226
「そうだったんだ、ありがとうねジャック」
「えへへ」
「ねぇ、おかあさんっ」
「おかあさんのおかあさんの話、聞かせて?」
「おかあさんが産まれてからしてもらった楽しいこと、すてきなこと
わたしたちみんな知りたいの」
「お胎の中じゃない、でもお母さんの所に帰りたいってどんな気持ち?」
227
レイシフトから戻ると驚かれた
先ほど俺が独りで戻り
「マシュも皆しんだよ」
と言い部屋に帰ったという
呆然とした所に俺が戻ったらしい
勿論全員無事
「敵かも」
マイルームは水溜りを残し誰もいなかった
「どこかの君だっただろう」
「きっと彼もしんでいる
そのことだけでも伝えたかったんだね」
228
「今晩マイルームに寝かせてくれ!」
職員に頼まれた
「いいよ」
「サンキュー」
声が震えてたのが気になったがそのまま交換し寝た
次の朝彼は消えた
後から聞いた
俺を攫おうとするモノがいて
対処出来ず背格好の似た彼を替え玉にしたと
彼はすぐ遺体で見つかった
体には
「うそつき」
と彫られていた
229
「昨日学校でさ」
「さっきお母さんが」
先輩が不思議な事を言うようになった
「あの、学校とは…」
「あ、夢だったわ あはは」
だんだん『夢』の話は増えた
ある日の戦闘中
「マスター!指示を!」
「…めて」
「はやくはやく覚めてよ こんな怖い夢」
先輩の『夢』の世界はこちら側になっていた
230
「しっかりするんだ!」
「これは夢これは夢…」
強制帰還後先輩は頬を叩いたり
必死
「どうしたら…」
皆で頭を抱えたその時
「あ 」
先輩はそう呟いたきりばたり、と倒れ目覚めなかった
「本当に『夢』から覚めてしまったのかも」
ここは本当に現実?
それとも先輩の見ていた夢?
231
マシュの血は赤かったですね
赤い血が流れていましたね
それはきっと、当たり前のことかもしれない
でも、本当にそれを実感出来ていたでしょうか
血の流れないエフェクトのゲーム画面から、実感出来ていたでしょうか
あの子の赤い血は今もどこかで流れ続けている
我々に見えないだけで
232
高難易度
マシュマーリンジャンヌで耐久
「よし!1騎も落ちずにクリアだ!」
ふと見ると、辺りは血の海
勿論3騎のだ
治して負傷して治して負傷して無敵で宝具を受けて負傷して治して
「うわあああ!!」
マスターは絶叫し気を失った
「メンタルケアを」
「彼はこの戦い方が何なのか気づいてしまった」
233
山を2人で歩いている
「先輩」
「?」
「私怪我をしました」
え、と横を向こうとすると
「見ちゃだめ!」
反対からマシュの声
「私じゃありません!」
「頭が割れました」
「足が取れました」
声は街の入り口まで続いた
門をくぐった時思い出した
「マシュはカルデア待機だ…」
隣には誰もいなかった
234
「しかし
よくどちらの顔も見ずに戻ったものだ!」
「…うん」
「あの時カルデア待機の事は忘れてたけど、あのマシュはどちらもおかしいって分かってた」
「見るなっていってたマシュ
ずっと爆笑してたんだ、俺の顔に唾が飛ぶくらい」
「ありえないでしょ?」
「見ちゃだめえーっあはっあはは!!」
235
小さな池
マシュと水着で遊ぶ
誰かに足を引かれた
「マシュ?」
彼女は離れた所
みると足に髪が巻きつく
「出なさいッ!」
サーヴァントに引き摺り出された
「あれは水じゃない!
宝具で溶かされたサーヴァントと人間なの!」
足にへばりつく髪の毛は橙と桃色だった
「どこかの私たちだったんだ…」
236
237
鏡や反射物にも映るから全部捨てた
スマホもだ
おかげでバイトも出られない
「しつけーんだよ!恨むなら売ったマスターって奴を恨めよ!」
「ふふ、恨んでなんかいないわ」
「それに売ったのはマスターじゃないの」
「そうね
今日はマスターの話をしましょうか」
「平凡で不運な可愛いマスターの話」
238
「マイルームが怖いんだ」
「なんだか落ち着かないんだよ」
サーヴァント達はふむふむ、と相談に乗る
「話して気が楽になったよ、ありがと」
マスターが去った後も話は続く
「悪い何かでしょうか」
「守りが足りないのだ」
「今夜から霊体化監視を20騎に増やしましょう」
「マスターを守る為に!」
239
怖い女に追われる夢を見て目覚める
体が動かない
金縛りだ
胸が苦しい
暗闇に目を凝らすとジャックが乗っていた
「重いよ…」
彼女達はニッと笑って
「おやすみ、おかあさん」
と残して去った
目の端で追うと彼女の刃から血が、ぽたりと落ちた
「やっつけてくれたのか…」
悪夢も見ずに朝まで眠った
240
「年末、実家に帰ろうと思うんだ」
マスターは突然言い出した
「え、先輩それは」
「お土産買ってくるよ」
そういい姿を消した
勿論消えてなどおらず
シュミレーターの
新宿のマンションの1室
コロラトゥーラ達と一緒にいた
「ガキ使面白かったなー
駅伝も見ないと!」
テレビ画面はずっと砂嵐だった
241
「ぐぬー!」
先輩は毎日筋トレをします
特に重いものを持ち上げるトレーニング
「そろそろ休憩に…」
「ありがと、あと二回やったら」
少し心配です
「マシュ、気持ちは分かるけどあの子の気持ちを汲んであげて?」
「?」
「あんなに頑張るのは、二度と貴方を瓦礫の下敷きのままにさせないためよ」
242
マシュと私の髪の毛が細くなり抜けた
歯もグラつき、顔にもシミがでて皺が寄る
「急速に老化してる」
外部からの攻撃の形跡はない
「一体どうして…」
調べると聖杯が1つ消えていた
「マシュ、無理かもだけど
おばあちゃんになっても一緒にいられたらいいね」
「はい、先輩!」
願いは叶っていた
243
マスターが聖職者のサーヴァントを遠ざけるように
仲の良かったジャンヌも、ゲオルギウスもマルタも
そして部屋に篭り独り言を言う
「…一体どうしたんでしょう」
「俺、聞いたよ」
ムニエルが言う
「最近死んだ両親の幽霊がマイルームにでて、励ましてくれるらしい」
「消えて欲しくない、ってさ」
244
私には幽霊が憑いてる
それも、私自身
「そこはスキル使って…そう」
最初は驚いたが無害
親切だし
「勝てた!」
「…気を抜かないで」
ついに幽霊と人理修復した
しかしカルデア襲撃時にいきなり襲われた
「何で?」
「さっさと行け!」
「…じゃないと成り代わりたくなる
…世界を救え!ばーか!」
245
「私は前ここで撃たれた…だからもう行けない
後はあんたがやるの」
「指示も下手で、トロくて、素材も足りなくて、いつもギリッギリで、危なっかしいあんたが!」
「あんたが、やるんだ!」
そう叫ぶ彼女は血濡れだった
なんとかボーダーにつき、素材を確認するとゴーストランタンが5個増えていた
246
247
まずい、まずいといいながら彼女は骨と肉を食べ続ける
「や、やめろ!」
あまりの事にマスターが止めようとする
すると
「旦那はん、邪魔したら
あんたはんでも手加減できへんよ
いねや!!!」
普段ならありえない彼女の語気に肝をつぶし、全員部屋を飛び出した
誰も彼女を止められなかった
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「止めないと…」
「やめい!」
茨木童子が叫ぶ
「よいか!吾も酒呑のことを全て分かるわけではない!
でもこれはわかるぞ!
あんな死にかけの痩せ細った男なぞ
わざわざころして食べるものか!
ならば理由がある
だから…」
「…わかった」
ばり、ばり
「…ほんまに、最期までつまらん男や」
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「…これを」
「奇奇神酒やないの」
「大切な素材やから
飲んだらあきまへん!ってマスターに言われてなぁ
…あんたはん大人しい顔して」
「盗んでませんよ!
ボーナスが現物支給になったので、頼み込んで」
「…ふぅん、それで?うちに酌でもさせるかえ?」
「いえ、下戸なので」
「…つまらん男」
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「酒呑童子さん、髪飾りです」
「珍しい肴だと、よければ」
「日本の上等な着物だそうです、迷惑じゃなければ」
「…あんたはん うちに何をさせたいん?鬼だって分かっとるんやろ?」
「ええ、分かっています
でも望むものはありません
ただ、そうしたいんです」
「勝手やね
…ほんまにつまらん男」