今年いちばん上映リクエストの多かった映画、まだ配信/レンタルされていない映画を年末年始に上映します。物語の舞台は75歳になったら「逝くこと」を選べるようになった日本。つまり75歳以上の人は自分からも他人からも「逝く仕組みがあるのにまだ逝かないでいる人」として見られるようになった日本。
無人島に漂着したポール・ダノが先に漂着した死んでたダニエル・ラドクリフの死後硬直した腕で丸太割って口から洩れる濾過水で飢えをしのいで死体の尻から出る腐敗ガスでジェットスキーしてサバイバルしながら気づけばダニエル・ラドクリフの死体と史上最高の友情で結ばれていく感動映画を上映します。
ヤバい奴Aから大金借りてその金でヤバい奴Bからドラッグ仕入れてヤバい奴Cに倍額で売る、という計画なのに弟分がドラッグ紛失してヤバい奴AとCをキレさせた男がベルファストの闇夜を車で奔走しながらハンズフリー通話だけで事態収束に努める様を94分間ノンストップ撮影した超面白い映画を上映します。
15人の高官と1人の秘書は90分の会議で多くを考えることになります。たとえば抹殺方法、輸送手段、強制労働。ハーフの場合は?他国との調整は?立場の異なる15人が議論し、衝突し、交渉し、解決する、濃密な90分。だけど90分、誰も異論は唱えない。 ユダヤ人を絶滅させることについては、誰も。
精霊信仰が根付くタイ東北部の祈祷師の中年女性を取材したドキュメンタリーでカメラが彼女の姪の無意識の奇行を捉えて、祈祷師家系の血の継承ではと撮影続けたら奇行が狂気に狂気が怪異に怪異が…に変質して撮影クルーも呑み込まれドキュメンタリーが別の何かに変質していく史上最怖の映画を上映します
記憶喪失のせいで何ひとつ自分を持たない宮松という男が、空白を埋めるように映画エキストラとして毎日毎日別の「自分」になって淡々と殺されたり殺されたり殺されたりしながら日々を送っていたら、ふと「○○だよな?」と呼び掛けられる映画を上映します。空っぽだけど宮松だった。もう、違う。
映画の舞台、ロシア支配下チェチェン共和国では、国家主導の"ゲイ狩り"によって同性愛者が国家警察や"身内の恥"を許さない家族から、拷問され殺害され社会から抹消されています。現在進行形で。これは決死の国外脱出を試みる人々と、彼らを救おうとする人々のドキュメンタリー。顔を晒すと命に関わる。
CGで繋ぐ疑似ワンショットではなく本当のワンショット。台詞+演技+調理を要求される役者は当然、それを撮影するカメラマンも満席フロアと狭い厨房を縦横に動く高難易度。さらにコロナ禍で取り直し日程が消えて即本番。観てるこっちの胃が痛い(でも料理はとても美味しそう)。
もちろん連戦連勝ばかりじゃ映画にならない。愛情込めて育てて調教師に託して声を枯らして応援して…という日々の中で人にも馬にもレースにも沢山のドラマが生まれます。勝敗以上にそんなドラマを村人たちと共に体験することで、あなたも胸の高鳴り、ゲール語で言うところの【ホウィル】を感じるはず。
この清潔で、理知的で、官僚的で、そして何より凡庸な映画は、他のどんな映画にも似ていません。ただ私たちの生きる現実に似ています。吐き気がするほど酷似しています。『ヒトラーのための虐殺会議』今冬上映です。
ワインが作られても飲まれてもいないジンバブエ出身の難民4人が南アフリカでレストランの職を得た結果ワインの魅力にドハマりして、世界23か国の"神の舌"の持ち主が集う聖地ブルゴーニュのブラインド・テイスティング大会に参加することになるドキュメンタリー映画を上映します。クール・ランニンッ!
ニュースを見たって現実を見たって女が女ってだけでクソみたいな扱い受けていて、もうあんまりクソなんで脇毛ボーボーに生やしっぱなしにして踊りまくってやる映画を上映します。そんなとき、それを「だよな」っつって一緒にボーボー&乱舞してくれる相手が横にいる。それがなんかもう、救われる。
クリスマスイブに楽しいパーティを開催したのに次第に不穏な空気になってきて友人間や夫婦間の不満や軋轢や考え方の違いが噴出する、ありがちなクリスマス映画を上映します。ここまではありがち。この映画の独自要素として、登場人物全員が知ってます。明日人類が滅亡することを。メリークリスマス!
そう、関係を壊した側が主人公です。 永遠って壊れるんですね。小さな子がきれいな蝶を握り潰してしまうように、あっけなく。13歳にとってはあまりにも残酷な幼年期の終わりを、喪失と絶望と再生を、繊細に繊細にフィルムに定着させた『CLOSE/クロース』は7/21(金)公開です。
16歳でオーストリア皇妃になってヨーロッパ宮廷一の美貌と謳われたエリザベートが、40歳になる映画を上映します。コルセットで締めた45cmのウエストで臨む式典で今もお美しい四十なのにお美しいと男から"称賛"を受ける日々に、彼女の魂と知性がついに出した返事がこれ。ファックユーでございますわよ。
スキンヘッドでフィジカルバッキバキに鍛えてるけど愛嬌たっぷりな小学校の校長先生が、授業に「哲学」の科目を取り入れて子どもたちや街に変化を起こしていく2年間を綴った映画を上映します。今も対立や闘争の傷跡が残るベルファストの街で「哲学」は概念や机上の空論ではなく、生きるためのよすが。
ユダヤ人公証人だった彼は、戦中に顧客資産をナチスに渡さなかったことで極限の長期監禁を受けていた。それがチェスの強さとどう関係があるのか、というかどうやって監禁から逃れたのか。繋がらない2つのストーリーが最後に1つになるというのは映画の常套ですが、この映画の"それ"、物凄いです。
初代ジェームズ・ボンド役でダンディを極めてしまったショーン・コネリーがおもむろに赤ふんどし&胸毛&弁髪という320年ほど時代を先取った着こなしで2293年の撲滅戦士をひどく生真面目に演じた1974年の映画を上映します。SF映画史に残りそうで残らない、少し残ったカルトSF映画。癖になる味わい。
瓶から自由になるために人間の願いを叶えたい魔人が、願うと不幸になるオチを疑う物語論学者を説得するため、封印と解放を繰り返してきた3000年の身の上話、ソロモン王の治世から続く万華鏡の如き驚異の物語の数々を(CVイドリス・エルバで)語って聞かせる、想像力が極彩色に花開く幻想映画を上映します
豪華客船に乗り込んだセレブや富豪ら"持ってる"人々の表層的で愚かしくて無自覚に傲慢な生態をさんざん見せつけられて(船沈まないかな…)と思ってたら船沈む映画を上映します。で、一行は無人島に漂着。すると無能連中の頂点に君臨するのが"持たざる者"だったトイレ清掃員で…面白くなってきました。
息を飲むほど究極に美しいエストニア映画を上映します。リアリズムと幻想怪奇とが霧の中で不可分なように、貧困にあえぐ村人が農具や骨でこさえた使い魔【クラット】を当たり前に使役し、死者も時に生者と食卓を囲む村。農夫の娘と眠れる令嬢と悪魔と契った若者の、予測不能のダーク・ラブストーリー。
まずこの映画、映像がひたすら眼福。豊かな森に射す自然光も極上の食材を引き立てる陰影も、本当に18世紀でロケしたよう。"代金を払って食を愉しむ"という概念がない時代に、旅人のための休息所がちょっとした創意工夫や親切心や抜群の料理でレストランに《なっていく》過程を、過剰演なしで描きます。
両家の厄介者どうし見合いでくっつけられた2人が所帯になって身を寄せ合い、さして豊かでもない土地で作物を育て、日干しレンガで家を建て、つつましく、口下手に、慈しみあいながら暮らすだけ、の映画が、公開2ヶ月後に突然TikTokで中国の若い世代に火がつき奇跡のように大ヒットしたので上映します。
1830年の冬の日に陸軍士官学校で心臓がくり抜かれた変死体が発見されて、醜聞を恐れた学校幹部から内密捜査を依頼された引退刑事がひとりの士官候補生を助手に真相解明に挑む映画を上映します。この、今はまだ無名の士官候補生らしからぬ性格をした士官候補生、名をエドガー・アラン・ポーといいます。
田舎の冬の畑で住所不定の若い女性の凍死体が発見されて、なぜ彼女がそこで生を終えたのか物語が時系列を遡って数週間の足跡を辿っていく中で観る者の心に様々な想いが去来することになる、本国フランスで最もヒットしてここ日本で最も過小評価されてきたアニエス・ヴァルダの1985年の映画を上映します