826
「あ、いま閻魔大王様がついに地獄追放を命じられました」
「そんなリアルタイムで!?」
「これ以上地獄を荒らされては困ると」
「それでその男と母は天界に?」
「いや、その男は残るようですな
お母様は説得なされてるが聞かぬ様子」
……
「だーかーら拙僧は行けませぬ!」
「道満のわからずや!」
827
「また義母さんのお供えに虫集っとる!」
「母さん生きてる時から虫に好かれとった、蚊蝶ムカデ!」
「何でそんなに?」
「『虫の王子様』に好かれとったんだと」
「なら熱烈ね、毎日仏壇来とるなんて!」
…
「クソッ…虫共のせいで来る度バレる…」
「いつもありがとオベロン」
(本人にも…最悪だ)
828
「離婚したんも『虫の王子様』のせい?」
「いんや、ありゃ暴力
ただ親父は離婚渋ってた
そん時位から母さんに虫が集まり始めて
しかも親父には襲い掛かったんだと
んで耐えきれず離婚、ってさ」
「じゃあずっと王子様は義母さん見守ってたんだねえ!」
(みなまで言われると恥ずかしいなクソ!)
829
父は豆撒きをしない
「何で?」
「内緒だぞ?父さん鬼には世話になったんだ、お前にも力を貸してくれるかも」
クラスの皆に話したら笑われた
でも渡辺くんだけは
「うちもやんない、理由は違うけど」
父に話すと
「綱さんにも世話になったな〜」
変なこと言ってた
今日も節分
父は小声で
「鬼は〜内」
830
父はお酒も甘い物も好きじゃなかったけど
その日はお供えしてた
父はお人好しでよく騙されそうになったが
悪人はすぐ逃げていった
『鬼』のお陰らしい
父の言いつけ通り亡くなった時
棺に守刀を置かなかった
そしたら綺麗に肉が食われてた
泣き崩れてた母も、誰も知らない
俺と父とだけの秘密
831
パパはママに内緒で倉庫に沢山チョコレートを
「昔貰ったの食べきれてなくて」
時々食べてるのを見てた
ある日つまみ食い
パパが「どうしようかな」って悩んでたのなら怒られないかなって
パパは叫んだ
「それは始皇帝の!」
私は歳も取らず病気もしなくなった
パパは毎日泣いてる
『仙丹チョコ』
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変に思ったママが病院に連れてったけどムダ
20歳になっても子供のままの私をママは気味悪がり、パパに引き取られた
引越しを転々としたある日
パパに土下座された
「本当にすまなかった、倉庫を見せなければこんな事には
独りにはさせない
俺も一緒に生きるから」
パパはそう言い、チョコを食べた
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「お前、馬鹿にも程があるわね
お前も娘ももう安息の地などない」
いつからかパパと私はそのお姉さんと一緒にいるように
なんでも「先輩」らしい
「勘違いするな
お前と私は全く違う…看取ってやろうと思ってたが」
なんだかんだパパには小言を言うが、私には優しい
花のように綺麗な、虞美人さん
834
母の死後夢を
長身着物の男に母が無理矢理手を引かれる夢
「嫌っ、離して!行かない!」
母が地獄に連れてかれると霊媒師に相談
すると
「…逆ですね」
「逆?」
……
「だから拙僧は行けませぬ!観念して行きなされ!」
「どこまでもお供してくれるんでしょ?道満のいない天界なんて絶対行かない!」
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「いくらなんでも拙僧は無理です!
今まで散々外道をやって参りましたから」
「なら私も地獄に行く!異聞帯も滅ぼしたし、地獄行きでしょ?」
「だーかーら拙僧が交渉して免れたんです!というより地獄に連れてったら紅閻魔殿に舌ズタズタにされます、拙僧が」
(微笑ましいな)
「晴明だまっとれ!」
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公園にて
「おかあさんがねー」
「嘘つき!お前んちシングルファザーじゃん!」
「うそじゃない!おかあさんだもん!」
…
「おかあさん、今日悪口いわれた」
「…俺のせい?」
「ちがう、おかあさん悪くない
でもねわたしたちえらかったの
殺さなかった、ほめて?」
「…偉かったね」
『混沌、悪』
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次の日
「うわ!ジャックが来た!」
「名前も髪の色も変だし、あっちで遊ぼーぜ!」
「…」
ポツン
「お嬢ちゃん1人?可愛いね遊ぼうよ」
「わたしたちと遊んでくれるの!?」
…
「今日はたのしかった!」
「よかったねジャック」
「次のニュースです
先程〇〇公園男子トイレで男性の切断遺体が…」
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じいちゃんは同じ事何度もする
俺の顔も忘れちゃう
「にんちしょう」「ボケた」って父ちゃん達は
…
聖杯戦争勃発
敵のサーヴァントが藤丸家に
「助けて!」
その時
「来い、道満!」
じいちゃんが叫ぶと
「お呼びですか?マイマスター」
「令呪を持って命ずる、大切な家族を守れ!」
『消えない絆』
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「宝具は使うな!敵のランサーは速い!動きを止めて叩け!」
「マスター、仰せの通りに!」
ドーマン、と呼ばれた奴はあっという間に敵をやっつけた
「…この事は誰にも話すな、いいな」
……
「お前のじいちゃんボケてんだってな!」
「バカにすんな!
じいちゃんは、最高にカッコいいんだ!」
840
「符が、道満の符がないわ」
「机の上にありますぞ」
「ありがとう!あら、どなただったかしら?」
「…新任のヘルパーにて」
「そうだったわね!
これ大切な物なの
「ずっと貴方を守る」ってね!
今も目に見えないけどいてくれるんだわ」
「…側で貴方を守っていますとも」
『例え貴方が忘れても』
841
「符がないわ!」
今日もマスターは仕舞い込んで忘れてしまった符を探し
拙僧はその度新しい符を見つけやすい場所に置く
「ありがとう!…どなただったかしら」
「…」
「でもあなた、どこか似てるのよね
私の大切な仲間、お友達、なんて言っていいか分からないけど、似てるの」
「光栄にございます」
842
一回ちゃんと言っておいた方がよろしいかなと思うので申しますが
藤丸立香とマシュはお互いを想いあっていて、私はその想いを非常に大切に感じています
しかしだからといってそれを恋愛、結婚という場所に着地させるつもりは
私の創作の中ではありません
私には出来ません
それだけはご承知下さい
843
近所に噂の奇妙な一家が住んでる
若い男、若い女、女の子2人
単なる若夫婦だと思うだろ?
でも違う
「どうも、藤丸立香です」
男が自己紹介した
「私は立香の母です」
「わたしは皆のお母さんです」
「わたしたちのお母さんは藤丸立香です」
どうだ?理解できたか?
しかも全員血は繋がってないんだと
844
父の遺言は不思議だった
「太陽のピアスはたまに日に当てて」
「ブレスレットは絶対着けるな」
「ただの石や紙だと思っても捨てず、売るな」
「チョコは決して食べるな」
相続で揉め俺は紙やチョコを貰った
とりあえず仏壇に供えてる
他の兄弟達は遺言を無視して皆不幸になった
親父、あれは何なんだ?
845
どんなガラクタに見えても法外な値段で買い取ろうとする奴らがいたらしい
でも上手くいかず
最終的に何故か全部俺の手元に
その後話を聞きつけたか泥棒が何度も入りかけたが
一度も何一つ盗まれた事はない
入り切らない分は貸し倉庫に
一応バチは当たってない
…誰かに見られてる気がするんだよなあ
846
母が死んで葬儀を頼んだ
ところが和尚さんは渋る
「お金ですか?」
「まさか!見えるんだよ
お母さん浄土じゃなくて
色んな宗教のあの世に連れてかれそうになってて、喜んでるの
だからお経読んじゃって良いのかな…
あ!着物着てる人達がいっぱい来た!
きっとこの人達は仏教派だな」
「仏教派…」
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「でも揉めてるな、地獄か極楽か浄土かで」
「何で分かるんですか?」
「皆人じゃない、神様みたいなもんだな
何?それはそれとして現世ではちゃんと供養してくれ?分かりました
きちんとつとめさせていただきます」
「何でそこまで分かるんですか!?」
「あちらさんガンガンアピってくれてるから」
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「うわー織田信長もいるよー大丈夫かなあ焼き討ちしないでくれるかなあ?」
「織田信長がいるんですか!!?」
「しかもめっちゃそれをアピってる奴がいるな、信勝だってさ
お母さん何者?異世界転生とかした?」
「いやまさか!」
「でもお母さん嬉しそうだよ、よかったね」
「よかったのかな?」
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上手くいかない
空気読めなくて嫌われる
笑わせようとして笑われる
聖杯戦争?家系だもんねやりますよ
…絶対サーヴァントとも仲良く出来ないだろうなぁ
「あの、エヘヘ、ゴッホです
あっ幻滅しないでごめんなさい、その…」
「あヒッ、よろしくねっ!」
『コミュニケーション苦手同士の聖杯戦争』
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「サーヴァントは使い魔…関係ない!友達になろう!」
「はい!マスターさま」
「ゴッホカッター!」
「ふふゴッホカッターてなに
…戦闘中なのに笑ってごめん」
「令呪で命令?したくないよ」
「それでも私たちはサーヴァントとマスターなのです」
「マスターさま、目を閉じて、宝具を使います」