1
日本の場合、農業や介護職が「人手不足」というが、実態は「賃金不足」である。
2
「コメが余っている」という声がある。コロナ禍でコメ需要が年間22万トンも減った。コメを大幅に減産しなくてはならないという意見である。そうではない。コメは余っているのではなく、コロナ禍による収入減で、「1日1食」に切り詰めるような、十分に食べられない人達が増えているということである。
3
ここ数年、法令がいくつも制定された。
2016年 農地法改正
2017年 種子法廃止
2018年 漁業法改正
2018年 水道法改正
2019年 国有林野管理経営法改正
2020年 種苗法改正
つまり、外資を含む民間へ社会資本や公共的財産がスムーズに払い下げられるよう、規制の緩和と撤廃が次々と行われた。
4
種子法が廃止されたが、もう一度、国は種子を守る姿勢を見せてほしい。農業にとって種は命である。種が手に入らなくなれば農業が成り立たない。それでは、国民の命も保障できない。種子は国の責任で守ってこそ国民の命も農業も守ることができる。
5
フランス、ドイツ、イタリア、オーストリアは2021年までに、除草剤グリホサートを使用禁止にするとした。一方、日本は2017年に小麦、大麦、ライ麦、そば、トウモロコシなどの穀物の残留基準を大幅に引き上げた。小麦で6倍、そば・ライ麦で150倍にも上る。なぜか日本だけが世界の潮流に逆行している。
6
すでに日本では、大規模農家や法人格を持つ農家にしか補助金が出ない仕組みになりつつある。小さい農家が小さいままで生き延びるのは難しい。しかし、農家が減るということは、地域の文化まで含めた資源がなくなるということである。日本はいったい、どんな国をつくろうとしているのだろう。
7
発がん性のある除草剤グリホサートが市販のパンに残留していることが、農民連食品分析センターの調査で分かった。残留していたのは15製品中13製品。原料は輸入小麦だった。国産小麦を使用した2製品からは検出されなかった。調査では、一般のパスタやシリアル、カップ麺からも検出された。
8
種苗法改正の国会審議が始まろうとしている。これは、数年前から南米やアフリカの途上国で問題になり、次々と廃案に追い込まれた通称「モンサント法案」の日本版である。この法案が通ると、農家は自家採取ができなくなる。種子は、政府に登録された多国籍アグリ企業から毎年買わなければならなくなる。
9
スワヒリ語には「持つ、所有する」という意味を表す言葉がない。「私は本を持っている」と日本人や欧米人が言うところを、スワヒリ語では「私は本と共にいる」「私と本とが共にいる」と言う。私たちが「所有」の観念で捉える関係を、スワヒリ語では「並存」の観念で表すのである。
10
私たち日本人は、水と安全はタダだと思っている。だが蛇口の水をひねっておいしく飲める国は、世界中にたった16カ国しかないのだ。日本の水道の水なら、トイレの水だって安全に飲むことができる。2018年12月に水道法が改正された。日本人の命の綱である水を、安易に民間企業に譲り渡してはいけない。
11
日本の農地が外国資本によって買収され続けている。このまま進むと、将来の農業の姿が、地主が外国人で、小作が日本人や在留外国人になりかねない。実際、ニュージーランドでは土地の所有者が中国人、労働者はアフリカ人という牧場がいくつもある。同じ風景が日本の過疎地で起きる可能性がある。
12
種苗法改正の問題点。これまでは登録品種であっても、農家が自家増殖(採種)することは合法だったが、改正法では違反すると10年以下の懲役または1000万円(法人では3億円)以下の罰金となる。また有機農業農家などはよく種苗交換会をやるが、種苗を持ち寄れば種苗法違反となる可能性がある。
13
日本の農業は、世界で最も過保護であると日本国民に長らく刷り込まれてきた。どうしてこんなことが宣伝されてきたのだろう。実態は、まったくの逆であった。日本は、世界で最も農業のセーフティネットが欠如している国だった。農業政策は農家保護政策ではない。国民の安全保障政策なのである。
14
国会で種苗法改正の審議入り。初めは種子法廃止だった。次に農業競争力強化支援法の制定、そして今回、種苗法改正が通れば、まさにモンサント法日本版の完成である。世界中で反対運動が起き、各国で次々と廃案に追い込まれたモンサント法の日本版が日本で法律になろうとしている。日本の農業が壊れる。
16
ロシアは全ての種子を国内自給することに決めた。先の国会で先送りになった種苗法改正案を、日本政府は次の国会に再び上程しようとしている。種子を外国に依存することは、自国の「食の安全保障」が脅かされることだと、プーチン大統領は断言している。なぜいま種苗法を改正する必要があるのか。
17
カナダの農民パーシー・シュマイザーさんは、50年来、自家採種でナタネを栽培していた。ある日突然、モンサントから「あなたの畑で我が社の遺伝子組み換えナタネが無許可で栽培されている」と巨額の損害賠償を請求された。10年にわたる裁判の結果、カナダ最高裁はモンサント社の訴えを退けた。
18
日本の農家の所得のうち、補助金の占める割合は30%程度なのに対して、英仏では農業所得に占める補助金の割合は90%以上、スイスではほぼ100%と、日本は先進国で最も低い。欧米では、命を守り、環境を守り、国土・国境を守っている産業を国民みんなで支えるのが当たり前になっているのだ。
19
危険な国ニッポン。これだけの「世界一」がある。
•農薬の使用量が世界一
•食品添加物の数が世界一
•水道水の塩素濃度が世界一
•放射能汚染が世界一
•遺伝子組み換え作物の輸入・消費量が世界一
•電磁波を浴びる量が世界一
20
種苗法改正で、自家増殖が原則禁止された。農家が作物の種や苗を自家採取し交換しあうのは、種や苗が人類共通の大切な資源であることを理解しているからである。この権利を奪うことは何者であっても許されない。かの米国でも特許法で守られている品種を除き、農家の自己増殖は禁じられていないのだ。
21
種苗法が改正されると、農家は自分の畑で取れた種を翌年、使ってはいけないことになる。違反すれば10年以下の懲役刑と、1000万円以下の罰金刑が併科される。懲役と罰金がセットという重い厳罰が科されるのだ。多国籍アグリ企業の利益を優先させるために、日本の農家を犠牲にする究極の愚行である。
22
種子法が廃止され、都道府県が種子生産や管理に関わらなくなれば、農家が購入する種子が高騰し、農家の経営が苦しくなると予想された。例えば、民間の三井化学の「みつひかり」は、種子の販売価格が20キロ8万円で、都道府県が開発した米の品種の約10倍の価格である。なぜ種子法を廃止したのか。
23
日本の農民の数は、2020年の統計で136万人。2015年から39万人も減少した。人口のわずか1%の人たちが食料自給率37%を支えているのだ。しかも、そのうち7割が65歳以上という現実がある。こういう日本農業の現実を、消費者はどう考えたらいいのだろう。
24
世界の種子市場の約7割弱、農薬の8割弱をたった4社の遺伝子組み換え企業が握っている。遺伝子組み換え企業から種子を買わなければ農業ができない時代になろうとしている。人類共通の財産である農民のタネが奪われようとしているのだ。
25
政府は4月16日から種苗法改正法案の審議に入るという。いま、なぜ審議入りなのか。種苗法改正は農漁業者への影響が甚大であるばかりでなく、日本の食料主権にかかわる問題である。新型コロナウイルス対策で国内が騒然としている最中、そのどさくさに紛れて改正を強行することは許されない。