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外資の土地買収が取り沙汰されるようになったのは2008年。以来、買収面積は公表値7607ヘクタール(2020年)まで増えた。この間、講じられた対策は、17道県が作った「売買の事前届出」条例(国内も国外も差別がない)くらいだ。「安全保障だから対策は国でしょう」と自治体は言うが国は無策を続けた。
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種苗法改正法案の中の「自家増殖禁止」は多くの農家を困らせるだろう。例えば、サトウキビは沖縄、鹿児島の南西諸島などでは5年に1回収穫したサトウキビから節ごとに切断し、芽出しして増殖している。それが自家増殖禁止になれば、これからは島の重要な産業が消えていくことになりかねない。
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種苗法改正にあたり農水省は、シャインマスカットを例に、日本の大切な種苗の海外流出を止めるためと説明した。でも、なぜシャインマスカットが海外で栽培されるようになったかといえば、現地(海外)での品種登録がなおざりにされたからである。改正前でも、迅速に登録していれば回避できたのだ。
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種苗法改正案が今国会で審議される。この改正は、規制改革の名の下、種子ビジネスへの民間企業の参入をさらに進めることを狙いとしている。自家採種を禁じ、多国籍企業による種子支配への道を開くこの流れは、まさにインドや南米をはじめ世界で問題となっている「モンサント法」そのものである。
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誰も、種苗法改正と共謀罪が関係あるとは思わないだろう。だが、その可能性がある。有機農家はよく種苗交換会などを行う。このときに参加した農家が自家採種禁止の種子を持っていくと種苗法違反に問われるが、それだけでは済まない。一緒に参加した農家が全員、共謀罪に問われる可能性があるのだ。
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コロナの感染が広がるエクアドルで、伝統的なトゥルーケ(食料交換)が復活している。外出禁止で食料入手が難しくなった人々に全国農民運動が有機栽培の食料パッケージを届け始めた。運動の代表者は「これが私たちの食料主権。食料は商品ではなく、すべての人の手に入るべき人権である」と述べている。
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外資による日本の土地買収で問題なのは税金面である。外国人が買収地を法人名義で購入し、海外在住のためと連絡不通にしておくと、「所有者不明」の扱いになる。転売しても法人登記をそのままにしておけば、所得税、不動産取得税、登録免許税等のほか、固定資産税も免れる。国は手出しができない。
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3.11の福島原発事故の恐ろしさを目の当たりにした国民は、誰もが「もう原発はやめよう」と思ったはずだ。それが再稼働、新増設に政策転換するという。再生可能エネルギーを増やす努力もせずに、ウクライナ危機を口実に燃料高騰や電力不足を言う。二度とあんな事故は許されない。
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米が本命だったかも? 種子法廃止でまず国は日本人の主食である米の種子を守らなくてよいことにした。そして今回の種苗法改正では、農家の自家採種が禁止されることになる。農家は、今後、永続的に多国籍アグリ企業(またはそれに支配された日本の企業)から米の種子を買い続けなければならなくなる。
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日本の食料安全保障は大丈夫か。フランスの風刺漫画に「日本人は自動車を食べるつもりか」とあった。日本は先進国で最低の食料自給率37%である。コロナ禍で、現在世界の農業生産国19カ国が食料の輸出を禁止もしくは規制している。この傾向は今後も続だろう。食べ物がなければ人は生きていけない。
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種(被子植物)が地球上に出現したのは約1億4000年前と言われる。それは人間が作り出すことのできない命の源だった。工業製品のように生命に特許を与え、特定の企業や個人が莫大な利益を得ることは生命に対する冒涜ではないのか。生命世界への謙虚さを失ってはならない。種苗法改正に反対します。
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1999年、南米ボリビアのコチャンバンバ市で水道が民営化された。米国企業が民営化を請け負うと、水道料金が値上げされ、それを払えない貧困層の人々が次々と死亡する事態となった。これに対し、市民は激しく抵抗、ゼネストを起こして、ついに民営化契約を破棄させた。日本も水道民営化が狙われている。
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農水省は、種苗法を改正しても「登録品種の自家採取も登録者(特許保有者)が許諾すれば続けられる」と説明した。しかし、政府は農業競争力強化支援法で「これまで開発した種を民間に譲渡する」と言っている。その「譲渡」を受けた企業が自社の保有する種を容易に無償開放するかは大いに疑問である。
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お金を出せば食料と生産資材が海外から買える時代は終わった。不測の事態に国民の命を守るのが「国防」というなら、国内農業の振興も立派な安全保障である。国防費を5年で43兆円にするというなら、農業分野にも年間で5兆円くらいの予算をつけてほしい。
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外国資本による土地買収で問題なのは、所有者が不明になることである。例えば、外国人が土地を購入し、海外に居住して連絡がとれない場合は「所有者不明」の扱いになる。また、外国人が法人名義で買収し、登記はそのままにして海外で土地の転売を繰り返すと、所有者は確実に不明になってしまう。
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2014年、ある深刻な論文が米国科学誌プロスワンに掲載された。2009年に採取された栃木県の新生児、それも1500g以下の極低出生体重児57人の生後48時間の尿のうち、25%からネオニコチノイド系殺虫剤の代謝物DMAPが最大0.68ppd検出されたのだ。DMAPは母体から胎盤を通じ胎児に移行したと考えられた。
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農地の売買については、農業委員会が管理していて一定の縛りがある。しかし、農業委員会が管理するのは農地だけである。耕作放棄地や遊休地に草木が生えて荒れると農地とみなされなくなり、雑種地に地目変更されることがある。こうなると外国資本がその土地を買っても問題ないことになる。
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日本が輸入する米国産牛肉には成長ホルモンが使用されている。しかし、米国では牛肉に「オーガニック」とか「ホルモン・フリー」と表示された牛肉が売られていている。米国でも、国内向けやEU向けの牛肉のホルモン・フリー化が進み、日本が選択的に「ホルモン」牛肉の仕向け先となりつつある。
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なぜいま種苗法を改正する必要があるのか。現行の種苗法でも、種や苗を自家増殖(採種)してそれを販売することはできない。譲渡する場合も許諾が必要である。また、登録品種を最終消費以外の目的で海外に輸出することも禁じている。つまり、海外流出を防ぐための改正など必要ないのである。
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国産レモンにはポストハーベスト農薬(防カビ剤)の使用は禁止である。しかし、輸入レモンにはポストハーベスト農薬の使用が許可されている。日本は米国の圧力に屈して二重基準を作った。「禁止農薬でも収穫後にかけると食品添加物に変わる」というウルトラCの分類変更で散布を認めた。
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キューバの著作家ホセ・マルティは、「食料を自給できない人たちは奴隷である」と述べている。高村光太郎も「食うものだけは自給したい。個人でも、国家でも、これなくして真の独立はない」と語っている。未来を予測する力のある人は皆、食料自給の大切さを訴えている。自給率37%など恥ずべきだ。
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外国資本が日本の農地を買収することは合法である。2009年の農地法改正で「一般法人の貸借での参入規制の緩和」が盛り込まれた。さらに2016年の改正で、農地を所有できる法人は「農業生産法人」から「農地所有適格法人」に変更された。この「農地所有適格法人」には外資も含まれるとされたのである。
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ドイツのバイエル社がモンサント社を買収し、米国デュポンとダウ・ケミカル社が経営統合。また中国化工集団公司がスイスのシンジェンタ社を買収。このモンサント・バイエル、デュポン・ダウ、そして中国化工集団公司・シンジェンタ、この三大グループが今、世界の種と農薬のシェアを支配している。
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遺伝子組み換え企業が次々と訴訟を起こされ、賠償額が巨大になっている。バイエルは、米国における除草剤ラウンドアップをめぐる訴訟の和解で最大109億ドル(約1兆1000億円)を支払うと発表した。陪審員が企業の安全審査よりも、独立した科学者たちの安全審査を信頼するようになったことが背景にある。
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今国会では、ほとんどの国民が知らないまま種苗法の改正がなされようとしている。法案の中でも「自家増殖禁止」は重大な問題がある。例えば安納芋は、種子島の安納地区で栽培されてきた伝統的な品種だったが、今では品種登録されているので、これからは自由に蔓を這わせて増殖することは禁止される。