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日本の食料自給率はわずか37%。将来、世界的な食料危機が起こったような場合、国民の多くは飢えに瀕してしまうことになる。実際、TPP協定の第2章24条には、締約国は食料危機を防ぐために食料の輸出を前日までの通告で禁止することができる、とある。政府はなぜ、自給率を上げる努力をしないのか。
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ロシアのアブラムチェンコ副首相は、遺伝子組み換え種子がロシアに入ってくるのを防ぐため、穀物や野菜など輸入種子の品質管理を強化する法律を起草したと述べた。同氏は「ロシアは大量の種子が必要である。遺伝子組み換え作物のない市場を確立することは食料安全保障にとって重要だ」と述べた。
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学校給食に有機農法のお米を入れたい。全国の水田の2%を有機にすれば、全国で100%有機米給食が可能になるという。
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米国環境保護庁(EPA)は、除草剤グリホサートに関する生物学的評価の草案を発表した。それによると、生物多様性に及ぼすグリホサートの影響は甚大で、絶滅危惧種の93%に相当する1676種の絶滅危惧種が被害を受ける可能性があると警告した。グリホサートは除草剤ラウンドアップの主成分である。
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千葉県いすみ市は2017年、市内の全13の小中学校の給食で使用するご飯について、全量を有機無農薬米を使用することにした。2018年からは、学校給食に有機野菜を使用しはじめた。市は、最終的には学校給食の食材をすべてオーガニックにする方針だという。こうした動きが全国に広がればいい。
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農業が始まって以来、多様な品種を作ってきたのは農民である。「種子は農民のもの」という考え方は、これまで世界中で当たり前のことだった。その基本的な思想が種苗法改定で崩された。農民であっても育成権者の許諾なしには、以前のように登録品種から自由に種子を採って自家増殖できなくなった。
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農産物の貿易自由化は農家が困るだけで、消費者にはメリットだ、と考える人がいる。これは大きな間違いだ。農家が本当に困ったら、農家は農業をやめる。安全・安心な国産の食料がいつでも手に入らなくなることの危険を考えたら、貿易自由化は、農家の問題ではなく、国民の命と健康の問題なのである。
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大規模農業が世界の食料を支えているというのは誤解である。国連の報告によれば、小規模家族農業は世界の農業資源(土地、水、化石燃料)の25%の利用で世界の70%の食料を生産している。一方、工業的大規模農業は、資源の75%を浪費して30%の食料しか提供していない。しかも環境破壊を招いている。
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日本の農地が外資に売られ続けている。今年1月、国は北海道倶知安町内の国有地2.1ヘクタールを売却した。一般競争入札で4.5億円。落札したのは香港資本だった。「ウィン・ウィンで儲かるからOK」という感覚で売られた。同じ感覚で全国の農地や山林が、さして報道もされず外資に売却処分されている。
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日本の食料自給率は37%である。ひとたび世界的な食糧危機がくれば日本人の大半は飢える。日本はいつから農業を大事にしない国になったのだろう。日本の農業人口はこの30年、つるべ落としで減少してきた。
1990年 480万人
2008年 300万人
2016年 192万人
2019年 168万人
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260億円もかけたアベノマスクはひどい失敗だった。でも、誰も反省していない。
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農業が始まって以来およそ1万年の間、種子を採り、育て、選ぶことで多様な品種を作ってきたのは農民である。品種改良で作られた登録品種も、もともとは農民が守ってきた在来種が原種だ。そこには許諾料などという概念ななかった。なぜなら種子は空気や土と同じ共有財産だったからである。
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日本では、遺伝子組み換えトウモロコシは家畜の飼料となるケースが多いが、それを餌とした牛や豚、鶏の精肉だけでなく、卵や牛乳などの畜産品も、遺伝子組み換えという表示義務を負わない。遺伝子組み換えトウモロコシを食べて育った家畜には、何らかの影響があるはずなのに、その検証もされていない。
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農民連食品分析センターが昨年行った調査では、学校給食のパンから発がん性のある除草剤グリホサートの成分が検出された。学校給食のパンには輸入小麦が使用されていた。ただ、埼玉県の学校給食のパンからはグリホサートが検出されなかった。埼玉県の学校給食のパンは国産小麦を使っていたのである。
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バイデン政権初の報道官記者会見で、記者たちは納得のいくまで質問を何度も繰り返し、言葉の真剣勝負が繰り返されていた。それに比べ、日本の首相記者会見はどうだろう。原稿の棒読み、追加質問禁止、事前の質問事項提出、それに隷従する記者たち。何という違い。恥ずかしくないのだろうか。
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日本の食品行政では、安全性より多国籍企業への配慮が優先されているように見える。日本では、2023年からは「遺伝子組み換えでない」という表示も事実上できなくなる。既にギャバトマトだけでなくゲノム編集の米の品種「シンク能改変稲」、遺伝子組み換えの稲の種子「WRKY45」なども用意されている。
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昔は、農地面積が全部で100ha位という村が普通にあった。でも今は、農水省は100haなら農家一軒で足りると言う。一軒の農家になったら、おそらく外国から来た労働者が5〜10人働くような形になるだろう。「強い農家」はつくれるが、村落は崩壊、農地はケミカル漬け。こんなことをしていいのだろうか。
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日本では一部に根強く「農業は補助金だらけで過保護ではないか」という意見がある。しかし、日本の農業保護は先進国で最低なのだ。2013年で見た主要国の農業所得に占める補助金の割合は以下の通り。
日本 39.1%
米国 42.5%
ドイツ 69.7%
英国 90.5%
フランス94.7%
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種苗法改正で農水省は、「もっと種子開発が儲かる構造にしないといけない」「自家増殖が容易にできるようになれば、国内で種子の開発販売している中小企業が利益を十分得られず廃業してしまう」と訴えた。しかし、これが国内ではなく海外の企業の利益に置き換えられない保証はどこにもないのである。
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ヨーロッパ(EU)は、温暖化防止の切り口から農業の25%をオーガニック(有機農業)にすることを決めた。
①オーガニックを25%といままでの3倍に。
②農薬を50%削減。
③畜産や魚への抗生物質も削減。
④肥満を防止。
⑤アグロエコロジー、有機農業、自然農法、精密農業を推進する。
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近年、ネオニコチノイド系殺虫剤の使用を見直す動きが加速している。市場に導入されて20余年、蜜蜂やトンボがいなくなっただけでなく、赤ちゃんを含む日本人全員の尿から検出されるようになってしまった。ネオニコチノイドは神経毒である。母親が食べれば胎児の脳に移行し発達障害の一因となりうる。
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モンサント社から突然、遺伝子組み換えナタネを栽培していると身に覚えのない通告を受けて以来、モンサント社と闘ってきたカナダの農家、パーシー・シュマイザーさんが昨年10月13日、89年の生涯を閉じた。シュマイザーさんは何度も来日し、タネが作り手である農民のものであることを訴えていた。
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種子法が廃止されて、多国籍企業による種子の寡占化が進んでいる。かつて日本では1993年、「平成の米騒動」があった。冷夏の影響で米の作況指数が74まで下がった。各地でいろいろな品種が栽培されていなかったら、もっと低い数字になっていたであろう。種子の多様性が失われることに危惧を感じる。
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種子法の目的は、種子を農家に安価に安定的に供給することで農作物の安定生産を続けることだった。そのことで国民への食料の安定供給が可能になる。種子法を廃止したことは、真摯に種子栽培に取り組んできた種子農家の誠意に背くものである。また、農家の生活と国民の生活を軽んじるものでもあった。
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高校生の30%、中学生の24%、小学4〜6年生の15%がうつ状態にあると2021年2月10日、国立成育医療研究センターが発表した。コロナ禍だが、それにしても中高生の3〜4人に1人が「生きていても仕方がない」と思っているのは大変なことである。いまの政治のあり方が子供たちをここまで追い込んだ。