司がスイスのシンジェンタ社を買収。このモンサント・バイエル、デュポン・ダウ、そして中国化工集団公司・シンジェンタ、この三大グループが今、世界の種と農薬のシェアを支配している。
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「自助・共助・公助」という言葉ががいまでも胸にひっかかっている。国が責任を負うべき公助がなぜ最後なのか。コロナ対策でも自助だけが求められ、公助はなかなか発動されない。むしろ、この言葉は国民に向かって「和を乱すな」「公助に頼るな」と言う時の方便として用意されたのではないかと思う。