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3年半ぶりに再び伺います。以下に挙げるのは、高校国語教科書によく採録される「定番小説四天王」です。一番好きな作品はどれですか?
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太宰治の初版本を差し上げた方が、若い頃太宰ファンだった高齢の御祖母様に見せたら、昔、自分も同じ本を持っていたと言われびっくり。本を手に取り『女生徒』を少し読んだ御祖母様は、「やっぱり太宰さんはいいね」とそっとつぶやき涙を流されたそうです。あるいは青春の思い出が蘇ったのでしょうか。
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川端康成は太宰治『女生徒』の批評で、「文学の青春の一つの現れは、無謀なまでに極端な潔癖であつて、それが「既成の小説の作法」や「おとなしい小説」を避けて、純粋に自分のものを求め、健全な常識からは、「変質者の独語」と受け取られる」と。川端が説く「変質者の独語」には説得力があります。
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「親の蔵書数と子どもの学力は比例する」という説が定期的に話題となりますが、過剰な蔵書はむしろ子どもの学力に悪い影響を与えるかもしれません。廊下・階段といった共用スペースまで本が侵食すると、親(ほとんど父親)と共に本を憎むようになるからです。そして親が死んだらすぐに本は処分されます。
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今日6月13日は太宰治の命日です(戸籍上は14日死亡)。命日よりも遺体発見日(桜桃忌の19日)の方が有名なのは、世の中で太宰くらいでしょう。しかも19日は彼の誕生日。郷里では生誕祭も行われますが、墓前でも供養と共に「おめでとうございます」と言ってあげたいです。
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近代文学の名著を読もう(再読を含む)としている方に、図書館で復刻本を借りることをお勧めします。『月に吠える』『春と修羅』『山羊の歌』など詩集は特に。中原中也と並び称される抒情詩人立原道造は「初版本で読むと詩の内容まで良くなる」と。復刻本でも十分に刊行当時の雰囲気が味わえるでしょう。
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太宰治の遺体の第一発見者について、間違った情報がツイッター上で散見されますが、正しい発見者は通行人の大貫森一(35歳の公務員)という人物です。高校生の時に、昭和23年当時の雑誌に記された彼の家を訪ねたものの、会うことはできませんでした。今ならばメディアの取材が殺到していたでしょうね。
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太宰治の「ポーズ」を批判した志賀直哉に対して、外村繁は太宰の死の直後、「弱い性格のものには弱い生き方があり、宿命があるのだ」「彼の生き方は決してポーズではない。あれでなくては生きられなかったのだ」「太宰君は弱ければ弱い程純粋だったのだ」と主張しました。まさにその通りだと思います。
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今は昔、売り出し中のIT企業経営者とラジオ番組で対談し、彼が「紙の本はあと10年もしたら絶対に消えます」と言ったので、「いや、50年後にも必ず出版されています」と応じました。それから約30年。もちろん紙の本は健在です。20年後も同じでしょう。そして皮肉にも、消えたのは彼自身だったのでした。
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芥川龍之介は亡くなる少し前に「僕は僕の小学時代にも作文は多少上手だつた」と書いています(「本所両国」)。しかし現存するその時代の文章を読めば、「多少」が謙遜しすぎなのは自明です。芥川は小学生の頃から芥川だったのでした。
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フォロワーさんが就職の面接試験で趣味を聞かれ、「推しの作家の」と言いかけたところで「差別用語はダメだよ」と怒鳴られました。「『好きな作家』であれば誤解されなかったのでしょうが、自分的にはかなり意味が違うので。ただ全く想定外の言葉でした」とあります。ちなみに内定は辞退したそうです。
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梶井基次郎は大正14年、友人と武者小路実篤を訪ね、「檸檬」収録の『青空』創刊号を贈呈しました。実篤は上機嫌で応対し、帰り際に「他に用はなかったの」とやさしく尋ねたそうです。梶井たちが推測したように、金の無心を言い出しかねていると慮ったのでしょうか。人柄が滲み出た良い話だと思います。
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小林秀雄は、日本には真に詩人の名に値する者は稀だと言った武田麟太郎に、憤然として雑誌『四季』のあるページを示し、「君はこの詩人を認めないのか」と怒鳴りました。「この詩人」の名前は書く必要もないくらいでしょうね。もちろん中原中也です。
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中学校で国語を教えている知人によると、最近は夏休みの宿題で課題図書の読書感想文を書かせる学校が減っているそうです。理由はネットで「模範例文」を簡単に検索できるからとのこと。何であれ、子どもに強制して本を読ませ、感想を人前に晒させる愚かな宿題が少なくなるのは大変結構だと思います。
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今日は芥川龍之介の命日ですが、ここでは谷崎潤一郎の生誕135年を祝います。近代文豪数多くあれど、「豪華絢爛」という言葉が谷崎ほど相応しい作家はいないでしょう。「谷崎潤一郎氏は現代の群作家が誰一人持つてゐない特種の素質と技能とを完全に具備してゐる作家なのである。」永井荷風の言葉です。
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今日は谷崎潤一郎の命日です。三島由紀夫は「これだけの作家が亡くなれば、国家が弔旗をかかげてもいいし、国民が全部黙祷してもいいんじゃないかと思いますがね」と語りました。谷崎にも桜桃忌・河童忌のような作品由来の文学忌がほしいですね。「刺青忌」「春琴忌」など皆さんも考えてみてください。
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芥川龍之介と太宰治が好きな高校生が、「自殺した作家を好きになると自殺願望が生まれるぞ」と親から忠告されたそうです。その可能性が全くないとは言いませんが、親の無理解に絶望して命を絶つ子供の方が遥かに多いでしょう。文豪に矛先を向けるよりも、自らの言動を省みるべきだと思います。
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ある高校の国語教師が、『羅生門』の授業で生徒を校庭に連れ出して、突然松の枝を折って燃やし、文中の「火をともした松の木片」を実演。インパクトはあったでしょうが、意図したように、生徒の作品への興味を引き出せたのかは存じません。ちなみに、教師は校長から始末書の提出を命じられたそうです。