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ボーダーに戻ると
所長が全く違う人だった
「おかえり」
並行世界?早く戻らないと!
「このままで良いんじゃない?」
繰り返し聞かれた
「いーえ!所長は太ってて偉そうで変に常識人なあの人じゃないと駄目!」
飛び出し暫くすると見慣れたボーダー
「遅い!」
怒る所長のお腹を2人でモニモニ押した
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訪れた村で石を投げられた
「よそ者!鬼!」
武装しなかったマシュも私も怪我を
「うちはほんまの鬼やからええけど かわいそやねぇ」
ケタケタと酒呑童子
明日また行こう…
次の朝村は滅んでた
所々血溜りと肉
笑い声が響く
「あんな鬼、鬼いわれたら
そら鬼らしいとこ少しは見せなあかんよねぇ?」
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まさにもて遊んでいた
骨も抜かず食い散らかし
ただ私に石を投げた人達は全員
生皮を剥がされ広場に積まれていた
「…仇討ちとかじゃないんだと思う」
「はい きっと」
でも、彼女は私達を彼女なりに大切に思っている
そう思ったから責めなかった
鬼は2人の憂いた顔を見て一層笑い
笑い声だけが響いた
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記録用カメラ
試しにマイルームで撮ろうとしたら
背後にびっしりと黄色い顔認識の枠
「うひゃあ!」
誰もいない
…霊体化?
「出てきて!」
サーヴァントがぞろぞろ
「もう驚かせないで!」
10騎を超えた頃から寒気がした
こんなに?私に内緒で何のために?
結局35騎もいた
カメラは次の日壊れた
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手だけの幽霊が出る
岩の隙間、ベッドの下
探すような動きをし消える
無害だが俺にしか見えない
「ちょっと不気味…」
攻撃がきた時、その手に引っ張られ助かった
手の感触に覚えがあった
次の日瓦礫から手が
そっと握ると静かに消えた
「どこかの俺が手を握れなかったんだね」
「ごめん、マシュ」
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それきり出てこなかったが
時折マシュの酷い怪我が戻る頃には治っていた
「代わってくれているのでしょうか」
敵の宝具の熱線
盾を構えたが耐えられない!
横から一緒に支えてくれた人がいて
気づくと熱は消えていた
「きっとあれが最後だと思います」
「安心して下さい 守りぬきます
先輩も、私も」
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カルデアに戻ったらいきなり罵倒され叩かれた
「出てけ!」
「出て行きなさい!」
マシュも泣きながら叩く
「…どうして?」
「あなたはここにいてはいけません!」
カルデアは私の家なのに…皆家族同然なのに…
「いいえ、ここはあなたのカルデアではないんです!」
「先輩の体から、出て行って!」
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「各自詠唱は?」
「〇〇〇による福音書第△節までです!」
「こっちは〇〇経半分くらいまで!」
「聖水は!」「塩と酒!」
結局追い出された
寂しい 寂しい
「あ」
あそこのカルデアはマスターの魂がからっぽだ
もう一年はかえってないみたい
「あそこなら、きっと」
「私のカルデアになってくれる」
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執拗に1人の職員に話しかけられた
「僕は昔から君を知ってるんだ」
勿論国籍も違う他人
「子供の頃からね」
半分無視していた
ある日マイルームに戻ると赤いランドセル
中の教科書の名前が見えた
[3年2組 ふじまる りつか]
小学生の時不審者に盗まれていた
探しても職員名簿に彼の名前はなかった
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人理修復を進めるうち
強敵が分かるようになった
なんでかって
びっしり纏わりついてんの
倒された私やマシュ達が沢山
キャメロットの騎士達なんか姿が見えないくらい覆われてた
別に害もなければ益も無かったけど
勝った時彼らがいっせいに
「「「いーーなーーー」」」
って叫んだのは流石に怖かった
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特異点を修復した時も聞こえた
実はカルデアでもたまに聞こえる
「いーなー」
「いーいなー」
でもなんの実害もないんだよね
それがなにより怖い
もし私やマシュがしんでしまったら
生きて進んでいく誰かを
呪うことすらできず
「いーなー」
と羨むことしか出来ない何かに
なってしまうんじゃ、と
187
強い敵にあった
会うたび令呪を1画ずつ使った
「あとふたつ」
「あとひとつ」
「これがさいご」
使うたび呟き消える
4回目が来た
「もう無いねぇ!!」
ニタニタと近寄る
丁度日付が変わった!
1画で宝具を打つと倒れ動かなくなり
腹の中から骨、骨
「こうやって数多のマスターを食ってきたんだな」
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それ以来決まりが出来た
「残り令呪を数える敵が来たら戦わず速やかに離脱する」
「戦闘が避けられない場合は日付をまたぐまで長引かせるか、嘘の残数を口にする」
最後に
「残り令呪を執拗に気にする味方サーヴァントには注意すること
年老いた猫が化けているかもしれないから」
猫と茶釜の蓋より
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目がさめると誰もいなかった
部屋も食堂も空っぽ
「まさか大奥みたいに攫われて…!」
人っ子一人いないカルデアベースを走る
「おーい!おーい!」
…
「我々を知覚出来ないようだ」
「何らかの攻撃、認識阻害かも」
「おーい!みんな!」
「…先輩 みんなここにいます」
「マシュ!どこだ!」
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カルデアベースで感染症が蔓延
皮膚が壊死、脳を侵され
呻きながら食べ物を探す
人間は、俺だけ発症しなかった
「おぉうー あぁー」
「ほら所長 こぼしてるよ」
「あぁうぅー」
「マシュ 縛ってごめん 」
「おうぅー」
「きっと異聞帯とか解決したら皆治るんだ!」
「そうだよね?」
「あぁあーう」
191
カルデア襲撃
凌いだが重傷者多数
ベッドが足りず廊下に溢れ夜戦病院のよう
酷い臭いの中、ほぼ無傷のマシュと私は看護に奔走
凄惨さに座り込むのを堪え、声をかけて体を拭く
爆発音!
敵の第二陣 が
誰かが突っ込み吹き飛んだ
「命を!救う、為なら!」
「私は何でもするわ!」
天使の叫び声が響いた
192
レイシフトした
がいいがとにかく暑い
「暑いー」
じりじりと蜃気楼
ふと前にオアシス、木陰に泉
マシュと休もう!
水着礼装に着替えようとした時
「先輩!駄目!」
必死の形相のマシュ
「ここはアナスタシアです!」
周りを見ると吹雪しかなかった
私が途中から暑い暑いと言い出し心配だったという
193
森に入る前、少女からお守りを貰った
「どうかずっと持っていて」
森はキメラやヒュドラがひしめき何度も襲われたが、無事に抜けられた
「お守りのおかげだね!」
カルデアに戻るとサーヴァントに取りあげられた
「それは大切な…!」
袋をこじ開け中の紙を見て彼女は言った
「これは生贄の目印です」
194
「たすけてぇー」
悲鳴が
近づくと女の子がケガレガミに襲われてる
助けようとするが止められる
「あれは罠だね」
でも女の子が!
「いいや、あの子はもうしんでる
見なさい 口が動いてない」
「たすけ たすけてぇ」
声はケガレガミからしてた
女の子は不自然にぐにゃりと動く
急いでその場を離れた
195
異聞帯の王と戦い樹を切除
この世界は終わる
それをしった親子たち
「この子だけでも一緒に」
…それはできない
「なら名前だけでも」
「マリア」「トーマス」「ヨシュア」「ガブリエラ」
時間まで名を書きとめ、頭を撫でた
「さよならリツカ」
「さよならマシュ」
「ずっと僕らのこと覚えててね」
196
マシュ以外全滅
マシュも限界、盾も振れない
そんな時ムシュフシュが
今彼女が毒を喰らえば、そう思ったら体が動いた
迫る角を令呪の無い方の腕で
「先輩!」
「毒は効かない!マシュ、今!」
なんとか倒した 止血すればカルデアまでは持つ
「泣かないでマシュ
これが2人で生き残る1番の方法だった」
197
敵の宝具で吹き飛んだ
「マシュ!」
「先輩!」
手を握り庇ったが爆風で意識が
気付くと崖下
私は大事ない
でも先輩がいない
返事もない、遠くに飛ばされて?
側に盾が落ちている
その下から赤い 赤いああ、あの下にいるのはきっと
「マシュの盾は凄いな!」
「はい、絶対この盾でお守りします!」
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レイシフト先の民家に食事と寝床を貰った
「明日またお礼を言おう」
起きると誰もいない、いや
全員衰弱し死んでいた
井戸水からの病だった
1人ずつサーヴァントと埋めて、土饅頭だらけの庭
「お客様がいらしたから奮発して豆と干肉のスープです!」
「…あれだったのかなぁ ごめんね気づけなくて」
199
優しい職員がいた
私やマシュを寝ずに看病し見舞いにも頻繁に
私達の怪我を撫で目を伏せる癖があった
ある日その人はしんだ
サーヴァントにころされた
「なんで!」
「あの部屋を見れば誰でもそうする
お前達は見ない方がいいが」
部屋は写真だらけだったらしい
横たわる私達の白い顔と、怪我のアップ
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ゴーストと遭遇
襲って来ず泣く
「帰りたい所があります」
聞くとこの先の屋敷
「案内して貰えませんか」
怪訝な顔のサーヴァントをよそに連れて行くとお礼を言い消えた
次の日屋敷の前は人だかり
妻を虐めころした主人が狂死したらしい
「ありがとうございました」
「これでやっと願いを果たせます」