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2018年に廃止された種子法は、米、麦、大豆などの主要農作物について、国や都道府県の管理のもと、各地域にあった品種を開発したり、優良品種を指定したりする役割を果たしてきた。その結果、農家に優良で安価な種子が提供され続けてきたのである。そんな種子法をなぜ廃止したのだろう。不可解だ。
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世界がネオニコチノイドのもたらす生態系への甚大な影響に気づいたのは1996年、フランスの養蜂業者が、ネオニコチノイドをまぶした種子を蒔いたヒマワリ畑のそばでは蜜蜂が死んでしまうと訴えたことが始まりだった。以後、2000編以上の学術論文が発表され、ネオニコの危険性が指摘されている。
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政府は、種苗法改正の理由として「優良品種の海外流出を防ぐため」を挙げている。しかし、これは詭弁ではないのか。国内法を強化しても、海外流出を防ぐことは原則できない。だが、条約または協定で規制するか、海外で育種登録をすれば対抗できるのだ。現行の種苗法で十分に対応できるはずである。
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日本ではジャガイモの収穫後農薬散布は禁止されているが、米国産ジャガイモについては、2020年、農薬(殺菌剤)ジフェノコナゾールを、生鮮ジャガイモの防カビ剤として食品添加物に分類変更して散布を可能にした。その残留基準値も0.2ppmから4ppmへと20倍に緩和した。米国からの圧力の結果だった。
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2018年暮れ、改正水道法が国会を通過した。水道民営化につながる法案だった。日本の水道民営化をめぐっては、フランスの多国籍企業ヴェオリア社が日本市場を狙っていると言われてきた。注目すべきは麻生財務大臣の娘婿がヴェオリア社の重役だということである。水道が利権の対象にされてはたまらない。
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廃止された種子法は、わが国における食料増産や良好な食料を安定供給することを立法趣旨としていた。これまで日本では、約1000種の多様な品種の稲が栽培されてきたが、種子法が廃止された結果、今後は品種が絞られていくだろう。民間の品種が中心となって市場に出回り、銘柄は集約されると思われる。
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異常気象は世界に深刻な水不足を招いている。2018年、南アフリカのケープタウンでは、厳しい日照りにより水道水が出ない事態に陥った。1人当たり49リットルという水道使用制限がかけられ、軍隊が水を管理した。日本では水道民営化の動きがあるが、こうした動きには歯止めをかけなければならない。
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コンクリートやプラスチックなど地球上にある人工物の総重量が、同じ地球上の植物や動物などの総重量(生物量)を上回ったと推算する論文をイスラエルの研究チームが発表した。20世紀初めには人工物量は生物量のわずか3%だったというから、環境への負荷もすごい勢いで増えていることになる。
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外資による日本の土地買収では、転売が繰り返されたりすると「所有者不明」扱いになり、日本の税務当局は税金を徴収できなくなる。理由は、国税マンや徴税吏員がもつ権限(質問検査権)が海外では通用しないからだ。海外での外国人から外国人への転売も、日本への報告は実態上ほぼ不要となっている。
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安倍政権は「種苗法」を改定しようとしている。別名「モンサント法案」とも呼ばれる。これが通ると、自家増殖(採種)の原則禁止、つまり自分の畑や田んぼで採れた種を翌年使ってはいけないことになる。農家は、毎年、種子を提供する企業から種を買い続けなければならなくなる。
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鈴木信弘東大教授が指摘。グローバル種子企業に便宜供与をした案件。
①種子法廃止
②種の譲渡
③種の無断自家採種の禁止
④遺伝子組み換えでない(non-GM)表示の実質禁止
⑤全農の株式会社化
⑥GMとセットの除草剤の輸入穀物残留基準値の緩和
⑦ゲノム編集の完全な野放し
⑧農産物検査規則の改定
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4月から「合成保存料不使用」や「人工甘味料不使用」の表示ができなくなった。消費者庁によると、消費者は「合成」や「人工」という表示がある商品を避ける傾向にあるが、使用されているのは国が安全性を認めた添加物であり、消費者の誤認防止のため「合成」「人工」の表示を禁止するのだという。
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除草剤グリホサートは発がん性だけでなく、様々な健康影響が指摘されている。今年5月、千葉大学の橋本謙ニ教授らが行った実験では、妊婦マウスにグリホサートを投与すると、生まれてくる子マウスに自閉症の症状が起きた。海外の動物実験では、肝臓や腎臓などに悪影響を与えることも分かっている。
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ゲノム編集について、日本政府はなぜか積極的な姿勢を貫いている。未知の領域がまだまだ多い遺伝子、しかも口に入れる食品の扱いに関して、あまりにも拙速である。しかも表示の義務もない。ゲノム編集に対してはEUなど各国が慎重なスタンスを取っているのに、日本だけが前のめりの姿勢になっている。
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ゲノム編集について日本政府は、2019年3月、一部を除いて安全審査や表示義務も設けず、厚生労働省へ届け出るだけで市場への流通を認めることにした。しかも、表示は不要だという。これでは消費者は、もしゲノム編集された食品がスーパーマーケットなどに並んでいても選別できないことになってしまう。
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もし、ゲノム編集による種子が作付けされたなら、日本は花粉の交雑により、有機栽培のできない遺伝子組み換え汚染農地となってしまう可能性がある。現に、北米大陸では、日本ほどの面積の農地が遺伝子組み換え作物による汚染地帯となって、有機栽培ができなくなっている。
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1973年、当時のバッツ米国農務長官は「日本を脅迫するのなら、食料輸出を止めればよい」と発言している。また、米国ウィスコンシン大学の教授は「食料は武器で標的は日本だ。直接食べる食料だけでなく、日本の畜産のエサ穀物を米国が全部供給すれば日本を完全にコントロールできる」と発言している。
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種子法が廃止された。稲に関する民間品種は、三井化学、住友化学、日本モンサント、豊田通商が販売している。しかしこれら民間企業の品種は、大規模農家向けで、国内の多くを占める小規模・零細農家向けの品種は1品種も作られていない。しかも、化学肥料や農薬の使用を前提とした品種ばかりである。