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今年生誕10年×α(11≦α≦16)の近代作家の例(同年は五十音順)。何かのご参考にどうぞ。
160年ー森鷗外、150年ー島崎藤村・樋口一葉、140年ー小川未明・斎藤茂吉・鈴木三重吉・野口雨情、130年ー芥川龍之介・佐藤春夫・堀口大学・吉川英治、120年ー上林暁・中野重治・久生十蘭・横溝正史、110年ー檀一雄
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「アベック」は既に死語だそうですが、使わなくても知っている人は多いでしょう。でも「クメル」をご存じの方はほとんどいないと思います。「失恋(する)」という意味で、久米正雄の小説『破船』に由来し、大正末から昭和初め頃まで学生の間で流行しました。この言葉に対する本人の感想は不明です。
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泉鏡花や三島由紀夫の小説を読むと、難解な言葉を駆使した豪華絢爛な文章に目を奪われます。しかし語彙が豊富なだけで名文が書けるわけではなく、やはりプラスアルファが必要なようです。「文章の中にある言葉は辞書の中にある時よりも美しさを加へてゐなければならぬ。」芥川龍之介の言葉です。
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主観的な意見ですが、文学作品は若いうちに読んだ方がよいでしょう。年を取ると、まず未読の作品に向かうのが億劫になり、特に長編小説を読むのはしんどいです。詩や短歌俳句は大丈夫だけれど、それらを受容するみずみずしい感性が既に欠けています。文学鑑賞は老後の楽しみには不向きかもしれません。
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今日は夏目漱石の命日です。漱石は教職を辞め作家活動に専念する少し前に、「百年の後百の博士は土と化し千の教授も泥と変ずべし。余は吾文を以て百代の後に伝へんと欲するの野心家なり」と森田草平に書いています。そして土や泥はともかくとして、百年の時を経て彼の野心は確かに実現したのでした。
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認知症の初版本コレクターが本を次々に破り始めたと家族から連絡があり、駆けつけると本やカバーが無残な姿であちこちに。本人は「誰がこんなことをしたんだ」と激怒しています。こっそり貴重書を選んで物置に避難させましたが、「あいつが盗んだ」と言われるかもしれません。何だか身につまされます。
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戦後の太宰治は「芥川龍之介、芥川龍之介」とノートに記した学生時代と比べ、芥川への傾倒が薄れていたと考える人もいるようです。しかし太宰が晩年に語ったとされる「僕も四十まで生きようとは思はなかつたが、芥川のことを考へると恥かしい」という言葉からは、彼を終生敬愛していたことが窺えます。
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ある文豪の新刊書店で手に入らない「名作」の出版企画を、ダメ元で親しい編集者に持ち掛けたところ、何と来春の刊行が決まりました。ネットはもちろんのこと、全国の書店で購入できます。企画料はゼロですが、ファンの皆様には必ずや喜んでいただけるかと。情報が解禁になったらすぐにお知らせします。
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長年、高校で国語を教えている知人によれば、かつては『山月記』の授業の前に中島敦を知っている生徒はほとんどいなかったそうです。しかし近年は、『山月記』の授業を楽しみに待つ生徒が各クラスに必ずいるとのこと。漫画・ゲームをきっかけに近代文学に慣れ親しむ実例として、興味深いと思います。
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「小説の神様」と称され、同時代の作家はもちろん、後世の作家にも絶大な影響を与えた志賀直哉。その没後50年に、出版社が企画や特集を組むこともほぼなく、コロナ下とはいえ大きな展覧会もありませんでした。昨年の三島由紀夫との比較は無理ですが、芥川龍之介や谷崎潤一郎の時と比べても気の毒です。 twitter.com/signbonbon/sta…
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今日は志賀直哉の命日ですが、没後50年の節目なのに、悲しいくらい話題になりません。志賀が最近大きく取り上げられたのは、新型コロナ関連での『流行感冒』くらいでしょう。読む人が減った上に、ある事情もあり、志賀をメインとする若手研究者は激減。初版本の価格も大暴落しました。本当に残念です。
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一生の中で真の友と呼べる人はそう多くないでしょう。そんな人に死なれると本当に辛いものがあります。「人が百人の友の中から、その一人を失ふことは苦痛がすくない。けれども僅か二人、もしくは三人の友の中から、その一人を失ふことは耐えがたいかな。」芥川龍之介の死を悼む萩原朔太郎の言葉です。
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今日は宮沢賢治の命日です。賢治の最後の言葉は「ああ、いいきもちだ。」オキシフルを付けた消毒綿で手と首と体を拭き、この言葉を繰り返しました。そして潮が引くように、呼吸が途絶えたそうです。享年37歳。苦しまずに旅立ったのが、せめてもの救いだと思います。
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かつて高校国語教科書に採録されたことがある、ちょっと(かなり?)意外な近代文学作品
①萩原朔太郎「殺人事件」(よくぞこれを)
②芥川龍之介「藪の中」(あのストーリーなのに)
③江戸川乱歩「押絵と旅する男」(遺憾ながら教員の評判は悪かったそうです)
④太宰治「人間失格」(なんとなく採録ゼロかと)