1051
「直接攻撃を受け、8割が壊滅 電力システムも崩壊
数日意識不明だったマスターは今朝…」
「サーヴァントもいなく、人も数えるほどしか
食料も水も薬もなく、私もこの傷では…」
「マシュ…」
「どこかの先輩、お願いです 楽しいカルデアの話をして下さい
私たちが過ごせたかもしれなかった日々を」
1052
「ほんとに聞こえる!」
カルデアで糸電話が流行った
ナーサリー達はお茶会の予定
円卓の騎士は伝言ゲーム
感謝や愛を伝えたり
散々遊んだマスターは、疲れて部屋に
何気なく相手のない糸電話に耳をあてると
「誰か…誰かいませんか」
どこかの世界の
滅び1人生き残ったマシュと最期の会話をする話
1053
「寒いね」
マシュも私も体が潰れている
出血が酷く半日持たない
でも数時間は持つ 三画失った令呪はあと一時間でひとつ回復する
(マシュを治してからしねる よかった)
気づくとベッド
令呪で回復したマシュが運んだ
「先輩の体は一度きりなんです!」
それでも
(あなたが生きていてよかった)
1054
「絆6以上の最終再臨させたサーヴァントを変換して得た呼符を使うと必ず目当てのものを喚べる」
ネットで話題の召喚方法を見たマスター
3基を選択、震える指で座に
入手した呼符で回すと虹回転
「やった!本当だった!」
画面に映った待望のサーヴァントは微笑んだ
「「「ただいま、マスター」」」
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マシュと離れて歩く
喧嘩じゃない
数日の行軍で垢まみれ
臭いと思われたくない
マシュは腕を掻いている
ツン、と鼻をつく
ナイチンゲールが腕に消毒液を塗ったのだ
「掻いてはだめ 雑菌が入ります」
そして私たちを見つめて
「どうか恥じないで
貴女達が生きている証です」
私はマシュの隣に並んだ
1056
「無理だろうけど、全部終わったら2人で普通に暮らしたいね」
「はい」
「アルバイトして交代でご飯作って、疲れた時はお惣菜」
「一緒に服を買って、帰りに人気のパンケーキ屋に並ぶの」
「素敵です」
戦闘不能のオルテナウス
マスターは足が折れ動けない
猛吹雪の中
2人は寄り添って夢の話をした
1057
どこかのカルデア
「ゴホッゴホッ」
「まあマスター!?どうかなさったの?」
「ありがとうアビー 風邪ひいたみたいなんだ」
「ベッドにいかなきゃダメ ナイチンゲールさんをお呼びするわ」
「大したことないよ」
「だめ ようく休まなきゃマスター
…どこかの私がそう言っている気がするの」
終わり
1058
「…誰にも話さなければそのまま生きられた」
「でも本当の理由は話せない、そういう決まりだったの だから怖がらせて言わないようにしようと…」
「どこかの未来で優しくしてもらったから…だから助けたかったの」
「罵られても恐れられても助けたかったのに…」
少女は誰もいない宇宙で、ただ泣いた
1059
「緊急治療!この熱は非常に危険な状態です!はやく!!」
「酷い嘔吐と痙攣だ!すぐに〇〇を投与!」
「先輩!先輩!」
しかし、治療のかいなく目は覚めなかった
「…〇〇という病気だろう
彼が以前命を落としかけ奇跡的に回復したという」
「今になって何故…彼の話と関係があるだろうが」
1060
人理修復を終えた後
怖くて怖くて話してしまった
「カルデア総力を挙げて君を守ろう!」
「すぐに該当サーヴァントを調べます」
皆を危険に晒したのに、誰1人責めず力を貸してくれた
ただ、なんだか熱っぽい
今日は早く休もう
その晩夢で少女は泣いていた
「もう助けられない 運命は元どおりになる」
1061
バビロニアで戦闘が続く頃
「黒い水の女は右にいる方を倒しなさい」
いつものような忠告
「でも、汚れる前に食べてしまおうかしら?」
すると辺りに花が一斉に咲きだした
「夢魔が!おのれ!」
彼女が去った後
白い光の中に誰かが見えた
嬉しそうな、悲しそうな、不思議な顔をして、どこかに消えた
1062
「竜の魔女の炎が来たら右に避けなさい」
「狂戦士に気をつけなさい 私がいればすぐ済むのに」
もしかして、この子は恐ろしいサーヴァントなんじゃないかと思い
ダヴィンチちゃん達に相談しようと思った夜、彼女はまた来てこう言った
「だめだめ、だめよ
言ったらあの盾の女の子も食べてしまうから」
1063
その子はその後も度々夢に出てきて
「今日はいつもの大通りを通らないこと」
「〇〇時発の電車には乗らないこと」
色んな忠告をしてきた
そして何年かたったころ、こう言った
「今日、献血をしに行こうと友達に誘われるから
一緒にいきなさい」
それで俺はカルデアに来た
1064
1065
「狐の窓って知ってる?」
「こうやって指を組んで隙間を覗くとお化けの正体が分かるんだって!」
何の気なしに2人でサーヴァントで賑わう食堂を覗いた
「…!?」
「ひぃっ!」
見てはいけなかった
隙間越しの異形がこちらに気づいて一言
「マスター、マシュそれやっちゃだめ」
以来一度もやってない
1066
マシュのレベルが低かった頃
思わぬ消耗をした所を襲われた
倒れたマシュにローマ兵が槍を突き刺そうとする
「やめろ!」
足元の大きな石を拾って、それで
「ごめんなさい…先輩…」
ころしたかは分からない
けど相手はもう動かなかった
「…いつもマシュにさせてたことだ」
2人で身を寄せて、泣いた
1067
マシュが戦えずカルデアに残っていた頃
俺への攻撃が不自然に逸れたり、致命傷が軽傷になることがあった
マシュの生霊と噂がたった
でも怖くないや
だってマシュだし
ただ、一部のサーヴァントは酷く怯えていた
「あれがマシュな訳あるか!ぐちゃぐちゃで首も逆に付いてて!」
俺を守ってるのは何?
1068
プチン プチン
「新しい礼装だ!」
「自動防御機能があるんだ
皆の協力で出来たんだよ!」
ダヴィンチちゃんは語る
「どんな時も君を守るのさ!」
その通りだった
単身襲われた時、突然礼装がほどけ敵の首に巻きつき締めころした
綺麗な色だと思ったんだ
サーヴァント全員の髪の毛が編み込まれていた
1069
夜の下総でみんなとはぐれた
通信が入る
「左の道を進めば合流できる」
突然背後に黒い影が現れ追いかけてくる
「走れ!走れ!」
無我夢中で走る
「あと少しだ走れ!」
「先輩!止まって下さい!」
気づくと崖の手前
あと一歩で落ちていた
追いかけてきていたのはマシュだった
耳元で舌打ちが聞こえた
1070
「食べ過ぎで太ったかも」
「そんな…戦闘が続くので栄養補給は大事です!」
「新所長の料理、美味しいから」
「…全然太ってないじゃないですか」
返事はない
背負ったマスターはぞっとするほど軽い
ボーダーまで2キロ
血が、涙が、落ちる
「帰ったら温かいものをお腹いっぱいたべましょう…!」
1071
「髭が無いとお若く見えますね」
探偵がにこやかに話しかける
「見える?本当に若いんだ!ピチピチの20代だぞ!?」
「それにやつらのほうが…まるでっ
子供のようではないか!」
新所長は言葉を詰まらせて、ぷいと顔を背けた
マシュとぐだこちゃんはお互いの髪をいじりあっている
ある穏やかな日の話
1072
前髪を切り過ぎたぐだこちゃん
恥ずかしくて唸っている
「戦闘の時邪魔になると思って…」
非常事態に浮ついたことを頼めないと悩んで自分で切ったようだ
次の日
マシュが長い前髪を額の上でばちりと切っていた
「切り過ぎました!」
新所長も何故かヒゲを剃り過ぎていた
「剃り過ぎた」
皆、笑った
1073
「先輩」
「どしたの マシュ」
「私 ぜったい何があっても先輩をお守りします!約束です!」
「ありがとう、でも無理しないでね」
「はい でも約束です!指切りします!」
「わかった ふふ 約束ね」
「なんかマスターが面白いことしてる!」
「やるやる!」
「はいはい 順番に」
ある日の約束
1074
3日未明 行方不明になっていたフジマルリツカさんが○○で発見されました
○○には何故か大量の花が被さった状態で、捜索中の○○宅ベッドに突如現れたとのことです
また、犯人とみられる男性も同日○○で発見されました
左肩から右腹部にかけて深い○○があり、○○は捜査を進めています
1075
暗い空を見上げる 寒い
もう体は動かない
あの桃色の髪の女の子が来て
俺を見つめている
「先輩、あなたのいる未来を守るためなら命なんて少しも惜しくはなかったのに」
あの子はぼろぼろと泣いている
周りの奴らもいつのまにか泣いている
そのままどこかへ行った
きっとアイツの所だろうな