801
日常に戻った藤丸立香
が
アンプルの打ち過ぎが祟り痩せ細り入院
足繁く通う1人の男
「世界を救った代償がこれか」
「無様だな」
「メロンを持ってきた、勿論君は食べられないからね、俺のだよ」
…
いよいよという時
「いつも来てくれて嬉しかった
ありがとうオベロン」
「最期まで、気持ち悪い奴」
802
「友人さんでしたか?」
「まさか!腐れ縁だよ」
「身寄りが無いんです、どうすれば」
「それなら後は俺がやる」
藤丸立香の遺体は男と共に消えた
……
「ありがとうね」
(痛い、苦しい)
「いつも嬉しいよ」
(楽になりたい)
……
「もっと早く、殺せばよかったかもな」
オベロンは独り、呟いた
803
バーヴァン•シーは塞ぎ込む
「…人間の、母の日あっただろ?だからお母様に欲しいものないかって
「お前からは何もいらない」ってさ
やっぱり嫌われてるんだ」
モルガンは微笑む
「ここであの子と共に過ごすだけで最高の贈り物、他に何もいりません」
藤丸は叫ぶ
「あー!言葉が!足りてないの!」
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「エミヤ!ブーディカ!バーヴァン•シーとケーキ作ってほしい!あと誰かカーネーションのバスケット一緒に作って?
ナーサリーはモルガンをお茶会に招待して!
…え、これ以上嫌われたくないから何もやらない?
ちっがーーう!
これ失敗したら私八つ裂きにしていいから!」
『遅れた母の日大作戦』
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母から
「どうしても困ったら開けて」
とお守り
ある時仕事も恋愛も失敗、死ぬ前にと開けた
中には目のついた不気味な紙
「あの方もつれない!贈り物を他人にやるなど!…娘なら仕方ない
パワハラ上司モラハラ彼氏、呪殺しますか?」
「反省する程度に…」
「あは、お母様に似ましたな」
『お呪い』
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「それで、お母様はお加減いかがですか?」
「…亡くなりました、今年」
「それで、どうされましたか?」
「近親者のみで通夜葬儀をし、納骨も済んだ所です
葬儀では母の好きな色の花を沢山入れて、送りました」
「…そうですか
よかった、あなたを殺さずに済みそうですな」
(何かを試されてた!?)
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藤丸立香の墓には、毎日花が
不思議な海外の花もあれば
菊やユリの時も
「友人が来てくれるから」
父は生前言ってた
ちょうど墓参りの日、少女がヒマワリを供えてた
「いつもありがとう」
「ひっ、エヒッ、この花はゴッ…私にとって大事な花なので、大事な方に…」
「父さん、友人さんに恵まれたね」
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少女が多いのを母がいぶかしんだ時期もあったが、見ている限り本当に「友人」なんだと思った
ある時は金髪の少女に
「余はバラが好きだ
供えたいが、この国の慣習ではタブーか?」
「わかんないけど、父さんなら喜ぶだろうから、お供えお願いします」
「うむ!
ご苦労だったな、よく休むが良いぞ」
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老人がデイケアスタッフに語る
「俺は昔冒険したんだ!サーヴァン「はいそこまで!協会とか面倒なのでストップですぞー!」
…
「すまん道満、何度も言われてるのに
俺ボケてきたかもしれん」
「拙僧はそうは思いませんが
…何年経ってもマスターが拙僧をリンボと呼び違えた事、一度もありませぬ故」
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「そりゃそうだ!リンボは敵だ!平安京で倒した!
お前は召喚に応じて来た仲間だ!人理を守るサーヴァントだ!そうだろ?」
「ええ勿論
それだけ頭がハッキリされてるのでしたら心配いりません
単に昔話を自慢したい普通の「おじいさん」になったのですよ」
「言ったな道満!」
「正論ですので、ふふ」
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「助けて」
呼び声に道満が応える
「はて、聖杯戦争で拙僧を?街を地獄絵図にしたいのですかな?」
…
街はとっくに地獄絵図だった
ゾンビが氾濫
「これは…」
「えーん、えーん」
泣いてるのはオレンジ髪の子
「マスターですな?」
「ママが困ったら『どーまん』呼べって」
『この子を助けて、道満』
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「お怪我は?」
「手かまれた、でもゾンビなんない」
「毒耐性!…お母様は?」
「おかーさんずっと寝ててゾンビいっぱいきて、にげなきゃなのに、うわああん!」
少女の手には符が
(寝たきりながら最後の力で渡したのですか…)
「マスター、これは戦いです
生き残り、お母様の仇をとりましょう」
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藤丸立香はそれまでの体の酷使が祟り寝たきり
聖杯戦争が勃発し
キャスターが街をゾンビだらけに
寝たきりの藤丸はマスター適正があったが、動けない自分がなるより娘に託した方が
娘の生存率が上がると考え、符を託す
自分も毒耐性でゾンビになれないため生きながらゾンビ達に食われた
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道満の他にも候補はいたが
ナイチンゲールはバーサーカーのため魔力消費の観点から無理
アスクレピオスはすでにキャスターが召喚されていたため無理
道満は宝具が今回のキャスターと似ており、解決策や立ち回りが上手いのでは
またエクストラクラスのため自分の記憶や記録を有してる可能性に賭けた
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頼光、酒呑、マスターで潜入任務
変装し歩く
現地の人が声を
「親子で旅行いいねえ」
「おっ!?…そ、そうですわねホホ」
「特に奥様とお嬢様はそっくりだ!」
「牛と!…はい、よく言われます!ね、ママ」
「ええ、自慢の子達でして」
……
「吐き気するわ」
「こっちのセリフです!虫の娘など!」
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「潜入作戦成功!次はマスター待機で頼光と酒呑童子だけで頼むよ!」
「…」
「…」
…
「はいママ!あーんして?」
「あらアイスを?ありがとう〜」
「親子なのに友達みたい、娘ってのは良いわねえ」
「…うん、ママだーいすき!ね!」
…
「めちゃくちゃ疲れるわ」
「早く終わらせて帰りますよ」
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バーヴァン•シーとモルガンを共に編成
ところが
「マスター、必要ありません無意味です
編成から外すように」
「…お母様、はい…」
「あー!戦いは!私が全部やるから娘がいても意味ない!てか危険な目遭わせたくないんだよね!」
オベロンが叫ぶ
「何です糞虫!」
「言葉足りないんだよ女王様!」
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「あー!お母様の役に立ちたいな!私だってサーヴァントだし、守られる存在じゃない!ちゃんと戦って認めてほしいなーー!」
「おいテメー何言って!」
「見ててイライラすんだよね
マスター困らせんのも程々にしろよ」
「ごめん、俺喜ぶと思って…」
「う、嬉しいから!」
「夫よ、私も嬉しいです」
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藤丸立香の体は限界だった
瞬く間に痩せ細り
「沢山のサーヴァントがこの体とカルデアで縁を結んでくれた
死んだ後、悪用されるかもしれない…だから」
「うちをよんだんよね?ええよ」
酒呑童子は藤丸の顔を覗く
その息が止まるのを見届けてから
骨の一片、血の一滴残さず食い尽くした
『鬼の葬式』
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バリ、バリ
「ああ、骨も脆くて味ないわあ
肉も血も、死にたてとは思えへんねえ」
パキパキ バキッ
「死んだ後骨も残らない
墓にも収まらない、それを選びはったんやね」
グチャ
「うちが座に記録持って帰るさかい
安心してな、旦那はん」
藤丸立香、触媒用に回収を試みるも忽然と消失 以後不明
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藤丸の孫は「視えた」
「ばあちゃんの後ろ、おっきなピエロおる」
「あー…すぐ分かるな」
…
「蝶々のはねの王子様!」
「えー来てくれてるんだ、意外」
…
「金のコップ持った女の子!」
「わ!嬉しいねえ」
…
最期の時
「ばあちゃん、沢山来とるよ、部屋はみ出してる」
「…そっか、ありがとう…」
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「ひさしぶり!」
「頑張ったなあ」
「さあこちらへ!」
「いえこちらへ」
「私達と共に」
「こっちです!」
「いやこっちだろ!」
「「「「ムキーーーー!」」」」
「みんな、喧嘩しないでねえ〜」
…
「ばーちゃんどこ連れてくかでケンカしとる、あはは!
友達沢山でよかったな、ばーちゃん」
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「お前はばあちゃんっ子だったもんなあ
きっとばあちゃんも天国でお前を見守っとるよ」
「ばあちゃん、皆ケンカなるから順番に旅行行くって言ってた、最初はミクトランパだって」
「み、みくとらんぱ?」
「うん」
「んでヴァルハラ見学したら冥界行って〜」
「ゔぁるはら…
母さん、なんか凄いな…」
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母立香が死んだ後
夢枕に変な男
「お気の毒ですがお母様は地獄に…シクシク」
慌てお寺の和尚に相談
「確かにその男の言う通り、わしの力ではどうにも」
「そんな…」
「しかし見える
半裸の着物男とお母様が釜茹で温泉に入り、地獄の龍を倒す様子
エンジョイされてますな」
「地獄を、エンジョイ…」
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「その上その男、火車を乗っ取り観光しております」
「母は大丈夫なのですか?」
「大丈夫です、めちゃくちゃ笑っています」
「そんな男と母が何故共に地獄に?
あの母です、浮気というわけではないでしょう?」
「おそらくお父様と出会う前の因縁でしょうな、男女というよりあれは、戦友です」