701
日常に戻った藤丸立香
「藤丸さん可愛いよな」
「やっちまえよ!」
飲み会で薬を盛った男達
しかし藤丸は無反応
「おかしいな」
「何がです?」
背後に大男
こんな奴サークルにいた?
あれ、俺ら、変
……
「〇〇大学の男子学生らが遺体で発見され…
「同じサークル!怖いね道満」
「そうですなあ」
702
「道満がついてくるって言った時はビックリしたけど、悪さしないし良い子じゃん!」
「当たり前です!それにせっそ、私のショートカット、似合ってございましょう?」
「うん!イケメン」
……
「次のニュースです〇〇大学の教授が…
……
「△に勤める〇〇さんが変死で発見…
『あなたを守ります』
703
父の酒のせいで母は蒸発
内縁の妻を連れ込んだ
でもその人はとても優しかった
「立香、母ですよ、大丈夫」
父が私に手をあげるとその人は怒り、父は消えた
その後も面倒見てくれた
黒髪のきれいな人
お母さん、と呼べなくて申し訳なかった
……
カルデアで頼光を呼んだ時全てを悟った
「…お母さん」
704
「ええ、母ですよ?」
そう笑う頼光はあまりにもあの人に似ていて
……
「娘に手をあげるなんてっ!」
ズシャ
「私の娘をよくも!」
グシャ
「はぁっ、はあっ、あの子は私が守ります
絶対カルデアに来られるように
邪魔な者は、いりません
…父親に疎まれ追いやられるのは私だけで充分」
705
負けた
サーヴァントも消え
己の血溜まりに沈む藤丸
「独りで知らないとこで死ぬの…寂しいなあ…」
虚空に伸ばした手をドラコーがとる
「そっか…単独顕現」
「…安心せよ、余が看取る
大義であったな
死後は別の者が案内しようが…今際の際は余のものよ」
「ありがとう…」
『お疲れ様、藤丸立香』
706
「拙僧が、拙僧が地獄にお供いたしまするぞ〜!!」
「いいえ私と一緒に冥界にくるのだわ!」
「戦士なら大歓迎だ」
「ええいせっかくのしんみりムードが台無しではないか!まったく
この者の周りは死んでからも騒がしい!
余は独りであったからな
どこへいくにも賑やかが一番良い
後は、頼んだぞ」
707
サポートのドラコーが帰還
「先程の戦闘で敗北した」
「…そこのカルデアは?」
「滅びたろうな、マシュは即死
マスターも致命傷
きちんと看取って帰ったぞ
新米でな、死にたくないと泣き喚くのをなだめ…うむ…
余は繁栄したものを食らう
卵から出たての雛は、口に合わぬ」
『生き抜いて欲しかった』
708
聖杯戦争
その魔術師はアルターエゴを召喚したく
「これ以上の触媒はない」
陣が光りサーヴァントが
「おや!拙僧を召喚するとは!どうやって…」
召喚された道満が見たのは
藤丸立香の 小さな骨壷
途端道満は魔術師を裂き殺した
「小さくなりましたな、マイマスター」
『この方の眠りを妨げるな』
709
「平和が好きなお方でしたからなあ
魔術師共は皆殺しに、一般人はなるべく殺さず終わらせてみせますぞ
そうしたらお墓を探しましょう!きちんと戻して、お納めいたします
お母様とお父様とまた一緒に眠らせて差し上げます
だからそれまで、拙僧といてくだされ」
骨壷を持って聖杯戦争をする、道満の話
710
「顕光殿は呼べませんな
宝具は広範囲に影響がでますし、費やす魔力も大きい
しかし我が武器はそれだけにあらず
マスターもご存知でございましょう?
本来拙僧は陵辱を好みますが、アルターエゴの拙僧はマスターのせいで丸くなりましたからな
あなたの嫌がることはいたしませぬ
…心配いりませぬぞ」
711
「うち、立香の従姉妹や」
黒髪の従姉妹と共に藤丸立香は大学入学
下戸の立香と違い従姉妹はザル
下世話な者は「食いまくり」と噂
立香に近づく男を片っ端から誘うと
「立香ちゃんかわいそー」
「大学から消えた奴もいた」
…
「ありがと、酒呑童子」
「旦那はん人気者やからね」
角を隠した鬼は笑った
712
聖杯戦争で召喚されたオベロン
「おい全てぶっ壊す奈落の虫を召喚とか、勝つ気ないだろ…」
呆れて前を見るとオレンジ髪の少女
「藤丸立香!?」
「ううん、立香はおかあさんの名前
困ったらコレ使ってお祈りしろって」
その子の手には
虚影の塵の入った箱が握られてた
『私の子を助けてオベロン』
713
「…お母さんはどうした」
「りこんして、働いて、車がぶつかって死んじゃった」
「今はどうしてる」
「おばあちゃんの家、でもおとうさんがゆうかいされた!って私を探してる」
「…はぁ〜分かった藤丸立香!
お前の心配、やり残した事
コイツの敵全部ぶち殺してクソハッピーエンドにしてやるよ!」
714
「召喚に応じ参上いた…」
道満は目を見張った
目の前には確かに『藤丸立香』が、でも
「…違いますな」
「私は藤丸立香を元にしたクローン、聖杯戦争を勝ち抜く為に
私を殺しますか?代わりはいくらでも」
「いいえ!勝ちましょうぞ!それより貴方を作ったのは、誰ですかな?」
『藤丸立香を弄ぶな』
715
「私はランサーのマスター 藤丸立香のクローン」
「私はセイバーのマスター 藤丸立香の…」
「…藤丸立香のクローンだけで聖杯戦争をさせ、高みの見物ということですか
皆様も考えは同じですな?」
「あったりまえだ!仕組んだ奴全員ころす!」
「あの方を侮辱した者に死を!」
英霊達は団結した
716
「りつかちゃんかみのいろ、へん!」
「本当の子供じゃなかったりして」
「藤丸!頭髪規定違反だ染めてこい」
「…」
……
「マスターの御髪は太陽のようですな」
「太陽?」
「拙僧の暗黒太陽とは違いますぞ、暖かく眩く焦がれる色」
「…そう、ありがと道満」
『コンプレックスじゃなくなった日』
717
汎人類史を救った藤丸立香
日常に戻るもゾンビウイルスが流行
「ウ〜」
「ガア!」
藤丸は噛まれるも発症せず
「そうか、毒耐性…」
スマホに着信
「藤丸くん!またもや人類の危機だ!マシュも招集してる、すぐ来てくれたまえ!」
「…父さん母さん、必ず元に戻してあげるから」
『FGO番外編 始動』
718
藤丸が重傷
「ここまでかも…」
オベロンが駆け寄る
(…笑いに来たのかな?)
「おい!ふざけるなよ!
ここで終わったら画面向こうの奴らに
悲劇のヒロイン藤丸立香は戦いの途中で命を落としました
って消費されてそれっきりだぞ!
そんなの認めない!生きて帰るぞ!」
『君まで消費させたくない』
719
世界を救った藤丸立香は拷問の末殺され解剖
指の一本まで触媒として保存
しかしそれを使う召喚は禁止された
「藤丸立香を使うと特別なクラスのサーヴァントを召喚できるらしい」
「何度も盗まれ召喚されたが、サーヴァントは怒り狂い魔術師を殺すそうだ」
…
『よくも死後までマスターを侮辱したな』
720
「ああマスターさま、ゴッホと同じくお耳を…でもこれは切られたものですね、ゴッホとは違う、なら、なら許せません」
「マスター!こんなのってあんまり!魔女だと言ったのね!魔女はお前達!全員首吊りだわ!」
「可哀想な藤丸立香は死んでも消費し続けられましたとさ、クソッタレ
…全員殺す」
721
「ははあ、なんとも悪辣!なので拙僧も同じことをいたしまするぞ!マスター、全て取り返して見せまする
御身は必ずこの道満が」
「ほお…堕落しきっておる
余が看取るにふさわしい都市よな
…マスター、多くの者に囲まれながら、看取られずに死んだマスターよ
安心せよ、余が呼び声に応える」
722
藤丸立香は特別じゃなくても
サーヴァントと歩んだ道はきっと特別で
特別なクラスの子達なら
それを記録としてもったまま、或いは記憶したままの姿で来るかも、なんて
それで懐かしい気持ちで召喚に応じたら
目の前にはホルマリンに浸けられたかつてのマスターの指、耳、目、があったら
許せないよね
723
世界を救った藤丸立香
報われず非業の死
その後、一冊の本が
『藤丸立香物語』
悲劇のヒロイン藤丸立香のドキュメンタリー
「泣けます😭」
「悲しいけど美しい」
ある時聖杯戦争でその本が触媒に
召喚されたサーヴァントは
本も魔術師も街ごと飲み込んだ
奈落の虫オベロン
『藤丸立香を消費するな』
724
「お前の礼装、写真、どうなってるか知ってるか?
藤丸立香ミュージアム
ファンが大勢押しかけてるらしい
お前の遺骨はゴルドルフ達が尽力し墓におさまった、幾度も盗まれそうになってるがな
そこも「聖地巡礼」だとさ、毎日騒がしい
まったく、文字通り骨の髄までしゃぶりつくされてるな、お前」
725
退去の際
「これを、呼べば一度だけですがすぐ駆けつけますぞ」
道満から符を
でもその後処遇で揉めた時も
父母に結婚を反対された時も
泥沼離婚した時も
藤丸は使わなかった
….
老衰でいよいよという時
「来て…」
「…どうして今になって?」
「ふふ、道満に看取られて、連れてって欲しかったから」